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「その予定表、燃やしといて」と勇者に追放された軍師ですが、俺の“予定表”は味方を限界突破させる神バフだった~才能は要りません。予定表どおり動けば世界最強です~  作者: 凪白 黎
第1章:追放と最強の証明

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第2話:配置ミスの修正と、ただの行動予定表

「その剣、今すぐ売ってこい」


俺はエリナが大事に抱えていた身の丈ほどもある大剣を指差した。


「へっ!? で、でもこれ、なけなしの全財産をはたいて買った剣で……」


「重すぎる。お前の天性のスピードを完全に殺している、ただの『重り』だ。無能な連中の戯言を真に受けるな」


悲鳴を上げるエリナに、俺は容赦なく事実を突きつける。

オロオロと戸惑う彼女の手に、俺は懐から取り出した数枚の銀貨を強引に握らせた。


「裏通りに三流の武器屋がある。大剣を売り払い、これで一番軽くて短い『双剣』を買ってこい」


「そ、双剣……? そんな安物で、魔物と戦えるわけ……」


「戦うのはお前じゃない。俺の『予定表』だ」


俺は羊皮紙を取り出し、素早くペンを走らせた。

そこには、明日の14時、北の森における1秒単位の行動予定をびっしりと書き込んである。

呆然とする彼女の胸元に、その予定表をペラリと押し付ける。


「明日の14時、北の森。この通りに動け」


「これだけで……勝てるんですか……?」


「勝てる」


俺は一切の迷いなく、短く言い切った。


「言ったはずだ。お前は、俺が勝たせると」


「『14時0分15秒、右へ30センチ回避』……って、なんですかこれ!?」


押し付けられた予定表に目を落としたエリナが、素頓狂な声を上げた。


「文字通りの意味だが。何か読めない字でもあったか?」


「そうじゃなくて! 秒単位の指定とか、30センチとか……細かすぎません!?」


震える手で羊皮紙を握りしめる彼女に、俺は呆れ交じりのため息をつく。

こんなものは、ただの基礎的な逆算に過ぎない。


「明日の14時は北西の風が吹く。風圧と地形の傾斜、対象の魔物の呼吸間隔を計算すれば、0.2秒の死角が生まれるのは明白だろう」


「……へ?」


「その隙を突いて双剣の連撃を叩き込むには、30センチの位置取りが数学的に最も美しい。それだけのことだ。俺にとっては息をするのと同じくらい当たり前の理論だが……まあ、あの勇者たちには理解されずに燃やされたな」


俺の言葉に、エリナは目を白黒させながら羊皮紙の束をめくる。


「しかも、100項目以上ありますよ!? これを全部、明日までに……」


「暗記しろ。たかが100だ。一歩も狂わずに動けば、お前の服には泥一つ跳ねない」


有無を言わせぬ俺の態度に、エリナはゴクリと生唾を飲み込んだ。

俺の絶対的な自信が、彼女の迷いと不安を強引にねじ伏せていく。


「明日の14時、北の森だな。遅れるなよ」


俺はそれだけ言い残し、夜の街へと背を向けた。



宿への帰路。

夜風を浴びながら、俺はふと明日の『もう一つの予定』を思い浮かべて口の端を上げた。


「さて……予定表を失った勇者たちの方は、どうなることやら」


俺の完璧な指示とバフ抜きで、最深部のボスに挑む愚か者たち。

せいぜい、絶望のどん底で地獄を見るといい。



――そして、翌日の14時少し前。

迷宮の浅層エリアでは、勇者アレンの悲鳴が響き渡っていた。


「まずは小手調べだ。俺の最強の剣技で、瞬殺してやる!」

「死ねぇっ、雑魚スライムが!」


威勢よく振り下ろされたアレンの聖剣が、虚しく空を切る。

最弱のはずの緑スライムは、ただのランダムな体躯の伸縮だけで、力任せな一撃をすんなりと回避していた。


「な、なんだと……!? おい、なんで避けるんだよ!」


「アレン、落ち着いて! 次は右からよ!」


後方から魔法使いの女が叫ぶが、その助言には何の計算も根拠もない。

リクトがいた頃は、魔物の微小な筋肉収縮と迷宮の気流から『0.5秒後の回避軌道』を割り出し、完璧なタイミングで剣を振るよう秒単位の指示を出していたのだ。

だが、今の彼らにそれを理解できる者はいない。


「くそっ、チョロチョロと……! ボスに挑む前に、こんな所で手間取ってられるか!」


焦ったアレンが前傾姿勢で二撃目を繰り出した、その瞬間。


ぬちゃり。


スライムが放ったただの酸液が、無防備に体勢を崩したアレンの顔面を直撃した。


「ぎゃあああああっ!? あ、熱い! 目が、目がぁぁっ!?」


「アレン!? 僧侶、早く回復魔法を!」


「だ、ダメです! リクトの詠唱タイミングの指示がないから、魔力のリソース配分がぐちゃぐちゃで……魔法が不発に……っ!」


地面を転がり回る勇者。

たかが最弱のスライム一匹を相手に、最強を自称していたパーティーが呆気なくパニックへと陥っていく。

彼らはまだ気づいていなかった。

リクトの『予定表』がなければ、自分たちは迷宮の入り口すら突破できない烏合の衆であるということに。



カァァァン……、カァァァン……。



――同時刻。

街の時計塔が、14時の鐘を鳴らした。


「さて……」


北の森の入り口で、リクトは静かに時計から目を離す。

愚かな勇者たちがスライム相手に全滅しかけていることなど、もはや彼の知る由もない。


(あのポンコツ具合……逃げ出していなければいいがな。いや、あいつの目には『変わりたい』という確かな意志があった)


「時間だ。予定通りに始めているだろうな、エリナ」

◆ ◆ ◆ あとがき ◆ ◆ ◆

読んでいただきありがとうございます!

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次回は本日20:20に更新予定です。引き続きよろしくお願いいたします!

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