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【番外編③】月光
青空に二つの月が淡く浮かび、言葉を持たない風が静かに世界を織り成していく。 ここは、祈りが形を持ち、見えない力が運命を揺らす場所。
かつて、甘く焦げた匂いが、大切なものを炎の奥へと連れ去った。 かつて、冷たい鉄の輪が、無垢な命を絶望の淵へと縛り付けた。 そして、舞い散る灰の中で、優しく吹き抜けた風が永遠の眠りについた。
喪失は深い森の霧のように心を覆い隠すが、やがて差し込む光がそれを少しずつ晴らしていく。
誰かを守るために紡がれた固い殻。 迷いを断ち切るように巻き起こるつむじ風。 冷たかった手のひらは、誰かと繋ぐことで確かな温もりを取り戻していく。
空を覆うほどの巨大な絶望が降り注いでも、もう恐れることはない。炎に焼かれた悲しみは、やがて静かな怒りと確かな決意へと変わり、新たな夜明けを呼び寄せる。
二つの月が見下ろすこの不思議な箱庭で、彼らが足跡を刻むたび、 冷え切った大地は静かに、そして美しく息を吹き返していく。




