第58話王家始まって以来の醜聞!エドワード王子はドナドナされる
借金取りの取り立てが来るのも完全に予定外。
そして、ここで払わなければ一体どんな目に遭うのか、見当もつかないエドワード王子は、プライドも何もかも投げ捨てて玉座に座る国王に縋り付いた。
「ち……父上っ! なんとかして下さい!」
「なんとかしてくれと言われても……エドワード、お前はこれまでも散々、国家の予算を使い込んでおる」
「そんなぁ……! 父上は、王位継承者であるこの私を見捨てる気ですか!? それで本当によろしいのですか? 私の他に、王位を継ぐことができる息子なんて、他にいないのですよ!」
確信に満ちた、それでいて傲慢な王子の牽制が謁見の間に響き渡る。
「エドワード! みっともない!!」
だが、王妃の鋭い叱責がピシャリとその言葉を遮った。
「陛下、今日の謁見はこれにて取りやめにいたしましょう。これ以上、皆の面前で恥をさらす必要はありませんわ」
王妃の言葉に、これ以上醜態を晒したくない国王も深く頷いた。こうして、謁見の間での一般市民への定例行事は途中で取りやめになった。集まっていた貴族や市民たちは、表向きは神妙な顔をしていたが、その瞳だけは好奇心に輝かせたまま退室していく。
不名誉極まりない借金の話は――場所を移し、国王陛下の私室へと持ち込まれた。
重々しい扉が閉められ、完全に逃げ場のない密室となった私室。
国王は深くため息をつき、頭を抱えながらソファーの上の三人組に向き直った。
「さて……借金の件だが、金貨1500枚は支払う事はできない」
「そう、じゃあエドワードは私らが連れて行くということでいいんだね」
ドレスの女がニヤリと不敵に笑う。
その言葉を聞いた途端に、エドワード王子は人目も憚らず大声で泣きわめいた。
「父上……っ!? あなたには親の情というものがないのか!」
しかし、国王はもう一度深くため息をついたあと、完全に顔を背けて冷酷に言い放った。
「好きにしろ」
ズシン! とその合図と同時に、背後に控えていたゴリラのような屈強な男たちが、有無を言わさずエドワードをガシッと掴んだ。そして次の瞬間、仕留めた大物の獲物でも誇示するかのように、二人がかりでエドワードを頭上高くへと抱え上げたのだ。
「ひっ!? 放せー! 私をどうする気だ! 放せと言っているだろう!!」
頭上高くで担がれ、ちょうちんブルマからやせ細ったゴボウ脚を突き出しながら、まるで蜘蛛のようにバタバタと虚空を蹴って必死に抵抗するエドワード。
暴れる王子を見上げながら、ドレスの女は腕組みをしてフンと鼻で笑った。
「どうする気も何も、うちの店で働いてもらうだけさ。『デート倶楽部』と、男が施術する『女風』をやってるんだけどね。そのゴボウ脚じゃ『女風』は無理だろうから……まぁ、『デート倶楽部』行きだね」
「で……デート、くらぶ……!? じょ、女風……っ!?」
耳を疑うような単語のオンパレードに、頭上で掲げられたエドワード王子の顔が今度こそ絶望に染まっていく。
そんな王子の絶望など知ったことかと、女は満足そうにパチンと指を鳴らした。
「さぁお前たち。これでおしまいだ。帰るよ!!」
「あらほらサッサ!!」
威勢のいい掛け声と共に、借金取り立て屋の3人組と、頭上で哀れに揺れるエドワード王子は、こうして嵐のように王宮を去っていった。




