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side:宰相
「さっ、さっ……宰相閣下……!」
私が朝の仕事を始めてすぐに三人の若い貴族が執務室に駆け込んできた。
「なんだ? 朝っぱらから騒々しい」
「あさっ朝起きたら、これっ……! これが枕元に! お助けください!」
若い貴族は、真っ白な封筒を振りかざして騒いでいる。私はそれを受け取り中を確認し……
――思わず取り落とした。
ー 次は、お前たちの番だ ー
封筒の中にはそれだけが書かれた、一枚のカードが入っていた。
「なんだこれは。気味の悪い。何かのいたずらか?」
「私たちにもわかりません。ただ朝起きると枕元にこれが置かれていて。屋敷の者も誰も何も知らないと言うのです!」
青い顔をして必死に訴えてくる。
枕元か……屋敷の者がグルでないとしたら警備を突破し部屋の中まで侵入されたことになる。そのまま殺されていてもおかしくないのだから、慌てるのも理解できるが。
ん? カードに透かし彫りで何かのマークが入っているな。どこかで見たような………
「このマークに見覚えはないか?」
紙にマークを描き写し三人に見せる。三人とも見覚えがあるとは言うが何のマークかは思い出せないと言う。
ふんっ使えない。こちらで調べるか。
「このマークについて早急に調べろ」
執事を呼びそう下命すると、
「旦那様、こちら王都最大手の闇ギルドのシンボルマークでございます」
と答えた。確かに言われてみればそうであったような気がする。
「間違いないか? よく知っていたな」
「はい間違いございません。先ほど騎士団から早馬で届けられた書状に記載されておりましたので」
「その闇ギルドが、昨晩何者かの襲撃を受けて壊滅したそうでして――こちらがその書状でございます」
何!? 壊滅した!?
なぜ壊滅した闇ギルドのシンボルマークが、このカードに書かれているのだ!?
執事から書状を引ったくり中を改めるが、確かに壊滅したと書かれている。それも本拠地が瓦礫の山と化し、生き残りもわずかしかいないだと!?
一体何があったと言うのだ。
「ひぃいっ! その闇ギルドは私たちがカーハインドの情婦を拐うよう依頼した所です!」
「ま、まさか……カーハインドの復讐でしょうか!?」
若い貴族はますます顔を青くして、ついには震えだした。
「馬鹿な。奴ら三十人にも満たない人数で来ているのだぞ。そんな数であのギルドを壊滅させられるはずがない」
「それにたかが情婦を狙わらたぐらいで、王都に喧嘩を売るものか」
「しかし昨日、情婦の誘拐に成功し監禁していると闇ギルドから報告があったのに、どういう訳か夜会の終わり頃その女が平然と我々の前に現れて――っ!」
ふむ、闇ギルドがしくじって逃したか、その女を助ける者が居たか……。
わからぬ。わからぬが、何か冷たいものが背筋を走っていく気がした。
◇
side:王都に住む平民
なんだあれは!? なんなんだ!?
深夜、酒を飲んで家に向かって歩く。
この辺はスラムや闇ギルドの拠点があり特に治安が良くないから普段は通らないようにしているんだが、今日は酒が入っていたこともあり遠回りが面倒になってな。
襲われないよう気を配って歩いていると、急に周囲が騒がしくなった。慌てて見渡すと黒ずくめの者たちが闇ギルドの拠点を囲んでいるじゃないか!
闇に紛れて全く気づかなかった………。
なんだ、抗争でも起きているのか? 面倒なところに出くわしちまったな。巻き込まれたら大変だと物陰に身をひそめ、暗闇の中目を凝らして様子を伺う。
闇ギルドから人が出てきて黒ずくめに襲いかかっているが、全く相手になってない。
しばらく黒ずくめたちは次々と襲いかかる者たちの相手をしていたが、相手が途絶えた僅かな隙をついて一斉に距離を取ると懐から何かを取り出し、闇ギルドの拠点に向けて投げつけた。
「ひぃいっ!」
刹那のあとすごい爆音と爆風が巻き起こり、俺は思わず叫び声を上がると目と耳を塞ぎ地に伏せた。
しばらくして恐る恐る顔を上げると、さっきまであったはずの建物が瓦礫の山に変わっている……。
――信じられない。
耳がキーンとする中、俺は来た道を戻って必死で走って逃げた。ちょっと横着をしただけでこんな恐ろしいことに出くわすなんて。
もしかしてあの黒ずくめたちは悪魔なんじゃ?
闇ギルドが悪魔との契約を破って報復にきたとか。
じゃなけりゃあんな一瞬で建物がなくなるハズがない。恐ろしい。




