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次の日私たちは王都にある老舗の服飾店にやってきました。
宰相との面会のためのドレスを購入するためです。
もちろん領地から持って来てもよかったのですが、カーハインド領では服飾のレベルも上がっており、ドレスは生地からして違います。
いくらデザインを落としたものを用意しても、生地の良さに気付かれると面倒なことになるかもしれませんからね。
王都の者はそういった審美眼は優れていますから。
それに王都の服飾レベルと店の対応もチェックしたかったのです。
ーー
「あの……あまり時間もありませんので、既製品でサイズの合ったものをいただきたいのですが」
私がおどおどしながらそう伝えると、店のものは嘲ったような顔をして数着のドレスを出してきました。
どれもお世辞にも優れたデザインとは言い難い、よく言えばシンプル、悪く言えば地味なドレスばかりです。
「この辺りでしたらお値段も抑えられますし、お嬢様にもよくお似合いかと」
ニヤけた顔が隠しきれていませんよ。田舎者だとバカにしてますね。
「姫をばかにしてるのか!?」
ロルフが私を庇うように進み出ます。
「ロルフ、良いのです。私は気にしません。
ただもう少し装飾の凝ったドレスはありませんか?
大切な方とお会いするのです。この者の正装も一緒に購入しますから……」
「ふっ……。申し訳ありません。よそのことは存じ上げておりませんで。ご気分を害されたなら謝罪します」
私が下手に出ると店の者は益々嘲った顔をしながら謝罪の言葉を口にします。
それにしても”よそのこと”ですか。王都以外を下に見ているのがありありと分かる言葉ですね。
「それでどうされますか。購入されますか?
時間が足りませんので当店でサイズ直しは出来かねますが」
今の私は肌の色をメイクで悪く見せています。
ですから、試着の際は顔と体の色の違いに気づかれないように気を付けなければと心配していたのですが、まさか試着もなしにドレスを売りつけられるとは。
提示された価格もどう見ても適正とは思えません。
「文句があるならば買わなくて結構」ということでしょうね。
だからといってもしここで買わずに帰れば、手を回されて王都のどの店に行ってもドレスが手に入らなくなるのが目に見えています。
ここで揉めるつもりはありませんから、おとなしくドレスを受け取って帰るとしましょう。
◇
「ほんっと王都のやつってなんでみんなあんなに高飛車なんだろうね。本気にムカついたから演技しなくてよかったのは助かったけど」
ふふ、ロルフは演技が得意ではありませんから、今日の役回りも上手くできるか心配していましたからね。
今日のロルフの役回りは姫に唯一心を砕いている側仕え。これでロルフと他の者との温度差が王都に伝わったでしょう。
それにしても王都の貴族と接することのある服飾店や宝飾店、大店の商家などは、あからさまにこちらを見下し、横柄な態度をとるものが本当に多かった。
庶民の中にも領外の者を下に見る者はいましたが、こちらが身分ある者とわかっているからでしょうか。そこまであからさまな態度はとりませんでした。
地方を見下し、その地方から集めた税で運営している王都。ならば王都は地方に何をしてくれるのでしょう?
不作となったときに助けてくれるのか、新しい技術を生み出し国を富ませてくれるのか、答えはノーです。
王都が行うのは地方領地同士の争いの仲介や、古くから続く儀式を執り行うことぐらい。
王都への税は王家への献金であり、尊王の念を表すためのものだとされています。
――強制された尊王の念に意味はあるのでしょうか。
◇
それからは外出することもなく、宿で過ごすこと一週間。
本当は私もお忍びで王都の調査をしたかったのですが、マルクお兄様からも領地の皆からもOKをもらえませんでした。
今日ようやく宰相から招待状が届きました。名目は茶会、時間は正午過ぎ。
未婚の娘一人呼び出すならば昼間の茶会は妥当ですね。
場所は宰相の邸宅ですか。
それより日付が明日です。
こちらの都合など全く考えていませんね。私を軽んじているのがよくわかります。
まあそれで良いのですが。
まずは宰相へ了承の返事を出して、マルクお兄様と領地の者にも、念のため連絡を入れておきましょう。




