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【完結】知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


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「異端審問会!?」


 情報局からもたらされた報告に、思わず大きな声が出ました。


「異端審問会って……俺らのなにが"異端"なんだ?」


 マルクお兄様が困惑に満ちた声でおっしゃいます。


「ポーションを作っていることでしょうか?」


 シルが首を傾げます。


「ええ。教会は他国産ポーションを異端認定したようですわぁ」


 エルザが資料をめくり、


「ただ、教会のどの教義にも、ポーションを作ってはならないとは記されておりませんけど」


 と、肩をすくめます。


「そうですね。わたくしも聞いたことがありません」


 聖職者であるアンヌ様もそうおっしゃいます。


「だいたいなんでカーハインドだけなのさ。帝国もポーネも呼ばれてないんでしょ?」


 アルフお兄様が眉を寄せます。


「ケルファ王都の教会に、帝国やポーネを召喚する権限はないからな」


 おじい様のおっしゃる通り、帝国やポーネに対して異端審問会を開けるのは、それぞれの国にある教会、あるいは聖王国にある総本山くらいでしょう。


「王都の教会は、帝国やポーネの教会にも異端審問会を開くように働きかけるそうですわぁ」


 情報局はそこまで把握しているのですか。さすがですね。


「私は動かないと思うけどね」


 割って入るように声をかけたハイリお兄様に、私は小首を傾げます。


「なぜですか?」


「考えてごらんよ。相手は帝国やポーネなんだ。カーハインドのような一領地ならまだしも、一国を相手に異端審問会を開くとなれば、それは宗教問題じゃ済まない。いくら教会の権威が強くても、国を相手に『異端だから審問する』なんて迫れば、あっという間に外交問題に発展してしまうよ」


 なるほど。


「要するに叩きやすいところだけ叩くということだ」


 お父様が小さく息をつきます。


「でもよ、それなら異端審問会でポーションの正当性を訴えればいいんじゃねえの?」


 ルーカスが言うように、それが一番でしょう。ただ……


「……異端審問会でその判断が覆ることは、ほぼありません」


 震えるアンヌ様の声が、重苦しく響きます。


「ええ。"審問会"と銘打っていますが、実際には異端を一方的に認定し断罪する場のようなものです。こちらが何を言おうとも聞き入れられることはないでしょう」


 私がそう告げると、部屋の空気が張り詰めました。


「だからこそ、普通は教会もそう簡単に異端審問会なんて開かないんだよ」


 ハイリお兄様は静かに目を細めます。


「異端審問会というものは、本来、十分な証拠を積み重ね、『異端であることは間違いない』と判断された者に対して開かれるものだからね」


「だったらどうすりゃいいってんだ」


 イヴァンが拳を握ります。


 一神教のこの世界で教会から異端認定されてしまうと、カーハインドは信徒との取引を断たれ、巡礼者や商人も寄りつかなくなります。教会に従う貴族は距離を置き、他国との交易にも支障が出るでしょう。


「異端審問会そのものを潰すしかない」


 おじい様が力強い声で言い切られました。


「そんなこと……できるのですか?」


 戸惑いながら問いかけるシルに、他の面々も不安そうに顔を見合わせます。


「できるできないの話ではない。やらねばならない。異端認定を受けてしまえば、カーハインドは独立したところで立ち行かなくなる」


 お父様が拳で机を叩くと、部屋に重苦しい空気が流れました。


「大丈夫ですよ。カーハインドは今まで、たくさんのご縁を育んできましたからね」


 私は努めて柔らかい声を出して微笑みました。それにつられてか、皆の顔つきが少し柔らかくなったように見受けられます。


(良かった)


「そうだな」


「ええ。カーハインドの品が手に入らなくなれば、困ると言う方も多いでしょう」


「それに、教会の横暴を許すべきではないと考える方も、きっといらっしゃるはずですわぁ」


「その通りだ」


「味方は決して少なくありません」


 皆が口々に賛同の声を上げ、重苦しかった空気は少しずつ希望へと変わっていきました。


「それに、教会が十分な証拠もなく異端審問会を開こうとしている。それほどに追い詰められているということさ」


 ハイリお兄様が明るい口調でおっしゃいました。


「では早速動き出しましょう! カーハインドに教会からの正式な召喚状が届くまで、まだ一月はかかるでしょう。つまり異端審問会が開かれるのは、最低でも二月後です。出来ることはたくさんあります!」


 情報局が通信機で知らせてくれたからこそ、王都に布告が出されたその日に情報を得ることができました。


 しかし、カーハインドへの召喚状を持った使者が領地へ辿り着くまで、陸路で一月はかかります。


 そして、使者が召喚状を届けたことを王都の教会へ報告するまでに、さらに一月。


 つまり、陸路でしか動けない教会が、それより早く異端審問会を開くことはできません。少なくとも、私たちには二月の猶予があります。


 私はまず、レオ様に連絡を入れることにしましょう。


 この件を知れば、きっと力を貸してくださるはずです。あのお方が黙って見過ごすとは思えません。


 そのうえで、帝国、ポーネ、その他の交易先、そして王都で築いた縁にも協力を仰ぎます。

 二月あれば、まだ打てる手はあります。



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