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合成

ユウはルティナからガラス玉を受け取ると、そのガラス玉を切り株の上で動かしてみた。


が、蔓はガラス玉に反発する様に、見事にガラス玉の位置を避けて行く。

手ごたえも全く感じられない。

これではとてもメリンの蔓の時の様にはいきそうもない。


と、その様子を見ていたフィノがルティナとは反対側の隣に来て言った。

「ユウ、私のヤツを使ってみて」

フィノが渡して来たのは薄っすらと赤みを帯びたガラス玉。

ルティナのガラス玉と同様、カラスから貰ったものだ。


ユウがそのガラス玉をルティナのガラス玉を持っている手とは反対側の手で受け取り、それを何気なく目の前まで持ってくると、その途端、蔓の動きが変化した。

ガラス玉越しに見える赤い蔓がユウの持つガラス玉に向かって大きく湾曲し始めたのだ。


そして、先程の青い蔓同様そのままそのガラス玉へと接触すると、接触した部分より先の蔓が、今度は小さな赤い光をまき散らしながら周りの空間に紛れるようにして消えて行った。

『足が軽くなったわ、ユウ。あたしの拘束も解けたみたい』

エルスが念の声を飛ばしてくる。

頭を付けずに言って来たのは、それだけ嬉しかったという事だろう。

だから、すぐに言葉が出てしまったのだ。


エルスは先程メリンがやったのと同じ様に、切り株から少し離れて足の拘束が解けた事を確認してから、ユウの側へと降りて来た。

その後ろからベーデがゆっくり近づいて来る。

ベーデはまだ拘束されたままだ。

ベーデが期待しているのが伝わってくる。


「ガラス玉って、もう無いんだっけ?」

ユウが聞くと、フィノがすぐに答えてくれる。

「あの時にもらったガラス玉はユウが今持っているその二つだけよ。私とルティで一つづつ持つ事にしたのだから」

反対側ではルティナもそれに頷いている。

だとすると、ベーデの拘束を解く方法はもう見当たらない。


ユウはベーデに念の声で呼びかけた。

別に隠すほどの事でもないので、いちいち頭はくっ付けない。

『ベーデ、この切り株の上に来てくれないか』


ベーデは一瞬首をひねるような仕草を見せた後、しかしすぐにその指示に従い空中を滑るように降りてきて、ベーデの足を拘束している蔓が今なお只一つ残っているはず(はっきりとは見えないのだ)の切り株の上にすっと立った。

『これでいいのですか?』


『いいよ。…で、悪いんだけど、ベーデはそこから動かない様頑張ってみてくれないかな?』

『頑張る?』

『そう、これからこの二つのガラス玉を強引にベーデの蔓に近づけてみようと思うんだ。さっきの感じだと、蔓は蔓の生えている切り株の方に近づけても、うまく逃げられてしまうみたいだし、だったらベーデの足に直接ガラス玉をくっつけてみたらどうかと思ってね。もしかしたら磁石みたいに蔓とガラス玉が反発するかもしれないんだけど、蔓が動かない様頑張って耐えてみて欲しいんだ』


ルティナのガラス玉はメリンの蔓以外の蔓を追いかけても、磁石のように反発してガラス玉を蔓に付ける事が出来なかった。

それは恐らくフィノのガラス玉でも同じだろう。

ならば、双方を一度に近づけてみるくらいしかもうやれることはない。

もしかしたらどちらか一つがベーデの蔓を捕らえれば、ベーデを解放できる可能性はある。

その為には、ベーデが立っている以上必ずそこに有ることが確実な先端部分の方が狙いやすい。

だからベーデにそこに立ってもらう事にしのだ。

ベーデもユウの意図が理解できたようで、やや緊張した面持ちで両足を踏ん張ってくれている。


ユウは右手にフィノの、左手にルティナのガラス玉を持ち、ベーデの身体を挟むようにして両側からその手を近づけてみた。

しかし、その目論見は残念ながら上手くいかなかった。


蔓はガラス玉が近づくと、ベーデの身体ごと大きく跳ねて、ユウの腕の間を簡単にすり抜けてしまうのだ。

ベーデも懸命に踏ん張っているのだが、蔓の力には敵わない様だった。


良く考えれば当たり前だ。

蔓はフィノの剣技さえ切り抜けた強者なのだ。

正直言って、力づくで何とかできるモノとは思えない。


だが、ユウはしばらくこの方法にこだわった。

ガラス玉は、少なくとも今ここにはこの二つしか存在しなかったからだ。


しかし、ベーデの蔓は手ごわかった。

ユウの動きをあざ笑うかのように、蔓はベーデの身体を伴ってユウの手と手の間をすり抜けて行く。

それでもしばらく諦めずに両手を激しく動かしていたユウだったが、やがて疲れて力を抜いた。


この方法ではダメだと思わざるを得なかったのだ。

ユウ自身が疲れる事もそうなのだが、それ以上に強制的に激しく動かされるベーデの身体が持ちそうもない。

やむを得ず諦める事にして、ユウは両手を合わせ、その手を前に投げ出す様にして大きく伸びをした。


その時だった。

ベーデを捕らえていた蔓が突然大きくうねり始めた。

何が起こったのかわからず、ユウがゆっくり姿勢を戻していくと、蔓のうねりはユウの合わさった両の掌の元へと向かって近づいているのがわかる。


ユウがその掌をそっと開けていくと、そこには二つのガラス玉が縦に並んで置かれていた。

その二つのガラス玉を通して、ベーデの蔓がはっきり見てとれる。


その色ははっきりとした紫色だ。

二つのガラス玉越しに紫色の光が見えている。


呆然と見守るユウの目の前で、蔓は縦列に並んだガラス玉の中へと吸い込まれていく。

そして、先の二つの蔓と同様、ガラス球から先の部分が紫色のきらめきを残して消えていった。


こうしてベーデも無事に拘束から解放されたのだった。

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