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急がば回れ

涼風達の姿が見えなくなると、バールリッツがユウに声を掛けて来た。

『待ち合わせにこんな場所を選ぶなど、どういう事かと思ったが、お前にはああいう仲間もいたのだな。なかなかいい毛並みの馬達じゃないか。しかも人に飼いならされている訳でもなさそうだ。にもかかわらず、お前達には随分と協力的なようだな。好かれている事が良くわかる』


『あら、それは私達と一緒じゃないですか? 助けてもらった事もそうですけど、この子達からは悪意のようなモノが全く感じられないのですもの。だから、協力したくなるのです。きっとあの子達も同じように思っているのではないでしょうか』

ラビアローナは、バールリッツの横に並びかけ、首を曲げて、バールリッツの背中にいるユウとフィノを優しい目で見下ろしている。


それを見たバールリッツが背中を大きく震わせた。

バールリッツの背中は涼風よりも遥かに高い位置にある。

少し揺れただけでも結構怖く感じるというのに、大きく揺らされてしまっては、落ちないようにする為に必死にならなければならない。

しかも、ユウが落ちるという事になれば、ユウにしっかり掴まっているフィノも、ユウと一緒に落ちる事になるかもしれない。

ユウは、そんな事にならない様、必死にバールリッツの背中にしがみついた。


「バールリッツ、急にそんな動きをしないでくれよ。 危ないじゃないか」

『このくらいの事で落ちるのなら、俺の背中には乗れないぞ。これから結構な距離を行くつもりなんだろう?』

バールリッツの言葉にはこの状況を面白がっているような響きがある。

が、言っている事は間違っていないと思うので、あまり文句を言う訳にもいかない。


「それはそうだけど、少しくらい気を使ってくれてもいいだろ」

そう言うくらいが精一杯だ。


ラビアローナが援護射撃をしてくれる。

『大丈夫ですよ、ユウさん。走り出したらそんな悪戯はしませんから。そうよね、バールリッツ』

「悪戯?」

『そう、バールリッツは普段、そんな走り方なんてしないもの』


バールリッツは白々しくそっぽを向いて、ラビアローナの言葉など聞かないふりをしている。

まあ、以前、バールリッツの背中に乗った時も、そんなに乗り心地が悪かった記憶はないので、きっとそういう事なのだろう。

ユウは本題に入る事にした。


「ところで…、バールリッツの言う通り、ふたりにはこれからちょっと遠くまで送ってもらう事になっちゃうと思うんだけど…、大丈夫かな?」

『何を今さら。昨日の夜、話した通りだ。任せておけ、北へ行けばいいのだろう? …しかし、まさか、お前達が目指していたのがカノンの地だったとはな…。言っておくが、いくら俺達でも、さすがに入口までが限界だぞ。それ以上北へは行けないからな』

「入口まで送ってくれれば充分だよ。そこから先は歩いて行くさ」


実は、昨日の夜、ユウは涼風だけではなく、バールリッツとも連絡を取り約束を取り付けていた。

バールリッツがたまたまリスティの街のすぐ近くにまで出張って来ていたおかげで、運よく話が出来たので、ほとんど偶然の様なものなのだが、そのおかげで見通しが立ったともいえる。

バールリッツがカノンの地のある神域の入口まで連れて行ってくれる事になったからだ。


ユウとバールリッツで話をするうち、ゴフジールの小屋の話が出て、そういう話に繋がったのだ。

ただ、目立つのであまり街の近くにまでは来たくないという要望があり、それで、待ち合わせの場所を決め、そこまでは別途涼風達に送ってもらう事にした。


行くに当たって、バールリッツは当然の様にラビアローナを連れていくと言い、ユウもそれに同意した。

バールリッツなら四人で乗っても大丈夫なのかもしれないが、二人ずつ分かれて乗った方が負担は減るはずだし、バールリッツも安心できるだろうから、良いだろうと思ったのだ。


『なら、そろそろ出発するか』

少しして、バールリッツは一声かけて動き出した。

すぐにバールリッツの後ろにラビアローナが続く。


ゆっくりと歩き始めたバールリッツだったが、そのうちに徐々に速度を上げ始めた。

周りの景色が物凄い速度で流れ始める。

涼風の時には感じる事の無かったスピードだ。

もちろん、ラビアローナも難なく後ろに続いている。


だが、バールリッツは目的地のある北ではなく、東に向かって走っている様だった。

その事に気付いたユウがその理由を聞こうとすると、それを察したバールリッツが言ってくる。

『ユウ、悪いのだが、この先の森は俺達が通るには木が密集し過ぎているんだ。だから、少し遠回りして迂回していく。結果、そっちの方が早く着く事になると思うし、構わないだろう?』


「ルートについてはバールリッツに任すよ。俺達はこの辺の地理に明るい訳ではないからね」

『そう言ってもらえると助かる。何か判断が必要な場合は言うから、その時は指示してくれ』

「わかった」


バールリッツはカノンの事も知っていた訳だし、ユウ達よりも地理に明るい事は間違いない。

ユウは目的地までのルートについてはバールリッツに全て任せることにして、自分は走るバールリッツの邪魔にならない様、なるべく身を低くするようにして、しっかりとバールリッツの背中にしがみついた。

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