表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
117/121

117

 肩をいからせて謁見の間を出て行く王を、皆なにも言わずに見送ります。


 教皇聖下は驚いたような、呆れたような、何とも言えないお顔をされていました。


 教皇聖下のようなお方に、挨拶もせず勝手に退出するような王はきっと初めてでしょう。


 なぜ王自らが国の権威を貶めるようなことをするのでしょう。


 理解できません。


 ですが王には、それが権威を貶める行為だということすら、理解できていないのかもしれません。


「では、王からの承認もいただけたことですし、我々もこれで失礼いたします」


 お父様は静まり返った謁見の場で、動じることなくおっしゃいました。


「は? い……いや! 待て! 認めてなどおらぬぞ! 我ら院政家に属する者からの承諾も得ず、決まったことのように言うのはやめろ!」


 宰相は丁寧な言葉遣いも忘れて、お父様に詰め寄ります。


「では、王以外の誰がこの国の代表として独立を拒否するのです?」


 お父様が冷静に返すと、


「もちろん我ら院政家だとも」


 宰相が、幾分か落ち着いた様子で答えを返します。


「そうですか。この国は王政ではなかったのですね」


「……王の体調が優れぬ場合は、我らの意思が尊重される!」


「ああ。王は体調不良でしたか。それは存じ上げませんでした。失礼しました」


「……」


 涼しい顔をするお父様と対照的に、宰相の顔はどんどん赤くなっていきます。


 それは怒りでしょうか? 羞恥でしょうか?


 どちらにせよ、王をそのような存在に押しやったのは、ほかでもない院政家の皆様です。


「では、院政家の皆様は我らの独立を認めていただけないと?」


 お父様が問いかけます。


「当然だ」


 宰相は大きく頷きました。


「そうですか。それは残念です。しかし――認めていただけないのであれば、それで結構」


「は?」


「ことの顛末を周辺国にお知らせすれば、私たちの決断に理解を示してくださる国も多いでしょう」


「なに?」


「円満に独立できなくとも、我々はなんら困らないということですよ」


「……王都の支店は営業できなくなるぞ!」


「構いませんよ。我々の商品はありがたいことに、多くの方々から支持を得ています。支店を開いてほしいと、すでに声をかけてくださっている国も少なくありません」


「……」


「それに独立が認められない場合、王都の支店は元々引き上げる予定でした。居心地の悪い国でわざわざ商売をする必要はありませんからね」


 宰相は口をもごもごと動かしながらも、言葉が出ません。


 その様子に周りの貴族たちがざわめき出しました。


「あの支店がなくなるのは困る」

「ああ。まだ入荷を待っている品もあるのだ」

「妻や娘も怒り狂うぞ……」


 そのとき、大柄な男性が一歩前に踏み出しました。


「認めるべきではありませんか?」


 宰相に向かって、静かに問いかけます。


 院政家の重鎮、ダグラス様です。


 以前の婚約騒動の頃からマルクお兄様と親交があり、少し前に当主へ就任された際には、カーハインドからもお祝いを贈らせていただきました。


 王命が出る前には、わざわざ手紙で忠告までくださった方です。


 院政家の中でも、私たちが信頼を寄せている数少ないお方でした。


「交易台帳の書き換えなどという、とんでもないことをしでかしたのです。それが明るみになった以上、カーハインド家の決断は道理でしょう」


「……なにを!」


 宰相は鋭い目でダグラス様を見据えます。


「ここで反対してカーハインド家がケルファに留まったとて、いつクーデターを起こされるかと戦々恐々として過ごすことになるだけではありませんか?」


「クーデター……だと!?」


「ええ。信のおけぬ国に留まらなければならない。であれば、国を変えるしかない。そう考えても、なんら不思議はありません」


「クーデター?」

「それは飛躍しすぎでは?」

「辺境からクーデターなど……」


 二人のやりとりを見守っていた周囲から、失笑と共にダグラス様の言葉を否定する声が漏れ出します。


 それを聞いて宰相は、勝ち誇ったように鼻を鳴らしました。


 しかし――


「そうでしょうか? 彼らには飛行艇があるのですよ。もし本当に敵対することになれば、我々に空からの攻撃を防ぐ手立てがありますかな?」


 ざわっ……


「王都まで一月かけて陸路を進む必要などないのです。彼らは空から来られる。我々は遠い地にいるカーハインド家の動きを、すぐさま察知できますか? それとも、いつ来るとも知れぬ彼らを警戒して、辺境を四六時中見張り続けますかな?」


 皆が息を飲み、騒がしかった謁見の間が徐々に静寂に包まれていきます。


「確かに飛行艇を使えば……」

「王都の城門も意味を為さぬぞ」

「ああ、直接王宮へ攻撃を仕掛けることも……」

「……辺境を見張り続けるなど、不可能だ」


 皆の顔色が悪くなっていくのがわかります。


 事実、私たちには王都を攻撃する手段があります。飛行艇で上空から爆薬を落とすことだって、やろうと思えばできるのです。


 ですから、ダグラス様の指摘は間違いではありません。


 もちろん罪のない人々を巻き込む恐れのあることをするつもりはありませんが。


「どこかの闇ギルドのように、王宮も瓦礫の山か……」


「……!?」


 マルクお兄様がぽつりと呟くと、皆の視線が一斉にお兄様へと向けられました。


 目を見開いて固まる者たちを見回し、お兄様はニヤリと口の端を上げます。


 ざざっ――


 たったそれだけで、何人かの者が後退りし、中にはその場にへたり込んでしまう者までいました。


「か……閣下! カーハインドの独立を認めるべきです!」


「ええ。王都を危険に晒してはなりません!」


「辺境が一つ版図から消えても、我が国に痛手はありません!」


 貴族たちは冷や汗をかきながら言い募ります。


「独立を認めれば、王都の支店はこれまで通り残してもらえるのかね?」


 黙り込む宰相を横目に、ダグラス様が落ち着いた様子でお父様に問いかけられます。


「ええ。もちろん」


 お父様はふわりと微笑んで頷かれました。


「ならばますます認めるべきです!」


「そうですぞ! 王都の民も、カーハインドの商品を頼りにしております。支店を失えば、民の不満も避けられますまい」


 もはや、反対の言葉を口にする者は誰もいません。


 ここで独立に反対すれば、カーハインド家だけでなく、王都の貴族や民たちからも反発を招くことになる。


 かといって認めれば、自らの権威に傷がつく。


 どちらを選んでも、宰相にとっては苦しい選択です。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