↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「その予定表、燃やしといて」と勇者に追放された軍師ですが、俺の“予定表”は味方を限界突破させる神バフだった~才能は要りません。予定表どおり動けば世界最強です~  作者: 凪白 黎
第7章:究極の『算数』vs 極大魔法

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
34/38

第34話:自滅のピタゴラスイッチ

ピキィィィィッ――!


たった100グラムの石ころが岩盤に激突した瞬間、乾いた亀裂音が戦場を走った。

エリナが蹴り飛ばしたその石の衝撃は、計算し尽くされた完璧な『楔』となって、魔法陣の急所へと打ち込まれたのだ。


「ゴガガガガガァァァァッ!!」


耳を劈くような重低音の地鳴りとともに、魔法陣の土台となっていた強固な岩盤が、ドミノ倒しのように次々とひび割れていく。

最初は一本だった亀裂が、二本、四本と枝分かれし、瞬く間に大地を侵食していく。


「な、なんだ……?」


泥の中に這いつくばるエリート騎士団長レオナルドは、その光景から目を離すことができなかった。

石ころ一つの衝撃が、これほどの規模の崩落を引き起こすなど、常識では到底説明がつかない。


だが、崩壊を極限まで加速させているのは他でもない、ザッカス自身の魔法だった。

極大魔法『焦熱の終末』が放つ莫大な熱量が、岩盤を内側から炙って脆くし、頭上で渦巻く膨大な魔力の圧力が自らの足元を容赦なく押し潰していく。

巨大な魔法のエネルギーそのものが、皮肉にも己の足場を崩壊させる『巨大な重り(自重)』へと変貌していたのだ。


「ば、馬鹿な……っ」


絶対の理であるはずの魔法の常識が、たかが石ころ一つを起点とした物理法則(算数)の前に、脆くも瓦解していく。

信じがたい光景を前に、レオナルドの口は半開きのまま固まっていた。


「これが……算数だと、言うのか……?」


震える声で呟いた瞬間。

魔法陣を支えていた地面が、限界を告げる轟音とともに大きく沈み込んだ。


◆ ◆ ◆


「ズドォォォォォンッ!!」


激しい地鳴りとともに、地面が消えた。

ザッカスの足元に広がっていた岩盤が一気にすり鉢状に陥没し、巨大な大穴へと姿を変えていく。魔法陣の線は引き裂かれ、光を放っていた紋様が次々と砕け散った。


「な、なにィィィッ!?」


詠唱の姿勢を保っていたザッカスの体が宙に浮く。

支える地面を失った両足は無様に空を踏み、直後、その巨躯は崩れ落ちる岩盤ごと泥の中へ叩き落とされた。


「ぐ、があぁぁぁッ!?」


その瞬間だった。

己の寿命を削って上空に凝縮させていた『焦熱の終末』の巨大な炎が、大きく揺らいだ。


「ゴォォォォォォッ――!」


術者からの魔力供給と制御パスが突如として切断されたことで、極大魔法が行き場を失って荒れ狂い始める。

完璧に統制されていたはずの熱量と魔力の奔流は、不規則にねじれながら限界を超えて赤黒く膨張し始めた。


「ま、待て! 違う! 制御が……制御が効かんッ! 止まれ、私の魔法よ、止まれェェッ!!」


泥水にまみれて這い上がりながら、ザッカスは自らの頭上を見上げて杖を伸ばす。

だが、魔法陣はすでに崩壊している。王都へ向けられていた殺意はコントロールを失い、陣形が敷かれていた自軍のど真ん中で、最悪の自爆兵器へと姿を変えようとしていた。


「嘘だ、ありえん! 私は魔界一の天才軍師なのだぞッ!」


ザッカスは自身の生み出した絶望の炎を見上げ、理解不能な現実に顔を醜悪に歪めて泣き叫んだ。


「馬鹿な……馬鹿な、馬鹿な!! 私の究極魔法が、寿命を削った一撃が……! なぜ、あんな平民が蹴り飛ばした石ころ一つで崩されるのだァァァッ!!」


魔法という絶対の常識が、たった一つの物理法則(算数)に敗北した事実。

魔界一の天才軍師と謳われた誇りは、もはや欠片も残っていなかった。


血の涙を流して狂乱する哀れなピエロの絶叫を完全に呑み込むように、制御を失った超火力の極大魔法が、ついに破滅的な閃光を放った。


◆ ◆ ◆


「落ちてくるぞォォォォォッ!!」


赤黒く膨れ上がった『焦熱の終末』が、王都ではなく魔王軍の頭上へと落下を始めた。


ゴォォォォォォォォッ――!


巨大な炎の塊が空を押し潰し、行き場を失った極大魔法のエネルギーが、密集していた魔物たちのド真ん中へと吸い寄せられるように落ちていく。


「や……やめろ! こっちに来るなァァッ!」

「ザッカス様! 魔法の向きが――!」

「逃げろ! 散れ! 全員、逃げろォォォッ!」


味方であったはずの魔物たちが混乱の悲鳴を上げ、我先にと逃げ惑う。互いに押し倒し、武器を捨てて走り出す。

だが、逃げ場などどこにもなかった。


「嫌だ、落ちてくるな! 私を、私を焼き尽くす気かァァァッ!!」


ザッカスは無様に泥水をすすり、爪が剥がれるのも構わずに陥没した岩盤の斜面をよじ登ろうとする。

だが、彼らが落ちたのは、石ころ一つの衝撃によって崩落したすり鉢状の巨大な穴だ。四方を囲まれたその底から逃げ出せる者など、ただの一体も存在しなかった。


王都を灰にするはずだった最強の攻撃は、天才軍師の陣形そのものを逃げ場のない棺桶へと変え、彼らを一網打尽にする『最悪の自爆スイッチ』へと完全に書き換えられていた。

すべてはあの冷徹な男が計算し、無邪気な少女が蹴り飛ばした、たかが質量100グラムの石ころ一つによって。


「おのれ、おのれぇぇっ! 私の究極魔法が、あんな平民の算数ごときにィィィッ!!」


己の寿命を削って生み出した魔法によって焼き殺されるという、究極の恐怖と屈辱。

自らの手で己の軍勢を焼き払うという理解不能な現実に顔を歪め、血の涙を流すザッカスの絶叫が、崩壊した地形の奥へと吸い込まれていく。


一瞬、世界からすべての音が消え去った。


「アギャアアアァァァァァッ――!!」


直後、鼓膜を破壊する轟音とともに、超火力のエネルギーが陥没した大地を完全に呑み込んだ。

無数の断末魔すらも一瞬で蒸発させる凄まじい閃光と爆炎が、戦場のすべてを真っ白に染め上げていった。

◆ ◆ ◆ あとがき ◆ ◆ ◆

読んでいただきありがとうございます!

毎日の更新を『予定表』どおり完璧にこなすためにも、皆様からの応援が一番の原動力です!


少しでも「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、

ページ下部の【ブックマークに追加】と、

その下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価していただけると、作者の執筆モチベーションが限界突破するほどの「神バフ」になります!


次回は明日夜の20:20に更新予定です。引き続きよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。