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知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


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 side:アンドレ(院政家の重鎮ダグラス家の嫡男)


 今、私は院政会議に出ている。


 といっても定例の会議ではなく、宰相が「懸念事項について話し合いたい」と特例で集めたものだ。


 もちろんここにいる者は集められた理由がマリウス王子とカーハインド家の茶会にあると理解している。


 わざわざいつもと違う会議室を用意してまで、茶会の様子が見える場を整えているのだから、当然だ。


 少し振り向き、後方にある大きな窓に目を向ける。

 宰相が会議から出て行って、ゆうに一時間は経っているが、さっきから見えるのはカーハインド家の者と宰相だけ。マリウス王子の姿はおろか、王家の誰の姿も見えない。


 これは宰相が失態を演じたか。

 父が小躍りして喜ぶ様が目に浮かぶ。


 それにしても開催されない茶会のためにいつまでこの場を引き延ばすつもりだろうか。

 私も暇なわけではないのでな。そろそろ席を立つか。


 席を立つタイミングを図りつつ周囲に目配せしていると、突然部屋の外が騒がしくなった。



「――困ります! こちらでは現在院政会議が開かれております!」

「王子殿下といえ、許可のない方のご入室を認めるわけには参りません!」


 扉の外に立つ衛兵の荒い声がしたかと思えば、制止を振り切るように部屋の扉が勢いよく開かれた。


「なにごとだ!?」


「私はケルファ国第三王子マリウス。院政家の者たち、会議の邪魔をして悪いな。だがどうしても今ここで伝えることがある!」


 全く悪びれる様子のないマリウス王子がピンクのフリフリしたドレスを着た女の肩を抱きながら、舞台俳優かのような朗々とした声で話し出した。


「紹介しよう。私の婚約者、オリビア=サーストン嬢だ。私は彼女との婚約をここに表明する!

 なおこれは王命である! 何者も覆す事まかりならん!」


 ………………。


 恐ろしいほどの静寂が辺りを支配した。

 たっぷり三分ほどの間を開けて、なんとか一人の者が口を開いた。


「殿下、王命ということは陛下の許可を得ていらっしゃるという事でしょうか……?」


「急遽決まったことゆえ陛下にはまだ説明していない。だが私も王族だ。王命であろう」


 ――またも場の空気が凍る。

 王命は王だけが出せるものだ。王家の誰にでも出せたら国が王命だらけになるだろうに。そんなことさえ知らぬのが我が国の王子か……。思わずため息が出そうになり慌てて飲み込んだ。


 それにしても大変なことになったな。

 ただ茶会が流れただけであれば後日仕切り直すこともできただろうが、こんなところで大々的にに宣言されてはさすがの宰相でも如何ともしがたいだろう。


 ◇


 お茶会の席で王子を待っていると、侍女をたくさん引き連れた豪奢なドレスの女性が奥から歩いてくるのが見えました。


 複雑に結い上げられた髪はダークグリーン。歳の頃は四十ほどでしょうか。扇で顔を半分隠していらっしゃいますが、視線が定まらず焦っておられるように見えます。


「第一王妃様。お待ちしておりました」


 安堵したように笑顔を見せた宰相が、深々と頭を下げます。


 あの方が王太子と第三王子の実母である第一王妃様なのですね。やはり第三王子の保護者役は第一王妃様が務められるのですか。


 私たちも席を立つと最敬礼をとります。

 ……………長いですね。第一王妃様のお声がけを待っているのですがなかなか声がかかりません。お声がけがないと頭を上げられないのですが。


 下げた視界の隅で第一王妃様が宰相に近づいて行くのが見えます。そしてコソコソと何か囁かれると、なんとそのまま踵を返して去って行かれるではありませんか。


 困惑しつつも第一王妃様御一行の気配が消えたのを確認して私たちが頭を上げると、真っ赤な顔で憤怒の形相をした宰相がプルプルと震えながら立ち尽くしているではありませんか。

 思わずマルクお兄様と顔を見合わせます。


「――閣下? 宰相閣下、いかがなされました? 大丈夫ですか?」


 マルクお兄様が呼び掛けると宰相はギロッとこちらを睨みつけると


「これで失礼させていただく!」


 と足早に去って行かれました。


 私たちはもちろん、お茶会の為に待機していた周囲の侍従や侍女もポカンとした顔をしてただ宰相の後ろ姿を見送ります。


 ええっと………。


「ローラ、ここで待ってろ!

 誰か一人共に来い!」


 私が困惑から立ち直るより早くマルクお兄様は我に返ると、カーハインド家の護衛を一人連れて宰相の後を追いかけて行かれました。


 さすがお兄様、判断がお早い。

 何があったのでしょうね。気になりますが私は待つことしかできません。


「姫、お茶でも淹れようか?」


「ありがとうロルフ。お願いするわ」


 ロルフは慣れた仕草で紅茶を入れると、使われることのなかったカップに注いでくれます。うん、いい香り。さすがロルフね。これを飲みながら、ここでお兄様がお戻りになるのをのんびり待つことにしましょう。



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