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第70話 一番大事な婚約者?!

「こ…婚約者ですって」

とイザベラはアシュリンを指差して口をパクパクさせた。


「えぇそうですよ。そう言うわけですから」

「そんな事認められるわけがないわ」

「おかしな事を…何故、貴方の承認がいるのですか?リチャードの親は私です。その親がそう言ってるのですよ」

「いいえ!貴方がその親でも…国王陛下がお認めにならなければ…そんなものは無効だわ!!」

とイザベラは鼻息荒く反論した。


「馬鹿な割にはそう言う事には知恵が回るんですね。でもそうかしら…アーサーが本当に反対できるのかしらね」


アーサーとはグリムロック王国の現国王の名前である。

ララは現国王陛下がまだ王子時代の恋人であった。色々あって結局、結婚までは至らなかったが、アーサーとの間にリチャードが生まれた。

リチャードは婚外子であるが、彼の出生を不憫に思った前国王、アーサーの父親がリチャードに爵位と領地を与えたのだ。


「とにかく、わたくしはそっちの女がリチャードの婚約者なんて認めません!!たかだか伯爵令嬢如きが次期国王の妻だなんて…世間の笑いものだわ」

「そう言うイザベラさんも伯爵令嬢ですわよね?」

「わ・た・く・し・は、グリムロック王国の宰相の娘です!!ただの伯爵令嬢と一緒にしないで、この飛べない豚」

「まぁ…言いたい放題!!えぇ飛べない豚ですけどね…ナメクジよりはマシだと思うわ。豚は愛嬌あるけどナメクジは害虫ですものね」

「な…ナメクジ。もしかしてそれはわたくしの事を言ってらっしゃるの?」

「もしかしなくても貴方しかいないでしょう。もしかしてナメクジの自覚がないの?」

「なんですって!!」

益々ヒートアップする、飛べない豚vs粘着ナメクジの女の戦い。


「二人とももうやめてください」

リチャードが止めに入った。

いきなりアシュリンが婚約者という話になってフリーズしていたが、これ以上放っておくとどこまで二人の泥試合になるのか分からないからだ。


「イザベラ、君はもう帰ってくれないか?そして二度とここへは来ないでくれ!君の父親もだ」

「リィーチャードォ。そんな」

「不快だ!私が一番大事にしているルーカス伯爵令嬢に対して、君の言動は聞くに堪えない」


(私の一番大事…)

その言葉を聞いて、アシュリンは心の中で何度も反復していた。


「わかりましたわ。こんな辺鄙な土地には二度と来ません!!でも…リチャード!これだけは肝に銘じておいてね!!次期国王に相応しいのは誰か?それはこのわたくし、イザベラ・スピルバーグですからぁ!!」


王妃という地位に執着するイザベラは、アシュリンの方をキッと睨むと、足を踏み鳴らしながらブラックウッド公爵の別宅を出ていった。


イザベラが去ったあと、

「母上」

とリチャードが頭を抱えて言った。

「私とアシュリン嬢がいつ婚約したんですか?」

「あら…そうなの?でもリチャード、独身の淑女が常に貴方の側にいるというのは、もう婚約したも同然ですよ。世間はそう見ます」

「いや、世間がどう見ようが…私とアシュリン嬢は親友です」

「往生際が悪い子ね」

ララはクスリと笑った。


「貴方がそういうならそれでもよいけど…アシュリンさん」

「あ…はい」


『一番大事にしている』、その後に『親友』というリチャードの口から発せられた言葉を聞いて、アシュリンは落胆していた。

そう、自分はリチャードにとって一番大事な親友なのだ。それ以上ではない。


「この馬鹿な男のために、しばらくは婚約者の振りをしてもらってよいかしら?」

「…わかりました。親友としてお引き受けしますわ。それがリチャードのためになるのなら」

と少しばかり痛む心を押さえて、アシュリンは胸を叩いた。

偽りでも婚約者としてリチャードの隣に立てるのだ。


だが、

「それは駄目だ!!」

と猛然とリチャードが反論したのだ。

さぁ皆さんご一緒に

「なんでや!リチャード!!」

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