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君と、終わりの向こう側へ  作者: 亀


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第141章 もう一度、同じ場所へ

翌週の土曜日。


朝から天気がよかった。


月白は駅の改札前に立っていた。


先週とは違う。


今日は、電車も止まっていない。


予定通りなら、古い商店街へ行く。


月白はスマートフォンを確認した。


【古い商店街】


その文字を見ると、少し笑った。


「おはよう」


振り返る。


林夏が立っていた。


「おはようございます」


「今日は遅れてない」


「先週は遅れましたね」


「今日は大丈夫」


「よかったです」


二人は改札を通った。


電車に乗る。


しばらくして、目的の駅に着いた。


駅を出る。


古い建物が並んでいる。


小さな八百屋。


昔ながらの食堂。


古本屋。


和菓子店。


月白はゆっくり歩いた。


「思ったより古いですね」


「いい感じじゃない?」


「はい」


商店街を歩いていると、突然、林夏が足を止めた。


「ここ」


「何ですか?」


「昨日、料理の本で見た店」


小さな食堂だった。


店先に手書きのメニューがある。


「入りますか?」


「いいの?」


「はい」


二人で店に入った。


昼には少し早かったので、客は少なかった。


月白はメニューを見る。


「何にします?」


「今日は俺が決めてもいい?」


「はい」


林夏は少し悩んでから言った。


「焼きそば」


「焼きそばですか」


「ここの名物らしい」


「では、それにします」


二人とも同じものを注文した。


料理が来る。


月白が一口食べる。


「美味しいです」


「だろ?」


「どうしてそんなに得意そうなんですか?」


「俺が作ったわけじゃないけど」


月白は笑った。


食事を終えて、店を出る。


商店街をさらに歩く。


途中で小さな雑貨店を見つけた。


月白が足を止めた。


「先週の瓶」


「似たやつ?」


「はい」


店の中に、青いガラス瓶が並んでいた。


月白はその中から一つを手に取った。


しばらく眺める。


「買う?」


「……今日は買います」


「先週は買わなかったのに」


「先週は、まだ決めていませんでした」


「今日は?」


「欲しいと思ったので」


月白は瓶を買った。


店を出る。


「いい買い物だった?」


「はい」


「よかった」


しばらく歩いた後。


月白が言った。


「先週、ここに来られなかったこと」


「うん」


「最初は少し残念でした」


「俺も」


「でも、知らない駅に行ってみて」


「うん」


「それも楽しかったです」


月白は青い瓶を両手で持ちながら歩く。


「だから、今日ここに来たことは、先週の続きをやり直したわけではないと思います」


林夏は少し考えた。


「じゃあ?」


「今日、改めてここに来ることを選んだんです」


「なるほど」


林夏は笑った。


「それなら、先週の予定も無駄じゃなかったな」


「はい」


午後。


二人は商店街の端まで歩いた。


そこには小さな神社があった。


鳥居をくぐる。


境内には誰もいない。


月白はベンチに座った。


「少し休みませんか?」


「いいよ」


二人で並んで座る。


風が吹く。


木の葉が揺れる。


月白は買った瓶を見る。


「これ、何を入れようかな」


「飴」


「子供みたいですね」


「じゃあ、梅干し」


「もっと変です」


二人は笑った。


しばらくして、月白が言った。


「林夏」


「ん?」


「私、少し変わったと思います」


「そう?」


「前なら、予定が変わると不安でした」


「今は?」


「少し残念です」


「うん」


「でも、それだけです」


林夏は黙って聞いている。


「別の道を選べると思えるようになりました」


「それはいいことだな」


「はい」


月白は少し考えた。


「でも」


「でも?」


「全部、自分で決めたいわけではありません」


林夏は笑った。


「前にも聞いたな、それ」


「はい」


「誰かと一緒に決めるのも、自分の選択だから?」


月白は頷いた。


「そうです」


林夏は空を見る。


「それなら、俺も同じだな」


「どういう意味ですか?」


「一人で決めるより、月白と相談して決めたいこともある」


月白は少し黙った。


それから。


「……嬉しいです」


そう言った。


帰り道。


駅へ向かって歩く。


月白は買った瓶を大事そうに抱えている。


林夏が言った。


「それ、落とすなよ」


「分かっています」


「結構気に入ってる?」


「はい」


「じゃあ、名前つける?」


「瓶に?」


「そう」


「必要ですか?」


「分からない」


月白は少し考える。


「では」


「うん」


「今日の瓶」


「普通だな」


「でも、今日選んだので」


林夏は笑った。


「それでいい」


駅に着く。


電車を待つ。


月白はスマートフォンを取り出した。


予定表を開く。


先週の予定には、何も書き足していなかった。


今日の日付を見る。


少し迷ってから。


【林夏と古い商店街へ行った】


と入力する。


そして。


【予定変更後、再設定】


と続けた。


保存する。


端末が光った。


【予定:再設定】


【本人による選択:確認】


【変更後の継続:確認】


月白は画面を見ていた。


そして、小さく笑った。


「どうした?」


林夏が聞く。


「何でもありません」


「そう?」


「はい」


電車が来る。


二人は乗り込んだ。


帰りの電車では、月白は窓の外を見ていた。


林夏は隣で静かに座っている。


今日は予定通りだった。


先週は予定通りではなかった。


どちらも悪くなかった。


月白は思った。


未来は一つの道ではない。


道が変わるたびに。


また選べばいい。


その夜。


月白はノートを開いた。


――古い商店街。


――先週は行けなかった。


――今日は行った。


――青い瓶を買った。


最後に。


――また行きたい。


ペンを置く。


少しして、もう一行書いた。


――次は、林夏が行きたい場所も聞いてみたい。


ノートを閉じる。


端末が静かに光る。


【関係:継続】


【本人による再選択:確認】


【予定変更:受容】


【次回提案者:未定】


【未来:未確定】

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