↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/200

転移

「剣」と「盾」の文字が光り、「珠」の文字が光っていないのは、ユウ達が「珠」を持っていない為である事は容易に察する事ができた。


だからと言って、どうする事が出来ない事もまた間違いない。

というよりも、むしろ、「剣」と「盾」がこの場にある事の方が驚きなのだ。

この二つが今ここにある事を生かさなければならない。

「珠」についてはもしかしたらこの先で手に入るのかもしれないし、この場ではそう考えるより仕方がないように思えてくる。

多少不安に思わない事もないが、ここまで来たら行くより他仕方がない。


ユウは改めて小屋の中を見回してみた。

しかし、この先に進む為の扉などはこの小屋の中には見当たらない。

いや、それどころか、たった今入って来たばかりの入口の扉さえ今はもうなくなっている。

ユウ達は完全に小屋の中に閉じ込められた状況になってしまったという事だ。


ユウが辺りを見回しているのを見て、アーダも周囲を見回して言う。

「ったく、なんだか胡散臭い場所だよな、ここは」


そして出口を探して小屋の中を歩き回り始めた。

ルティナもそれに同調する。

「もしかしたら石碑の裏側に階段か何かがあるのかもしれませんよ」


確かに石碑の後ろにはそれなりに十分なスペースがある。

というよりも、現状確認できていない場所はもうそこくらいしか見当たらない。

アーダは既に石碑を回り込むべく動いている。

その少し後ろをルティナも続いて歩いていく。


ユウも二人の後に続いて行こうとした。

が、その動きに追従するのが遅れたフィノに、繋いでいた手を引っ張られ、その所為で、わずかにその動きが遮られる事となった。

そうこうしている間に、アーダが石碑を回り込んでいく。

そして、アーダが石碑の後ろ側の領域へと大きく一歩踏み込んだ、その時だった。


突然、小屋の中が暗転した。

光が何かに吸収されているかのように、真っ暗で何も見えなくなる。

ユウは咄嗟に叫んでいた。

「皆、近くにいる人と手を繋いで!」


こういう場合、何にしてもとにかく誰かと繋がっている事が重要だ。

繋がっていれば、不安もだいぶ軽減できる。


ユウは叫ぶと同時にルティナのいた方向に向かって手を伸ばした。

反対側の手はもう既にフィノと手を繋いでいる。

なので、意識をルティナの方へと集中させる事にする。


「ユウ様」

すぐ近くから、ルティナが漏らした小さな声が聞こえてきた。

こちらに向かって手を伸ばしているような気配も感じられる。

ユウがその気配のある辺りに手を伸ばすと、一瞬、指先に何かが触れる感覚があった。

ルティナの指に間違いない。


あと二、三回その辺りで手を振れば、ルティナの手を掴む事が出来そうだ。

そう思い、少しだけ安心した所に、ルティナの悲鳴が聞こえてくる。

「きゃーーーー」


直後、その悲鳴の理由を聞く間もなく、物凄い圧力がユウに襲いかかり、ユウはその圧力に耐えるだけで精一杯の状態になってしまった。

こうなるともう、ルティナの様子を窺う余裕などない。

いや、それどころか、フィノの手を離さないようにする事さえ辛い状況だ。


ユウはその強い圧力に耐えながら、フィノの手が小さく震えている事に気が付いた。

そしてすぐに思い出した。

フィノは暗闇に弱かったのだという事を…。

ルティナやアーダが仲間に加わった事で、常に誰かが一緒にいた為、最近はそういう状態になる事が無かったので忘れていたが、暗闇でフィノを一人きりにさせてはいけなかったのだ。

早い所抱きしめて落ち着かせてあげなければならない。


ユウはフィノの身体を引き寄せるべく、フィノと繋いでいた方の手に力を込めた。

が、それを見計らっていたかのように、更にもう一段強い圧力がユウの身体に襲いかかって来る。

この圧力は、恐らくはフィノや他の二人にもがかかっているものと思われる。


ルティナやアーダの事も心配だが、ここはまずフィノの身を確保することが先決だ。

フィノとはすでに手を繋いでいる訳なので、後は引き寄せるだけでいいのだが、普通なら簡単にできるはずの、たったそれだけの事がなかなか出来ない。

それどころか、強い圧力の所為でフィノと繋いでいる手が徐々にほどけていく。

フィノは震えている所為で、ユウの手を強く握れなくなっているようなのだ。


こんな事ならもっと強くフィノの手を握りしめておけば良かった。

良く考えると、少し前からフィノはどこかおかしかったのだ。

もっと早くフィノを安心させるような行動を取って置くべきだったと後悔する。

が、あきらめるにはまだ早い。

辛うじてつながっているこの手を離さないようにしなければならない。


しかしその思いとは裏腹に、ユウの腕は次第に落ちてくる。

腕が圧力に耐えられなくなってきているのだ。

腕が下がると、当然手をつないでいるのがきつくなってくる。


震えるフィノの小さな手が、何とか堪えようとするユウの指の間をするりと抜け落ちていく。

そしてとうとうユウの指先からフィノの柔らかな指の感触が綺麗に消えて無くなった…次の瞬間、それまで全身を強く押さえつけていた強烈な圧力も綺麗に消えて、ユウは圧力から解放された。

と同時に、まばゆい光の渦に飲み込まれる。


気が付くとユウは見知らぬ森の中に1人きりで立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。