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マルクお兄様がいつにも増して精力的に動いてくださっています。
元々マルクお兄様は毎日宿に引きこもっている私と違い、エルザと共に王都の様子を探るため、市井の民が集まる飲み屋に度々顔を出したり、賭博場に出入りしたりと日夜活動されていました。
それがここ最近は私の婚約を潰すため、貴族との会食や夜会を中心に出席するようにしてくださっているのです。
市井の民と触れ合うことは好きなお兄様ですが、貴族との付き合いは肩が凝るとあんなに嫌がっていたのに……。
そんなマルクお兄様が素敵な笑顔とスマートな話術で王都の貴族たちの心を掴んでいるなんて、お母様に言っても信じてもらえないかもしれません。
しかし困ったことに王子の婿入りを押し進めたい者からすればそんなマルクお兄様の行動は喜ばしいものではないようです。
今のところ直接的な危害は加えられていませんが、マリウス王子との顔合わせの日が近づくにつれ、何が起こってもおかしくない程に緊張が高まっています。
物理的な危害であれば、マルクお兄様の力量があれば遅れを取る事はないでしょうが、毒を用いられたらと思うと……。
「ロルフをマルクお兄様のところに行かせるべきだと思うの」
医療のスペシャリストであるロルフは毒にも精通しています。解毒はもちろんのこと、わずかな香りから飲食物に入れられた毒を見破ることもできる程です。
それゆえ宰相とのお茶会のときも従者に扮してまで私の側に付いていてくれたのですが、間違いなく今はマルクお兄様の方が危険ですから。
ロルフならばきっとマルクお兄様の身を守ってくれるはずです。
◇
side:マルクス
俺の動きをよく思わねえ者から、危害を加えられる恐れがあると情報局から警告が入った。
それを聞いたローラがロルフをこちらに寄越すと言い出したが、それをすると今まで王都の奴らに見せてきた俺とローラの関係性に疑念が生じる恐れがある。
それに兄妹仲が悪くないと王都の奴等に知られると、ローラに矛先を向ける者が必ず出る。男の俺よりローラの方が害しやすいと考えるのが当然だからな。
だからローラの気持ちはありがたいがロルフには今まで通りローラの側に居てもらう。
大体、何を置いてもローラの身の安全が第一だ。俺のためにローラの守りを薄くするなんて冗談じゃねえ。
それにそんな話が出てるって事は、俺の行動が予想以上に婿入りを進めたい奴の邪魔になってるってことだ。
毎日通信機で領地の親父やハイリ兄に相談して、話す内容や服装、細かい仕草まで指導してもらった成果が出たな。
親父から学んだ貴族らしい対応の仕方はもちろんだが、ハイリ兄が教えてくれた人の心を掴む話術が本当にすごかった。
俺は市井の民は好きだが血筋や爵位で人を見下す貴族は大っ嫌いだし、貴族に好まれるような会話なんて知らないし好かれたいと思ったこともない。
それなのに、ハイリ兄に教わった話術でハイリ兄になったつもりで話すと、みんな満足気な顔をしやがる。
ちょっと怖いなと思ったことはハイリ兄には絶対に内緒だ。
ハイリ兄は人の弱いところを的確に突いてくる上に、俺は弱味もいっぱい握られてるからな。絶対怒らせたくねぇ。
話を戻すが、俺の動きが気に食わねえのは宰相だろう。
話してみた感じ今回の婿入りに関しては宰相派も一枚岩ではないようだし、動くとすれば宰相本人に何かしらの兆候が見られるはずだ。
情報局にはレーザー盗聴器の使用も許可し、宰相の兆候を見逃さねえように指示した。
窓ガラスや物体に光線を当てて離れた場所からでも室内の音を拾えるレーザー盗聴器を使えば、情報局も宰相の動きを追いやすいだろう。
顔合わせまであと十日。ここからが正念場だな。
さあ今日も夜会だ。




