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【完結】知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


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 side:王都にある教会本山の大司教


 やはり、あのときの違和感を見逃すべきではなかった。


 飛行艇という未知なる乗り物で現れたカーハインドは、支店を構えるやいなや瞬く間に王都へ販路を広げた。


 それだけであれば、教会への影響はまだ限定的だった。


 だが、次に持ち込まれたのはポーションである。


 ポーションが聖王国以外から流通した――それだけでも教会の権威を揺るがしかねない。ましてやそれにカーハインドが関わっているとなれば、王都の教会を任された者として見過ごすわけにはいかなかった。


「閣下。このままカーハインドに商売を続けさせれば、聖王国の怒りを買いますぞ」


 私は宰相へ直談判に訪れた。


 しかし――


「聖王国の怒りを買ったところで、ポーションが手に入るなら問題あるまい」


 宰相は椅子に深く腰掛けたまま、面倒そうに言い放つ。


 私が聖王国の大神殿から派遣された当初は、聖王国との関係を保つため、あれほど私に対して頭を下げていたというのに。


「神より聖王国に授けられた秘術を、他国が真似るなど神への冒涜に等しい!」


「それを私に言われてもな……帝国に直接抗議すればどうだ?」


「だが、カーハインドもポーションに関わっている! カーハインドはこの国の貴族でしょう!」


「カーハインドは、あの飛行艇でポーションを運んでいるだけではないのか? ならば、カーハインドを止めたところで、帝国が別の商人に運ばせるだけだ。何も解決せんよ」


 宰相は取り合う気がないらしい。


 手のひらを返したような態度が腹ただしい。


 私はその場を辞すると、聖王国から派遣されている使者と落ち合った。


「いかがでしたか? 宰相の返答は」


「だめだ。まるで取り合う気がない」


「それでは困ります。聖王陛下も現状を大変憂慮されております」


「ああ。帝国産ポーションが各国へ広まれば、聖王国の立場も危うくなる」


「聖王陛下からは、早急に事態を収拾せよとのご命令です」


 使者は淡々と言葉を返す。


「わかっている。だが取れる手はそう多くあるまい……」


 私は顎に手を当て考える。


「そもそもカーハインドは本当に、物流に協力しているだけなのか?」


「わかりません。あの地は異常に防衛が強固で、聖王国の内偵が進んでいません」


「……怪しいな」


 カーハインドはポーションを売り出す以前から、山賊対策や疫病対策を口実に入領を厳しく制限していた。


 あれほど徹底して外部の目を遮る必要が、本当にあったのだろうか。


 今では、その警備もさらに強化されているはずだ。


「ならば、帝国やポーネへの内偵で何か掴めていないのか?」


「そちらからも芳しい報告はありません。ですが、両国ともカーハインドに対する評価が異様なほど高いようです」


 なぜだ……。


 帝国とは領地を接し、ポーネは領主夫人の母国。

 どちらとも縁はある。だが、これほど深い関係を築くほど頻繁な交流があったとは聞いていない。


 ポーションという国家の根幹を揺るがしかねない事業を任せるほどの信頼が、短期間で築かれたとは到底思えなかった。


 帝国やポーネへカーハインドの悪評を流し、両国との関係を裂くことも考えたが、そこまで信頼を得ているとなれば、その策は望み薄だ。


「……まずは王都に噂を撒く」


 ひとまず、これ以上他国産のポーションが王都に広まることを阻止しなければ。


『他国産のポーションは聖王国のものとは製法が違う』


『効果が安定しないらしい』


『安価な品には理由がある』


「それに合わせ、カーハインド領内の教会にも書簡を送る」


『カーハインド家を説得し、ポーション事業から手を引かせよ』


『従わぬ場合、教会としても関係を見直さざるを得ない』


「聖王国やポーネで何か掴めたら、報告しろ」


 ……これで状況が好転すると良いが。


「わかりました。聖王陛下は大司教殿に大きな期待をされています。くれぐれも落胆させることがないよう願います」


 この使者は言葉こそ丁寧だが、私を敬う気持ちは見えない。


 聖王陛下の使者とはいえ、一介の文官風情が。


 たとえ他国産ポーションの流通を完全には断てぬとしても、私の管轄内だけは別だ。


 王都から、他国産ポーションを締め出してみせる。


 ◇


「王都ではそんな噂が流れているのですね」


 エルザからの報告に、私は眉を寄せました。


「それから、私どもの教会にも王都の大司教から書簡が届いております」


「カーハインド家をポーション事業から撤退させよ、と。従わなければ、教会との関係悪化も示唆されております」


 アンヌ様の報告に、私はさらに眉をひそめます。


「それで? 王都の反応はどうなんだい?」


 ハイリお兄様は笑みを浮かべたまま、エルザに問い掛けました。


「うふふ。笑い飛ばす者がほとんどですわぁ」


「ポーションの売り上げも、順調に伸びています」


 シルもニヤリと笑います。


 よかった。少なくとも今のところ、噂の影響は限定的なようですね。


 それを聞いてアンヌ様も安心されたようで、


「書簡には、受領した旨と『領主家へ伝達する』とだけ返信いたします。教会に領主家の事業を止める権限はありませんので」


 そう言って微笑まれました。



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