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「その予定表、燃やしといて」と勇者に追放された軍師ですが、俺の“予定表”は味方を限界突破させる神バフだった~才能は要りません。予定表どおり動けば世界最強です~  作者: 凪白 黎
第4章:完璧な予定表と最強の証明

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第17話:タスク:ゴミの回収

ドゴォォォォォンッ!!


地響きを伴う凄まじい轟音が最前線に轟き、巨大な土煙が舞い上がった。

数万の魔物に包囲され、絶望の淵で泥水をすすっていた勇者アレンたちの目の前に、一人の小柄な少女が隕石のように降り立った。


周囲の地面がクレーター状に陥没し、衝撃波だけで数十体のウルフが弾け飛ぶ。


「え……エ、エリナ……!?」


土煙の中から姿を現したのは、身の丈ほどもある大剣を片手で軽々と引きずる、弱小ギルド『落ち葉の剣』のエリナだった。


「は、ははっ! エリナ! お前、俺を助けに来たんだな! さすがだ、早く俺を保護して、その魔物どもを殺せ!」


アレンが鼻水まみれの顔を輝かせ、傲慢な命令を下す。

死の淵から救われたと勘違いした勇者の虚栄心が、一瞬にして首をもたげたのだ。


だが、エリナはアレンへ視線を向けることすらしなかった。

彼女の血走った目は、勇者ではなく、周囲を取り囲むオークとウルフの群れだけに向けられている。


「……リクト様の完璧な予定表(スケジュール)に、0.2秒ものタイムロスを生じさせるなんて」


エリナの額に青筋が浮かぶ。

その瞳には、かつての仲間を助けようという情など欠片もなく、ただ極限の『殺意』だけが宿っていた。


「本当に、万死に値するゴミですね」


直後、エリナの姿がブレた。


ズバァァァァンッ!!


暴風のような剣閃が薙ぎ払われ、アレンを取り囲んでいた数十頭のオークが、悲鳴を上げる間もなく一瞬で『赤い霧』へと変わった。


「邪魔です! あと七分……あと七分で大根のタイムセールが始まってしまうんですよっ!」


ドガガガガッ!!


剣を振るうのすらもどかしいとばかりに、エリナは素手や蹴りまで交え始める。

拳で殴られたキメラの頭部が砕け散り、後ろ回し蹴りを喰らったオークが砲弾のように吹き飛び、後方の魔物を何十体も巻き込んでミンチに変えていく。


「な、なんだあのバケモノは……!?」


遠巻きに陣形を守っていたSランク冒険者たちが、顔面を蒼白にして後ずさった。

それは戦闘ですらなかった。道の真ん中に散らばった石ころを蹴り飛ばすような、完全にただの『清掃作業(ゴミ処理)』の光景だ。


「どきなさいどきなさいっ! ゴミがリクト様の視界を汚さないでくださいっ!」


血飛沫と土煙が戦場を埋め尽くしていく。

わずか数十秒。エリナが嵐のように通り過ぎた後には、数百体規模の魔物の群れが跡形もなく消し飛んでいた。


「あ、あの……俺は、俺の救出は……?」


恐怖と圧倒的な力の差を見せつけられ、アレンは泥水に浸かったまま声を引きつらせる。

そんな勇者の声に、エリナはピタリと足を止めた。倒れ伏す魔物の死骸を一瞥もせず、初めてアレンたちへ光のない瞳を向ける。


「さて。魔物(チリ)は掃きました。次は――」


エリナは剣を無造作に肩へ担ぎ、泥に塗れた勇者たちへ無表情のまま歩み寄る。


「予定表通り、粗大ゴミの回収ですね」


ガシッ!


「ぐえっ……!? お、おいエリナ! どこを掴んで――」


泥水に這いつくばるアレンの首根っこを、エリナが無造作に片手で掴み上げた。

まるで道端に落ちている汚物でも摘まむような、微塵も感情の籠もっていない手つきだ。


「ははっ、俺たちを安全な場所へ運んでくれるんだな? そうだよな、まずは俺たちを――」

「勘違いしないでください」


エリナの声は、氷のように冷え切っていた。


「あなたたちは救助対象ではありません。リクト様の予定表(スケジュール)を邪魔する、ただの障害物です」

「え……?」


アレンの顔からサッと血の気が引く。

だが、エリナは勇者の絶望顔になど一切の興味を示さず、手首を軽くスナップさせた。


「回収(ポイッ)と」

ブォンッ!!

「ひぃええええええええええええっ!?」


凄まじい風切り音とともに、アレンの体が砲弾のような速度で空高く舞い上がった。

数百メートル先の後方陣地へ向かって、一直線に放物線を描いていく。


「次。時間の無駄です」


エリナは無表情のまま、隣で震えている魔法使いの少女の襟首を掴む。


「ひっ、ひぃぃっ……!」

「回収(ポイッ)と」

ブンッ!!

「いやああああっ!」


続いて戦士。僧侶。

エリナは次々と彼らの襟首を掴むと、文字通り『ただの粗大ゴミ』を回収車へ放り込むかのように、遥か後方の陣地へ向かって無表情で連続投擲していく。


そこに感情はない。怒りも憎しみもない。

ただ予定表に書かれた作業を消化するだけ。それがアレンたちにとって、何より残酷な事実だった。


ズドゴォォォォンッ!!

