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「その予定表、燃やしといて」と勇者に追放された軍師ですが、俺の“予定表”は味方を限界突破させる神バフだった~才能は要りません。予定表どおり動けば世界最強です~  作者: 凪白 黎
第5章:Sランクの日常と、新たなノイズ

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第25話:自称『天才』の襲来

「クックック……愚かな人間どもめ! この魔界一の天才軍師、ザッカス様の芸術的な奇策の前にひれ伏すがいい!」


王都の防衛線。濛々と立ち込める土煙の中から、紫の外套を纏った魔王軍幹部ザッカスが高笑いとともに姿を現した。

彼が禍々しい杖を天に掲げると、前線に展開していた500体の魔物たちの姿が陽炎のように歪む。


「幻惑魔法『鏡写しの陣』! さあ、絶望に震えろ!」


ザッカスの魔法により、魔物の数が2倍、3倍へと膨れ上がっていく。

さらに幻影の死角から、潜んでいた伏兵の魔物たちが次々と姿を現した。

幻影と伏兵を織り交ぜた巧妙な奇策。通常の軍隊であれば、その数の暴力と未知の戦術に恐れをなし、陣形を崩して逃げ惑う場面である。


しかし、王都防衛の指揮を執るエリート魔法騎士団長レオナルドは、鼻で笑って余裕の表情を崩さなかった。


「ふんっ。自称天才軍師だと? 虫けらが小賢しい手品を披露したところで、本物のエリートの前では無意味だ!」


レオナルドは白銀の鎧を鳴らし、余裕のドヤ顔を浮かべて剣を抜いた。

その頭の中には、己の血統と魔力に対する絶対的な自信しかない。3日前に自分たちを「極上の囮」として計算式に組み込んだ、あの軍師の忠告などとうの昔に記憶から消し飛んでいた。


「あのような小細工、我々の圧倒的な魔力で一捻りにしてくれる! 見ておれ、後方に逃げ出した無能どもよ! これこそが『本物のエリート』の戦いだ!」


レオナルドは大きく剣を振り下ろし、声高らかに号令を響かせた。


「我らが完璧なる防衛布陣の力を見せてやれ! 前衛の重装騎士部隊、一斉に突撃! 後方の魔道士部隊は、最大火力の範囲魔法を詠唱せよ!」


「「「おおおおおっ!!」」」


エリート騎士たちが誇り高き雄叫びを上げ、分厚い重装甲を鳴らして前進を開始する。

彼らは自分たちの勝利を微塵も疑うことなく、地形の傾斜など一切気にせずに、一直線に死地へと踏み込んでいった。


◆ ◆ ◆


ガシャッ、ゴガガッ!


「な、なんだ!? 足場が……っ!」

勢いよく突撃した重装騎士たちの足並みが、突如として大きく乱れた。


平坦に見えた大地に潜む、約3度の傾斜。

そのわずかな誤差が、重い装甲を纏った騎士たちの歩幅に致命的なブレを生じさせ、連鎖的に前衛の進軍を完全に停滞させたのだ。


「ええい、構わん! 魔道士部隊、撃てぇっ!」

前衛の足踏みに焦ったレオナルドが、後方へ攻撃の指示を飛ばす。

数十の杖が天に掲げられ、巨大な炎の雨が前線へと放たれた。


だが、そこに北西からの強烈な向かい風が吹き荒れる。


「なっ……魔法が風に流され……っ!?」

「着弾点がズレるぞ!」


毎秒8メートルの風圧を正面から受けた範囲魔法は、本来の目標地点から20メートルも手前へと軌道を歪められた。

そこはまさに、進軍が停滞して密集状態となった味方の重装騎士たちの真上である。


ズドオォォォンッ!!


「ぎゃあああああっ!」

「味方だ! 魔法を止めろぉっ!」


凄まじい爆発音とともに、前衛部隊が次々と宙を舞う。

ザッカスの幻惑魔法や伏兵が原因ではない。エリート騎士団は敵の脅威に触れることすらなく、『地形の傾斜』と『風向き』によって勝手に自滅していく。


「ば、馬鹿な……。なんだこれは……っ!」


後方で指揮を執っていたレオナルドの顔面から、急速に血の気が引いていく。

前衛の停滞と、味方への魔法の誤爆。目の前で起きている惨状は、3日前にあの軍師が地図に赤ペンを引きながら突きつけてきた『崩壊の予言』と、寸分の狂いもなく一致していた。


「ありえない……我々の高尚な戦術が、あんな下賤な算数通りに……っ」


未曾有の脅威を前に予測も対処もできぬまま、白銀の鎧をガタガタと無様に震わせ、レオナルドは蒼白な顔で地面に崩れ落ちた。


◆ ◆ ◆


「アーッハッハッハ! 脆い! あまりにも脆すぎるぞ人間ども!」


自滅による爆炎と土煙が晴れる戦場に、魔王軍幹部ザッカスの歓喜に満ちた高笑いが響き渡った。


「同士討ちで勝手に陣形を崩すとはな! 魔界一の天才軍師であるこの私の前では、人間の戦術など赤子同然よ!」


ザッカスは、エリートたちが己の幻影に恐れをなしてパニックを起こしたのだと信じて疑わず、腹を抱えて笑い転げている。

彼ら魔王軍は知らない。このエリート陣形の崩壊すらも、あの平民の軍師が描いた予定表の中では、勝手に敵の攻撃を引き受けてくれる『極上の囮』を自動処理するための都合の良い『変数』に過ぎないということを。


ザッカスが禍々しい杖を振り下ろすと、幻影の死角から本物の魔物たちが一斉に姿を現し、完全に瓦解したエリート騎士団へと雪崩れ込んでいく。


「ひっ……! くるな、こっちへくるなぁっ!」

「た、助けてくれ! もう魔力が残っていない……っ!」


つい数分前まで「血統と魔力が全て」と豪語していたエリート騎士たちは、泥と味方の血にまみれながら無様に後ずさった。

誇り高き白銀の鎧は黒く焦げ、自慢の杖は見る影もなくへし折られている。数の暴力と未知の戦術を前に戦意を完全に喪失した彼らは、次々と地面に膝をつき、絶望に顔を歪ませていた。


「終わった……。我々の……輝かしい勝利が……」


レオナルドは地面に這いつくばったまま、虚ろな瞳で目前に迫る魔物の群れを見上げた。


圧倒的な戦力差。

完璧だと信じて疑わなかった高尚な防衛陣形は、敵とまともに刃を交えることすらなく破綻した。

あの日、無能と見下していた平民の軍師が、作戦地図に赤ペンを引きながら無慈悲に宣告した『崩壊の予言』の通りに。


「さあ、無能な人間どもを一匹残らず引き裂いてやれ! この王都は、天才である私が支配する!」


ザッカスの残忍な号令とともに、500体を超える魔物が一斉に牙を剥いて飛びかかる。

逃げ場を失ったレオナルドたちは、ただガタガタと震えながら死の絶望を受け入れるしかなかった。


王都の時計塔の針が、運命の『14時ジャスト』を指し示そうとしていた。

――背後から、能天気な少女たちの足音が近づいていることなど、絶望する騎士たちも、高笑いする魔族も、誰一人として知る由もなかった。

◆ ◆ ◆ あとがき ◆ ◆ ◆

読んでいただきありがとうございます!

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次回は明日夜の20:20に更新予定です。引き続きよろしくお願いいたします!

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