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君と、終わりの向こう側へ  作者: 亀


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第155章 もう一度、本を見る

翌朝。


月白は昨日と同じ本屋へ向かった。


昨日見つけた灯台の写真。


今日は、それをもう一度見たかった。


店に入る。


昨日と同じ棚へ向かう。


旅行の本を手に取る。


ページをめくる。


海。


古い町。


小さな港。


そして。


昨日の灯台。


月白は写真をじっと見つめた。


「まだ行きたいと思いますか?」


声がした。


振り返る。


林夏だった。


「どうしてここに?」


「昨日、明日も来るって言ってたから」


「それだけですか?」


「うん」


月白は少し笑った。


「では、一緒に見ますか?」


「いいよ」


二人で本を見る。


灯台は海のすぐ近くに建っていた。


周囲には小さな町がある。


駅から歩いて三十分ほど。


月白が説明を読む。


「駅から少し遠いですね」


「歩けばいい」


「雨だったら?」


「その時は帰る」


「簡単ですね」


「簡単だろ」


月白は笑った。


「行ってみたいです」


「じゃあ、行こう」


「今ですか?」


「今日は仕事」


「そうですよね」


二人で本を閉じる。


月白は棚に戻しかけて、少し迷った。


「買います」


「決めた?」


「はい」


本をレジへ持っていく。


店を出る。


月白は買った本を胸に抱えていた。


「嬉しそう」


「はい」


「昨日買わなかったのに」


「昨日は、もう一度見てから決めたかったので」


「今日は?」


「今日も見て、それでも欲しかったので」


林夏は頷いた。


「それなら、いい買い物だな」


店へ戻る途中。


月白は本を開く。


「土曜日なら行けます」


「今週?」


「はい」


林夏は少し考える。


「仕事が入らなければ」


「無理なら別の日でいいです」


「うん」


「約束にしなくても」


「予定だけ決める?」


「はい」


月白はスマートフォンを取り出した。


【土曜日】


【灯台】


と入力する。


少し迷ってから。


【予定】


とだけ書いた。


保存する。


「これでいいです」


店に戻る。


午前中。


月白は買った本を読んでいた。


林夏は修理をしている。


時々、月白が地図を見る。


「林夏」


「ん?」


「ここ、海があります」


「灯台だからな」


「そうですけど」


「海を見るのが目的?」


月白は少し考える。


「灯台を見たいです」


「うん」


「それから、海も」


「じゃあ、海も見よう」


月白は笑った。


昼。


二人で昼食を取る。


今日は焼きそばだった。


「また焼きそばですね」


「市場を思い出した」


「朝市の時ですね」


「うん」


「楽しかったです」


「俺も」


月白は少し考えた。


「今度は、林夏が行きたい場所も行きましょう」


「いいよ」


「どこですか?」


「まだ考えてない」


「では、考えておいてください」


「分かった」


午後。


一人の客が来た。


古いカメラだった。


「これ、使えるようになりますか?」


林夏が確認する。


「直せると思います」


客は安心したように笑う。


「最近、写真を撮っていなくて」


「直ったら撮ればいい」


「何を?」


「何でもいいんじゃない?」


客は少し考えてから頷いた。


「そうですね」


カメラを預けて帰っていった。


月白はその背中を見送る。


「直った後に何を撮るかは、その人が決めるんですね」


「うん」


「灯台も同じかもしれません」


「何が?」


「見に行った後、何を感じるかは、行ってみないと分からない」


「それはそうだな」


夕方。


月白は買った本を鞄に入れる。


「今日は、買いました」


「うん」


「昨日は買わなかった」


「うん」


「どちらも自分で決めました」


林夏は笑った。


「じゃあ、今日はそれで十分」


店を出る。


駅へ向かう。


途中で月白が言った。


「林夏」


「ん?」


「土曜日、雨だったらどうします?」


「どうする?」


「行かない?」


「雨でも行きたいなら行く」


「林夏は?」


「月白が行きたいなら行く」


月白は少し考える。


「では、天気を見てから決めましょう」


「うん」


「予定はありますけど、固定ではない」


「そのほうが月白らしい」


「林夏らしい、ではないんですか?」


「俺は最初から固定してない」


「それもそうですね」


駅に着く。


電車を待つ。


月白は鞄の中の本を確認する。


「土曜日」


「うん」


「楽しみです」


林夏は笑った。


「俺も」


夜。


月白はノートを開く。


――昨日、もう一度見たいと思った。


――今日は、もう一度見た。


――そして、本を買った。


少し考える。


――すぐに決めなくてもいい。


――でも、決めたくなった時には、自分で決めればいい。


そして。


――土曜日、灯台へ行く。


最後に。


――天気が悪かったら、また考える。


端末が光る。


【次回予定:灯台】


【予定設定:本人による選択】


【変更:可能】


【関係:継続】


【固定:なし】


【未来:未確定】


月白は端末を閉じた。


机の上に買った本を置く。


その隣には青いガラス瓶。


真鍮の鍵は、今日も万事修理店にある。


まだ使われていない。


まだ意味も分からない。


けれど。


灯台へ行く予定はできた。


今は、それだけでよかった。

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