「ガ、アハァッ……!?」


遥か後方の安全地帯に、勇者たちが無様なカエルのように次々と激突した。

全身の骨が軋む衝撃に血を吐きながら、泥に塗れた聖剣を手放したアレンは、己の置かれた絶望的な現実を理解する。


自分は、かつての仲間に救出されたわけではない。

ただ物理的に撤去(排除)されただけなのだと。


「あ……あぁ……」


かつて見下していたはずの弱小ギルド員に、人間扱いすらされずゴミとして投げ捨てられた圧倒的な屈辱。

そして、自分たちの全力が一切通じなかった魔物を単騎でミンチにし、人間を数百メートル先へ軽々と放り投げる絶対的な実力差。


「あれが……かつて英雄と呼ばれた勇者パーティーなのか……?」

「人間扱いすらされていない……」


遠くで見守っていたSランク冒険者たちの、戦慄と軽蔑の入り混じった声が風に乗って微かに聞こえてくる。

全軍の冷ややかな視線が突き刺さる中、アレンの虚栄心は完全に粉砕されていた。

かつての傲慢な勇者はもはや一言の声を発することすらできず、ただ泥まみれのままガタガタと震え続けるしかなかった。


一方の前線。

エリナはそんな彼らを一瞥することもなく、懐から通信魔導具を取り出した。


「リクト様。粗大ゴミの回収作業、完了しました」


そして大剣を担ぎ直し、くるりと戦場の奥へ振り返る。


「あぁ、燃えないゴミの回収日は明日なので、そこで大人しく待っていてくださいね」


泥まみれの勇者へ冷酷な宣告(本人は大真面目)を残し、彼女は次のタスクへと向かっていった。


◆ ◆ ◆


『リクト様。粗大ゴミの回収作業、完了しました』


通信魔導具から届いたエリナの報告に、俺は一つ頷いた。


「ご苦労。これで盤面のノイズは完全に排除された」


俺は手元の戦術盤から、『勇者』という名のゴミ(コマ)を指先で盤外へと弾き飛ばす。

陣形を乱すイレギュラーが消えたことで、前線の防衛ラインは再び完璧な数式を取り戻し、自動的に魔物の大群をすり潰し始めた。


「や、やりました……! 前線の魔物、九割方が制圧されています!」

「まさに神の采配だ……! これで、これで王都は救われたんだ……!」


司令室の窓から眼下の戦場を見下ろしていた王都の使者たちが、堰を切ったように歓声を上げる。

誰もが肩の力を抜き、涙を流して抱き合い、国を救った奇跡の勝利に酔いしれていた。Sランクの精鋭たちも、拳を突き上げて雄叫びを響かせている。


だが、俺は歓声には加わらず、懐中時計の秒針を見つめながら『次の変数』を計算していた。


大根の特売開始まで、残り七分。

そろそろ、時間だ。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――――ッ!!


突如、司令室全体が激しく揺れ、机上のインク瓶が跳ね上がった。


「な、なんだこの地響きは!?」


歓喜に沸いていた司令室の空気が、一瞬にして凍りつく。

次の瞬間、前線監視用の水晶が真っ赤な警告色に染まった。


窓の外。地平線の彼方から、山のような体躯がゆっくりと姿を現す。

分厚い雲を突き破って現れたのは、城壁よりも巨大な漆黒の翼だった。


「あ、あれは……まさか……ッ!」

「伝説の、災害級ドラゴン……! スタンピードの、元凶……!」


使者の顔から、みるみる血の気が引いていく。

膝から崩れ落ちたSランク冒険者が、ガタガタと震える声で漏らした。


「ば、馬鹿な……あんな化け物、討伐対象に含まれていなかったはずでは……!」

「終わりだ……勝てるわけがない……王都ごと消し炭にされる……!」


窓の外の巨大な漆黒のドラゴンは、なぜか己を『害虫』のように見下ろす冷徹な視線を感じ、本能的な悪寒に苛立って首を持ち上げた。


グォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!


世界そのものが震えるような絶望の咆哮が響き渡る。

司令室が阿鼻叫喚のパニックに包まれる中――俺はただ一人、表情一つ変えずに舌打ちをした。


「チッ……出現座標は想定通りだが、特売前にあのサイズの粗大ゴミを解体するのは、少々タイムロスだな」


俺の呟きに、使者たちが信じられないものを見るような目を向けてくる。


「り、リクト殿……!? なぜ、あんな生きた天災を前にして平然としていられるのですか!?」

「騒ぐなと言っている。ただの予定通りのタスクだ」


俺は震える使者を一瞥すらせず、手元の懐中時計をカチリと閉じた。

秒針は、15時00分ちょうどを指している。


「よし。誤差なし(ゼロ)だ」


俺は何でもない事務作業のように、予定表(スケジュール)の次の行に羽ペンでチェックの印を書き込んだ。


「――災害級ドラゴン出現イベントを確認。これよりフェーズ2へ移行する」


通信魔導具を手に取り、前線で待機するエリナたちへ向けて淡々と告げる。


「急げよ、お前ら。大根の特売まで……残り『六分』だ」

◆ ◆ ◆ あとがき ◆ ◆ ◆

読んでいただきありがとうございます!

毎日の更新を『予定表』どおり完璧にこなすためにも、皆様からの応援が一番の原動力です!


少しでも「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、

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明日はお昼の12:10に更新予定です。引き続きよろしくお願いいたします!

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