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パーティを追放されけれど、助けた聖女と共に冒険者として生きていくことにした  作者: 巴 雪夜
第七章:鷲獅子は血肉を喰らう

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第35話:ラプスの町での知り合いと出逢う

「ファントルムへは王道を通っていく」



 早朝、牧場に集まったクラウスはメンバーに説明をする。


 牧場から馬を買い取った依頼主の男と相談した結果、近道などを選ばずに通常の商業ルートを通ることになった。こういったルートのことを王道と呼ぶためクラウスはそう言った。


 護送する馬の数は二頭で騎乗できるものが乗ることになっており、商業用の馬車が一つ用意されている。



「フィリベルトが乗るのは決まっているが……」


「あと一人どうする? オレ乗れなくはねーけどクラウスの兄さんは乗れるのか?」


「乗れはする」



 クラウスは乗馬経験がないわけではないので乗ることはできた。フィリベルトは「クラウスはいつでも動けるようにしておいたほうがいい」と言った。



「偵察にも行ってもらうことを考えると馬車組みのほうがいいと私は思う」


「あー、ならオレかシグルドの兄さんか」



 アロイに名を呼ばれてシグルドは顔を向ける。ルールエの隣を常に取っている姿勢に突っ込むことはしない、話が進まないので。


 クラウスが「乗れるか?」と問うと、「別に構わないが」と返ってきた。



「騎乗はオレの里では必須だからな」


「スノーウェル族は確か、北部の雪原に住んでいるんだったか」


「あぁ。あそこでは馬での移動は必須だ」


「なら、頼めるか?」


「リーダーのお前の指示ならばやろう」



 シグルドの返事にクラウスは彼にもう一頭の馬を任せることにした。アロイにはいつでも援護をできるように馬車で待機してもらう。



「アロイお兄ちゃんとあたしはいつでも動けるように待機だってー」


「はいよー、さっさと馬車乗るぞー。ヒルデの嬢ちゃんも行くぜ」


「あ、はい!」



 アロイが二人を連れて馬車へと乗り込むのを確認してクラウスは依頼主に声をかけた。すでに準備はできているようで「お兄さんよろしく頼むよ」と微笑まれる。


 手綱を引く彼の隣にクラウスが座れば、馬車はゆっくりと進んでいった。


   ***


 ファントルムまでの道のりはそれほど険しいものではない。森一つを通り抜けることになるが比較的、優しいほうで雪原のある地域は入り組んでおり険しい。


 その点、ほとんど一本道であるファントルムは長距離の護衛に慣れるためには丁度いいものだ。


 見晴らしの良い草原を馬車がゆっくりと走っていく。時折、周囲を警戒しながらクラウスたちは前を進む。一日目の夜は途中で通る小さな村で過ごし、何の問題もなかった。


 二日目、昼を過ぎた辺りで森の近くまでやってきた。危険が増す場所はこの森で、魔物も動物も生息しているため襲われないとも限らない。


 脇道や獣道を通るわけではないので逸れて森の奥にさえ入らなければそれほど危険はないだろうが、近くの山から魔物が下りてくることはあるので何が起こるかは分からない場所だ。


 森に入る前にクラウスが偵察にいくことになっている。森が見えてきたのでクラウスがそろそろかと思っていると、その傍で別の馬車が止まっていた。


 なんだろかと様子を窺ってみれば、冒険者らしい二人の男女と馬車の主である男が何か話している。


 ふと、短い栗毛の少年がこちらに気づいたようで「すみません!」と声をかけてきた。馬車を止めてクラウスが「どうかしただろうか」と声をかけて、目を瞬かせる。



「あれ、あんたリングレットのところの人じゃない?」



 クラウスには見覚えがあった、彼らはラプスの町のギルドで何度か話したことがあったのだ。クラウスは何とも言い難いといった表情をみせる。



「何、どうしたのさ」



 ひょこっとアロイが現れて問う。馬車からブリュンヒルトたちもどうしたのかと顔を出した。


 それにあれと少年の冒険者は首を傾げたので、「今はリングレットとは関わっていない」とクラウスが答えた。



「今は彼らとは関わっていないんだ」


「別れたってことか。あんたもリングレットに振り回されてたし、別れるのも仕方ないよな」


「……その話はいいとして、どうしたんだ」


「あ、そうだった!」



 少年は「困ってるんだよ」と前に止まる馬車を指さした。どうやら、前の馬車はこの森を抜けたいらしいのだが、急ぎの用で護衛が間に合わなかったのだという。


 少年たちは依頼帰りだったのだが、そこで出逢ったらしく護衛をしてくれと頼まれた。送っていくのは問題ないが、二人でこの森を抜けるのは不安だということだった。



「おれら二人で森を抜けるならなんとかなるけど、護衛となると違ってくるからさ。この人は森を抜けた先にある村に用があるらしいんだよ。森を抜ける時だけでいいから同行できないか? おれたちも一緒に行くから」



 話を聞いたクラウスは傍で待機していたフィリベルトにどうするかと問うと、「このまま置いていくわけにもいないだろう」と彼は答えた。



「このまま彼らも森を抜けるならば道は同じだ。途中まで共にする分にはいいと私は思うが、守る対象が増えるので注意が必要になる」


「前の馬車は任せていいだろうか?」


「それはおれたちがやるから大丈夫だ。何かあればそちらと連携する」



 少年の返しにフィリベルトは「なら問題はないだろう」とクラウスに言う。それならばと少年の頼みを引き受けることにした。


 少年の冒険者はシュンシュ、少女の冒険者はランと名乗った。拠点はラプスで二人は兄妹で冒険者をやっているのだと自己紹介をする。ランと紹介されたお団子髪の少女は小さくお辞儀をした。



「さっそく行こう」


「あぁ。だがその前に森へ入る時に少し偵察をしてくる。待っていてくれ」


 クラウスは馬車から降りて森へと入った。


  *


 すっと音もなく駆けていく姿に「相変わらず静かな男だなぁ」とシュンシュは呟く。



「あの、シュンシュさんはクラウスさんを知っているんですよね?」


「知ってるっていっても少しだけだよ。ラプスの町のギルドで数回会っただけさ」



 ブリュンヒルトの問いにシュンシュは答える。



「口数は少ないし、表情あんまり変えない静かな男って印象だったからちょっと驚いてる」


「え?」


「いや、自分から声をかけてるし行動してるから」



 シュンシュは「前のパーティの時は指示待ちだったしな」と言った。彼の印象にブリュンヒルトは今と少し変わっているのではないかと感じた。


 クラウスは自分でちゃんと行動しているし、対話も出来ている。前のパーティではどういった立ち位置だったのだろうか、そんな疑問がブリュンヒルトの中で浮かんだ。


 彼に聞けば分かるかもしれないが、クラウスのいないところであれこれと聞くのは相手に失礼な気がして、ブリュンヒルトは止める。


 それから少ししてクラウスが戻ってきた。途中まで見てきたが何かいる気配はないことを伝えるとブリュンヒルトは馬車に戻った。


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