2
では私の自慢の家族を紹介しましょう。
カロルドお父様は領主としても人としても尊敬できる方です。
年齢は四十一歳。シルバーブロンドの長い髪をいつも後ろで一つに結んでいらっしゃいます。
普段は落ち着いた柔和な笑みを浮かべておられ、その姿には「この人がいればなんとかなる」という安心感があります。
また、「この人について行きたい」と周囲に思わせるような、優れたリーダーシップもお持ちです。
ユリアお母様は三十九歳になられますが、私と並ぶと姉妹と間違われるほどに若々しく、我が家の太陽のような存在です。
華やかなベビーピンクの髪と確かな服飾センスをお持ちで、芸術家としても活躍されています。
残念ながら権威主義のこの国では認められていませんが、諸外国では高く評価されています。
また他国から嫁いで来られたこともあり、この国の問題点が良く見えていらっしゃいます。
一番上の兄であるハイリンヒお兄様は二十二歳。
お父様と同じシルバーブロンドの髪をお持ちで、聡明で穏やかなお人柄もお父様によく似ていらっしゃいます。
私が頭の中の知識を上手く言語化できないとき、いつもさり気なく助けてくださる頼りになるお兄様です。
現在はお父様の跡を継ぐべく、側近として励んでおられます。
二番目の兄であるマルクスお兄様は二十歳。
赤みがかった金髪をされていて、明るく面倒見の良いお人柄はお母様似でしょうか。
武芸を得意としていることもあり、がっしりとした逞しい体躯をしていらっしゃいます。
爵位や立場だけではなく、その人個人の能力や人柄を見ることにも長けていらっしゃり、お兄様が引き上げた多くの者が今のカーハインド領を支えてくれています。
三番目の兄であるアルフレートお兄様は十七歳。
発明家として忙しいせいか身なりに無頓着なところがあり、綺麗なアッシュゴールドの髪はいつもどこか跳ねています。
一番歳が近いこともあり、幼い頃からよく私の様々な実験に付き合ってくださいました。
そのためこの国で未だ見つかっていない物理法則や科学技術、魔法知識にも深い造形をお持ちです。
そして私はローラ、十五歳です。
髪の色はピンクゴールド。髪色こそお父様とお母様の色を引き継いだ素敵な色ですが、前世の知識を持つ以外は平凡な人間ですね。
◇
幼い頃の私は、自分の異質さに気づいておらず、頭の中にある話や知識を当たり前のように口にしていました。
ですが家族は、そんな私を気味悪がることも遠ざけることもなく、ごく自然に受け入れ、愛し、大切に育ててくれたのです。
それがどれほど稀有でありがたいことだったのか――
成長するにつれ、その重みを自覚した私は、「このまま成り行きに身を任せて生きるだけでよいのだろうか」と自問するようになりました。
異質な私はこの先どう生きていくべきか、何が一番皆のためになるのかと思いを巡らせる日々。
私はこの知識を封印し平凡な女として生きるべきなのか。
――いいえ、私に与えられた知識は多くの先人たちから受け継いだ贈り物です。死蔵する選択肢はありません。
――ではこの知識をどう生かすのか。
潮流を動かし命を大切にできる国に変える。いや、一地方から国を変えるのは容易なことではない。
……ならば国から領地を独立させるのはどうだろうか。この領地は独立しても立ち行くだろうか。
いくつもの検証を重ねた結果、国を変えるにはクーデターのような穏やかでない手段が必要となり、激しい争いが起こる可能性が高い。
しかし領地の独立ならば、比較的穏やかに事を進められる――私はそう結論づけました。
そうして私は、領地を独立国家へと発展させることを目指し、改革を推し進め始めたのです。
家族も初めは驚いていましたが、ありがたいことに私の示した道を否定することはありませんでした。
そしていつしか家族皆が、領地の独立という目標に向かって走り出していたのです。
皆の協力のおかげで、カーハインド領は改革初期からは比べものにならないほど強く豊かになりました。
しかし未だ独立が叶うほどの力はなく、理想にはまだ届きません。
ここで王都からの横槍に屈して立ち止まる訳にはいかないのです。




