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パーティを追放されけれど、助けた聖女と共に冒険者として生きていくことにした  作者: 巴 雪夜
第七章:鷲獅子は血肉を喰らう

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第36話:彼らの現在が少しばかり気になっただけなんだ


 森の中腹辺りまで来たところで日はすっかりと落ちてしまった。木々の間から空を見遣れば星が瞬き、月がぼんやりと浮かんでいる。天気はよく、明るい夜だ。


 この辺りで野営をしようとフィリベルトの声を合図に馬車は止まった。野営の準備をする依頼主をアロイとブリュンヒルトが手伝う。


 クラウスは周囲を見渡して、魔物の気配がないかを確認していた。


 フィリベルトは地図を見ながら「早朝から走れば夕方には着くだろう」と予測する。ルールエは初めての野営に少しばかりの不安もあるようで、周囲を警戒するように獣耳をひくつかせていた。



「ルールー、どうした」


「シグルドお兄ちゃん、なんでもないよ!」


「怖いならオレが傍に居よう」


「大丈夫だもん!」



 ルールエがそう言った瞬間、ばっと鳥が一斉に飛び立った。いきなりのことにルールエはひぇっと声を上げてリスの尻尾をぶわりと膨らませながらシグルドの腕に抱き着く。



「鳥だ、安心しろ」


「うーー」



 よしよしと頭を撫でるシグルドにルールエが「子供扱いするな!」と頬を膨らませるけれど、彼には効いていないようで止める気配がない。そんな戯れをクラウスは「仲は良さそうだな」と思いながら眺める。


 まだ出会って間もないがあれぐらい会話ができればパーティメンバーとしての仲に問題はないだろう。


 メンバー内の揉め事などもリーダーが気にしなければならないことなので、今のところは問題なさげなことに安堵する。


 ふと、シュンシュたちのほうを見れば、彼らはもう準備ができたようで飲み物を飲んでいるところだった。クラウスは少しばかり気になることがあったので二人に近寄る。



「シュンシュ、少しいいか?」


「なんだい?」


「リングレットたちだが、今はどうしているだろうか?」


「あー彼らね。あいつ調子に乗ってさ」



 リングレットたちは調子に乗っているのか、依頼を受けては威張っているのだとリーシュンは話す。



「リングレットは威張ってばかりで自己中心的さ。可愛い恋人ができたからいいところを見せたいんだろうけど、見ているこっちはちょっと痛いなって思うぜ。調子に乗って迷惑かけてんの気づいてないし」


「……そうか。その、アンジェたちとは仲良くやっているんだな?」


「見た感じじゃね。あんたを最近見かけないからどうしたかと思ってたけど、別のパーティにいたんだな」


「あぁ」



 クラウスは言いづらそうに視線を逸らす。そんな様子に察したようでシュンシュは「あいつは自分勝手なやつだったから外れて正解だと思うぜ」と言った。


 彼の言う通り、リングレットには自分勝手な部分があったので、アンジェと付き合うことにならなくともいずれは追い出されていたかもしれないなとクラウスは思う。



「なんか気になることあったのか?」


「アンジェたちが元気か少し気になっただけなんだ」


「戻りたくなったとか?」


「いや、そうではないんだ」



 戻りたくなったのか、その問いの答えは違うだ。だって――



「今は俺には仲間がいるから」



 ふらりと彷徨っていただけの自分に新しい仲間ができた。彼らがいるのだからもう気にすることはない。


 ふっと小さく微笑むクラウスにシュンシュは目を瞬かせる。それはラプスの町では見たことがない表情だった。


 *


「ヒルデ、何やってんのー?」


「ルールエちゃん静かに!」



 声をかけてきたルールエに慌ててブリュンヒルトが言う。


 しっと指を口に当てる姿にルールエは首を傾げながら彼女の視線の先へと目を向けると、クラウスとシュンシュが話をしてるのが見える。



「何、話してるんだろうクラウスお兄ちゃん」


「シュンシュさんはクラウスさんのこと知ってるので、ラプスの話かなぁって思うんですけど」


「この位置から聴こえないとはいえ、盗み聞きはよくないとオレは思うが?」


「し、シグルドさん、それはその……」



 盗み聞きを指摘されてブリュンヒルトは「それはそうなんですけど……」ともじもじとする。



「クラウスさん、シュンシュさんと会った時、少し変でしたから……」



 何かあったのかと心配になったのだとブリュンヒルトは言う。シグルドは彼女の言葉にクラウスのほうへと視線を向ける。


 シュンシュと話しているが特に変わった様子は感じない。



「オレはまだ入ったばかりで分からないが……。心配ならばその気持ちは伝えるべきではないか?」


「そう、ですよね……」



 心配しているということを伝えるも相手のことを知るためには必要なことだ。それで答えてくれないのならば、まだ話したくはないということ。深く聞くことを避ければいいとシグルドは言う。



「あとで伝えてみよう」



 ブリュンヒルトはそう呟きながらクラウスの背を眺めた。


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