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第68話 筋肉モンスター敗れる!?熟女パワー炸裂

ドスドスドスドスッ!

地響きのような豪快な足音を鳴らし、真っ先にアシュリンへと抱きついたのは、ほかでもないララであった。

「アシュリンさん! よぐご無事で……っ!」

ペルシャの給油所で出会い、『鉄の鳥』の座席をアシュリンから譲ってもらったララは、あれでいて彼女の身を本気で心配していたのだ。


「貴方がペルシャから本当に自力で戻ってこられるのか、私ったら後になって『なんて酷いことをしてしまったの!』と悔やんでいましたのよ。もう心配で心配で……胸がいっぱいになって、余計に過食してしまいましたわ!」

何を隠そう、ララには「心配事があると、そのストレスを食べることで紛らわせる」という悪癖があったのである。


「奥様、それってただの自己擁護ですよね? 心配しなくても元々大食――」

「ゴホン! ゴホンゴホンッ!」

ララは豪快な咳払いでマーサの言葉を力ずくで遮った。

そして、これ以上ないほど可憐で(威圧感たっぷりの)笑みをマーサへ向ける。


「マーサ、 アシュリンさんの身支度を整えてあげてちょうだい。そうだわ、私がペルシャのお土産に買ってきたあの特上のソープがあったでしょう? あれをすぐにお湯に溶かして――」

「まあ奥様! お風呂より先にお食事のほうがよろしいのではありませんか? 空腹ですわよね、アシュリンさん!」


泥まみれの乙女アシュリンを挟んで、突如として繰り広げられる「お風呂(身支度)派」のララと、「メシハラ(補給)派」のマーサによる主従バトル。


二人のあまりの勢いに、リチャードは完全に蚊帳の外へと弾き飛ばされていた。

そもそも、誰よりも早く駆け寄ってアシュリンを出迎えたかったのは彼だったのだ。それなのに、地響きを立てて突撃した母に真っ先に先を越されてしまったのである。


ひっくり返ったティーカップをそっとテーブルに戻し、リチャードは溜息まじりに口を開いた。

「母上、マーサ……まずは彼女がどうしたいのか、本人の希望を聞くのが先決だと思いますが」

至極もっともな正論であった。しかし、バチバチと火花を散らす熟練の女ふたりに、その声は届かない。


「あら、そうね。アシュリンさん、どうします? お風呂ですわよね!? レディたるもの、身だしなみが先決ですもの」

「いえいえ奥様、空腹のままお風呂なんてとんでもありませんわ。途中で貧血を起こして倒れたらどうなさるのですか」


一歩も譲らない、静かな(そして圧の強い)女の戦いがそこにあった。


「あの……お風呂に入りながら食べる、ということで……いかがでしょうか?」


身だしなみを整えたい乙女心と、空腹に耐えかねる筋肉の悲鳴。そのはざまで葛藤したアシュリンは、おずおずと究極の折衷案を提示した。


「まあっ!」

ララはパンと可憐に手を叩いた。

「そうね! それは素晴らしい名案ですわ! マーサ、湯船に浸かりながらでも食べられるようなお料理を用意できるかしら?」

「すぐに料理長へ命じてまいりますわ。あの男の腕なら、それくらい朝飯前でございます!」


「「……正気か???」」

その場にいたリチャードの(そして読者の)心のツッコミを置き去りにしたまま、身支度兼・爆食補給作戦は一瞬で可決された。


「ではアシュリンさん、参りましょう! ペルシャの特上ソープと、料理長特製のバスタブ・ディナーが待っていますわ!」

ララに腕を引かれ、嵐のように浴室へと連行されていくアシュリン。


「あ……あの、(リチャード……!)」

最後に助けを求めるように振り返ったアシュリンと、ただただ呆然と見送るしかないリチャードの目が、ほんの一瞬だけ交差した。


――二人の「感動の再会」は、文字通り泡となって消えたのである。

感動の再会が!!

やっぱりこうなるよね!


思ってた通り(多分皆さんの心の声)

え…違います?

感動の再会を期待してたって方居られたら

コメントとか寄せてください!

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