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【完結】知識チートで目指せ独立国家〜王家とのご縁は遠慮します!〜  作者: 花日


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 三日もすると、私たちの元にはお茶会や夜会の招待状がひっきりなしに届くようになりました。


 私たちは、受ける先が特定の派閥に偏らないよう慎重に出席先を調整しながら、社交に励みます。


 そして夜会やお茶会に参加するたび、それぞれの立場を生かしながら、カーハインドの特産品をさりげなく紹介していったのです。


 その甲斐あってか、社交場に出るとさまざまな立場の方から声を掛けられるようになってきました。


 そんな折、私宛に、宰相の奥様であるキャサリン様からお茶会の招待状が届いたのです。


 正直、あの婚約騒動のときに、ハイリお兄様よりも第三王子がカーハインドの家督を継げばいいとおっしゃったキャサリン様に、良い印象はありません。


 ですが断ると角が立つのは明白。

 院政家で最大規模の派閥を持つ宰相の奥様ですから、社交界での影響力も大きい。


 私は念入りな準備をした上で、お茶会に挑むことにしました。


 ーー


 お茶会は宰相派閥の夫人や令嬢を集めた、女性ばかりの大規模なものでした。


「キャサリン様、ご無沙汰しております。本日はお招きありがとうございます」


 私が微笑んで挨拶すると、キャサリン様は目を細められました。


「まあ……ずいぶん印象が変わったこと」


「ありがとうございます。以前王都へお招きいただいた折、キャサリン様のお姿を拝見して、私も見習わなくてはと思ったのです」


「あら……そうだったの」


 キャサリン様の目つきが、少し柔らかくなったように見えます。


「それにしては今日の衣装、見慣れないデザインだけれど、どちらで仕立てたのかしら?」


「こちらは帝国で仕立てました。カーハインドは帝国に近いものですから、自然とあちらで誂える機会が多いのです」


 私が『帝国』と口にした瞬間、その場の空気がわずかに揺らぎました。


「帝国の仕立てなのね。だから雰囲気が違うのかしら」


「まあ、帝国で?」


「刺繍も見慣れないわね」


「あちらでは今、このような意匠が流行しているのかしら」


 その話題に惹かれたのか、周囲の夫人方も次々と会話に加わられ、話題はあっという間に今の流行の話題へと移っていきます。


 その様子を見つめるキャサリン様は、どこか面白くなさそうにティーカップへ手を伸ばされました。


ーーこれはいけませんね。


「キャサリン様は、このような意匠はお好みですか?」


 私が笑顔で声を掛けると、キャサリン様は驚いたようにわずかに眉を上げられました。


「ええ……そうね。素敵な意匠だと思うわ」


「キャサリン様にそうおっしゃっていただけて安心いたしました。王都の皆様のお目にかなうか、少し案じておりましたので」


 私は眉を下げて微笑みます。


「王都の皆様にも楽しんでいただければと思い、こうした意匠のものも支店で扱う予定なのです」


「まあ。帝国の品を扱われるの?」


 キャサリン様が小さく目を見開かれました。


「ええ。帝国の衣装や宝飾品、それに……茶葉なども予定しております」


「……茶葉?」


 ーーふふ。目の色が変わりましたね。


 キャサリン様が紅茶を大変好まれ、珍しい茶葉に目がないことは、情報局の調査で判明しています。


 だからこそ、この日のために切り札として用意してきたのです。


「はい。茶葉に関しては帝国産だけでなく、他国の名産も取り揃えようかと」


「他国の……」


「はい。例えば、遥か高山の霧深くで育つ高地茶は、瑞々しい香りがとても魅力的です。それから東方には、バラと蜂蜜のような香りを楽しめる珍しい黒茶もございます」


「そんなお茶が……!?」


「ええ。それに、ミルクをたっぷり入れても香りが負けない濃厚な茶葉もございます。こちらの焼き菓子にもきっとよく合いますから、皆様にもぜひ召し上がっていただきたいと思っているのです」


「それは絶対に味わいたいわ! いえ、味わわなければならないわ!」


  キャサリン様は、もう私を試すようにはご覧になっていません。その瞳には、カーハインドがもたらす新しい品々への興味と期待が宿っていました。


「それで。支店の開店はいつなのかしら?」


「わたくし開店したら必ず参りますわ」


「ええ。わたくしも」


 皆様、期待に満ちた目で私を見つめます。


「今、支店設置のための許可をお待ちしているところです」


「まあ、そうでしたの」


「でしたらキャサリン様がお詳しいのかしら?」


「ええ。誰より早くお知りになれるお立場ですもの」


「今どのあたりまでお話が進んでいるのかしら?」


「ご主人様もお忙しいでしょうけれど、一度お尋ねいただけませんこと?」


 皆様が胸の前で手を重ねて、キャサリン様に熱い眼差しを向けました。


「ふふ。よろしくてよ。主人が帰ったら聞いてみますわ」


 キャサリン様は小さく扇で口元を隠しながら、満足げに頷いておられます。


 その表情を見て、私は胸をなで下ろしました。


 どうやら、このお茶会は無事に乗り切れたようです。


 私はお茶が冷めるのも忘れて盛り上がる皆様のお話に、楽しげに相槌を返すのでした。



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