第57話エドワード王子はドナドナ危機一髪
エドワード王子が大人のメンズエステからの督促状を無視して数週間後の事、王宮では定例の『謁見の日』が執り行われていた。
それは、国王をはじめとする王家の方々と、事前に謁見を申し入れた一般階級の下々の者が王宮の謁見の間で挨拶や質疑、応答をする公式な行事である。
玉座の横に控えるエドワード王子は、退屈そうに欠伸を噛み殺していた。
一週間寝込んだおかげで体調は戻ったものの、ちょうちんブルマの下にある脚は相変わらず「やせ細った白いゴボウ」のままである。一刻も早くこの退屈な儀式を終えたいと、そればかりを考えていた。
下々の者が次々と挨拶と申し立てを終えていく。そんな中、屈強な男二人を連れた女の番になった。
中央まで進み出たドレスの女は、国王の前であるにもかかわらず、一切頭を下げることなく不敵に笑った。そして、傲然とエドワード王子を見据えて言い放ったのだ。
「そこにいるエドワード王子に用があるんだけど」
あまりにも不躾な女の態度に、謁見の間は一瞬で凍りついた。
「――無礼者ッ!!! ここをどこと心得るか!」
静寂を破って激怒の声を上げたのは、王宮の警備を担当する近衛兵の隊長だった。額に青筋を立て、腰の剣の柄に手をかけながら三人組の前に立ちはだかる。
「国王陛下の御前であるぞ! 許可なく王子殿下の御名を呼び捨てにするなど万死に値する! 衛兵、この狼藉者どもを直ちに引っ立てよ!」
しかし、ドレスの女は槍の刃先を突きつけられても、眉ひとつ動かさない。フン、と鼻で笑うと、近衛兵たちを冷たい目で見据えて言い放った。
「いいのかい? あんたたち、事を荒げる事になるよ」
女は懐から書状を取り出すと、それを隊長に向けて突き出した。
「これを玉座に座る国王陛下に見せてやんな!」
不穏な気配を察した近衛の隊長は、その書状を受け取ると、直ぐ様玉座に座る国王のもとへと渡した。
書状を見た国王の手元が震え、みるみるうちに顔色が悪くなる。そこに書かれていたのは、あの金貨1,000枚という法外な『大人のメンズエステ利用明細・および途中解約手数料』の本契約書、エドワード王子のサイン入りだった。
国王のただならぬ様子に、周囲の宰相や貴族たちも「一体何が書かれているんだ!?」と完全にパニック状態である。
「あなた、どうなされました?」
ただ事ではない夫の様子に、王妃が傍に寄ると、国王はその書状を王妃に渡した。
次の瞬間――。
「エドワード!!!!」
謁見の間に、王妃様の凄まじい雷が落ちた。
不意に実名を、しかも今まで聞いたこともないような怒号で呼ばれたエドワード王子は、情けない悲鳴を上げてその場で跳び上がった。ちょうちんブルマの下で、やせ細った白いゴボウ脚がガクガクと目に見えて震え出した。
だが本当の地獄はこれから先である事をエドワード王子は知らなかった。
「大人のメンズエステの利用料と解約料の金貨1000枚に、延滞料金並びにあたしらの手間賃を付け加えた金貨1500枚払ってもらうよ!」
「馬鹿を言うな!なんだその金額は」
国王が激怒した。
「馬鹿は言ってない!契約書にそこの王子様のサインがある以上、払えないならそうだね…」
女は腕組みをして、ニヤリと笑った。
「身体で払ってもらわなきゃならないね」
ざわつく謁見の間。
身体で払うとは、誰が聞いても文字通り
肉体労働か、はたまた…あれである。
王家の王位継承者がそんな身の上に落とされるのか。
謁見の間に集った人々は、表向きは神妙な顔をしていたが、その瞳だけは好奇心に輝いていた。




