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side:マルクス
夜会の最中、ボーイが白い封筒を手渡してきた。
封を開けると中には藍色の髪。エルザのだな。
さっと周りを見渡すと、ニヤけた顔でこちらを覗っている男が一人、二人……全部で三人か。
情報局もついてる。エルザのことだから無事だろう。
そう頭ではわかっているが、この目で無事な姿を見るまではどうしても心が納得しねえ。
足早に出口に向かおうとしたところでニヤけた男どもが近づいて来た。
「これはこれは今話題のカーハインド卿ではございませんか。何やらお急ぎのようですが、どうかされましたか?」
三人で視線を合わせてニヤニヤと気持ち悪い。俺の口から女が攫われたと言わせて、ここで大騒ぎするつもりだな。
「いえ、特に何も。夜も更けましたしそろそろお暇しようかと思っていただけです」
俺の言葉を聞いて強がりだと思ったのだろう。ますます楽しそうな顔をしやがる。
ああ確かに強がりだよ、心配で心配でたまらねえ。こいつらを今ここでぶん殴ってすぐにでもエルザの元へ行きてえ。
「そんな連れないことをおっしゃらずに、私どもともお話ししてくださいよ。それとも社交界を賑わす話題の人は私どものような若輩者は相手にしてくださいませんか?」
俺を引き留めて焦れさせるつもりか。
「とんでもございません。私の様な辺鄙者の話でよければいくらでも」
俺ができるだけ和かに答えると男どもは面白くなさそうな顔をした。
「そういえばいつも連れていらっしゃる妖艶な美女。今日はいらっしゃいませんね。どこか具合でも悪いのですか?」
自分らで攫っておいてよくもぬけぬけと。そんなに俺を怒らせたいか。
「いえ、彼女は少々所用がありましてね。そろそろ俺を迎えに来てくれるはずです」
男どもは俺の言葉に一瞬訝しげな顔を浮かべたが、すぐにハッタリだと判断したのか嘲笑を浮かべた。
「それは安心いたしました。無事に合流できると良いですね」
男どもがバカにしたようにそう言ったとき――
「マルクス様! 遅くなって申し訳ございません」
笑顔のエルザが駆け寄って来た。
良かった、無事だったか。ほっとする俺と対照的に男どもは驚きと焦りの表情を見せる。
「それでは皆様、私どもはこれで失礼いたします」「ご機嫌よう」
唖然とする男どもを尻目に俺とエルザは会場を出た。
◇
――「おい、捕らえたんじゃなかったのかよ」
「知らねえよ。闇ギルドのやつしくじりやがったな」
「ちっ、やっぱりあんな底辺の奴らに頼むんじゃなかったぜ。女一人捕まえる簡単な仕事も出来ないなんて」
「仕方ないだろ。こんな仕事に家の者は使えないんだから」
「あーあ、宰相閣下も期待してくださってたのにな」
「閣下にしくじったこと報告に行くか?」
「バカか! そんな報告したら閣下に無能だと思われるただろ!」
「そうだ! 失敗の報告ははいらない。次は成功させるからな」
「とりあえず闇ギルドに文句言ってやらないと。失敗したんだから返金と謝罪金を支払わせて、もう一度確実に拐うよう命じるぞ」
◇
深夜 王都にあるスラム街の一角
「うゎあああー」
「なんだお前ら!どこの回しもんだ」
「やめっ○€%:\>#%・・・」
ドゴッ ドガッ ドサッ
ドォーーーーン
「なんの音だ!?」
「ものすごい音がしたぞ!」
「わかりません! ただ闇ギルドの方から黒煙があがっています!」
「闇ギルド同士の抗争か!?」
「寝ている団員を叩き起こしてとにかく現場へ急げ!!」
なんだこれは……? 怪物でも出たのか?
闇ギルドの建物が瓦礫の山になっている。
王都でも最大手の闇ギルドで貴族との繋がりもあり、騎士団でも手に負えなかった奴らだ。敵になる相手などいなかったはずだが、見事なまでに壊滅している。
内輪揉め………ではなさそうだな。生き残りがいれば話が聞けるんだが。
デカい闇ギルドが消えたのは喜ばしいことだが、こいつらよりも強大な敵が現れたのであれば大変なことになる。
一先ず上に報告し指示を仰がなければ。




