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知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


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 王都の賑わいはそれなりと言ったところですね。

 やはり首都ということで人口は多いように見受けられます。


 もっとも他の領地と比べれば栄えているのでしょうし、この国の最先端の技術が使われているのでしょうが、カーハインド領に住む者としては前時代的な街並みに感じてしまいます。


 道幅は狭くてボコボコ、なにより衛生環境が最悪です。

 あまり長居したくありませんね。病気になってしまいそう。


 足早に宿屋街に向かいます。

 裏通りも見てみたいところですが、表通りでさえお世辞にも治安がいいとは言い難いありさまですから、諦めた方がよさそうですね。


 私たちの宿は貴族御用達の高級宿ではなく、あえてこじんまりとした庶民的なところを選びました。


 貴族ならば懐に余裕がなくとも旅先では体面とセキュリティーを考え高級宿を選ぶのが普通ですが、そういった宿は王都との繋がりも深いですから。


 宿での様子を逐一報告されるようなことになれば、ずっと気を張っていなければならず、疲れてしまいます。


 それにそういった宿は相手の爵位や立場によってあからさまに態度を変えるそうですから、私にとって居心地の良い空間にはならないでしょう。


 ただ申し訳ないですがマルクお兄様たちには高級宿に泊まっていただきます。

 お兄様たちならば悪い扱いは受けないでしょうし、様子を報告されても困りませんから。


 もちろんこれも婚約話をなくすための策のひとつです。


 宿屋街でマルクお兄様と別れ、私とロルフ、護衛四人と侍女二人の合計八名で宿に入ります。


 ◇


「お客さん、うちの宿は貴族の娘さんが泊まるようなところじゃないよ」


 受付で、この宿のおかみさんでしょうか?

 ベージュの髪を一つにまとめてエプロンをつけた、恰幅のよい女性が困ったような顔で声をかけてきました。


 あらあら、すぐに貴族だとバレてしまいましたね。

 旅装ですし王都に入る前に顔色が悪く見える地味な化粧と、くすんだ髪になるよう染髪もしましたから、世話係が居ても商家の娘くらいに見えるかと思ったのですが……


「大丈夫です。特別な対応は求めませんし、他の方と同じように扱っていただいて問題ありません。

 もちろん不敬だと騒ぐこともいたしませんので、こちらに泊めていただけませんか?」


 私が答えると女性は少し困った顔をしましたが、私を上から下までさっと流し見て、共の者たちのこともチラッと見ると、今度は少し不憫なものを見るような顔をして


「わかったよ。私はこの宿のおかみをしているマリーだ。お貴族様への言葉遣いなんて知らないからね、これで勘弁しておくれ。部屋は二階だよ」


 と部屋の鍵を差し出してくれました。


「それとね、食事が必要なら早めに言っておくれ。部屋に運ばせるからね」


「お気遣いありがとうございます。

 今日はもう部屋から出ませんので、お食事もお願いします」


 ぺこりと頭を下げると二階への階段に向かいます。


 こういった宿は食事は食堂でいただくのが一般的でしょうに、私があまり人目につかないように配慮してくれたのでしょうね。


 さすが情報局が事前に調べ、OKを出した宿ですね。


 二階に上がると廊下の両側に部屋が並びます。

 用意してくれたのは突き当たりから順に並びや向かい側の部屋でした。


 これもおかみさんの心遣いでしょう。

 できるだけ他の者が入り込まないように、防犯を重視した部屋割を用意してくれたようです。


 私の部屋の両側を護衛の部屋とし、向かいをロルフと側仕えの侍女たちの部屋としました。

 護衛と侍女は二人で一部屋、私とロルフは一人で一部屋を使います。


 念のため先に護衛が全ての部屋に入り、問題がないことを確認したあと私も部屋に入ります。

 旅装を解くと、早速侍女たちがやって来て荷解きを始めてくれました。


「あなたたちも長旅で疲れているのだから、荷解きは急がなくて良いんですよ。

 私はある程度のことは自分でできますから、あなたたちも少しゆっくりしてください」


「せっかく姫様のお世話をお任せいただいたのです。

 姫様が心安らかに休めるお部屋にしてからでないと、私たちが気になってゆっくりなどできませんわ」


 彼女たちは笑顔でそう言うとテキパキと荷解きを進めてくれます。


 しばらくすると良い香りが漂ってきて、目の前に温かい紅茶が置かれました。


「さ、姫様も温かいお茶で一息入れてください。

 宿の周りは情報局の者が固めておりますから、王都のねずみが入り込む懸念はございませんわ」


「ありがとう。そうさせてもらうわ。

 それにしても何故おかみさんに、すぐ貴族だと見抜かれたのかしら?」


「見た目は変えられても染みついた気品や所作は隠せるものではございませんから……」


 侍女が苦笑いで答えます。

 なるほど。そこまで気を回していませんでした。

 宰相との面会のときには、その辺りにも気を遣わなければ。


「では私共は部屋に戻ります。何かございましたらご遠慮なくお声掛けくださいませ」


 侍女たちが一礼して部屋を出て行くと、私はカップに口をつけました。

 カーハインド領のお茶ね。落ち着くわ。


 今日到着することは使者を通して宰相に伝えてありますが、権威主義の王都の宰相です。内々の顔合わせといえ、一週間ほどは待たされるでしょうね。


 ◇


 side:宰相


「いかがであった?」


「はっ、本日正午過ぎに二十数名で王都入りし、娘はあなぐま亭に、兄と思われるものは仁木屋にそれぞれ宿をとったようです」


 昨日カーハインドから使者が来た。

 今日にも王都に入るというので物見の者を出したが、その報告に首を傾げる。


「あなぐま亭など庶民の宿ではないか。

 仁木屋が満室だったのか?」


「いえ、娘の方が先に宿に入り、その後兄が仁木屋に向かいましたので」


 ますますわからぬ。なぜわざわざ宿を分ける必要がある?

 それも娘を安全性の低い安宿に泊まらせるなど貴族としてありえぬ。


 ……もしや兄妹仲が悪いのか?


「その……娘の方は旅装もずいぶんくたびれており、共や護衛の数も兄の方が多く………」


 やはり兄から疎まれておるのか?


 それにしてもこやつらは王家の権威を得るために、娘を売り込みにきたのであろう?

 普通なら娘を着飾って王子の目に留まるようにするであろうに。


 もしや王都入りから見られておると思わず、面会のときだけ取り繕えば良いとでも考えておるのか?


 そうだとすればなんとも浅はかなことよ。



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