願う
最初の待ち合わせの場所まで着いた。時間があっという間に過ぎてった。最後の抗いだったのかなと今となっては思う。
『君は何を望むの?』先輩は私に言った。
「私は…先輩のそばに入れるだけで十分に幸せなんですよ。そばに入れることが私の望みですかね。」
『私は、君に何もしてあげられない。誰かを好きになることはない。』
なぜそのようなことを言うのですか?ほっとけるわけない。
先輩の過去の恋愛話を改めてもう一度よく聞いた。何か言えればと少しでも心が動いてくれればいいから。先輩に伝える言葉を考えていた。
不意にぞっとしてしまった。思い出したくもない。名前を呼ぶこともなければ顔も見たくもないと思うアイツに重なってしまったのだ。もしかして、先輩はアイツのように堕ちてしまっているのかと思った。同時に私では先輩を救うことも好かれることもないと知ってしまった。
今、先輩に必要なのは恋人じゃない。一人の時間が必要なんだ。もし仮に、先輩の呪縛を解き放つような人が現れるとしたら…それはきっと、私じゃない。
言葉が出ない。諦めます。たった六文字の言葉が思うように出なかった。ただただ時が過ぎていく。そこで私は笑って言った。
「私、先輩のこと諦めます。何かあったら何でもいいです。連絡してください。」これでいい。私は先輩のサポートに回る。先輩には幸せになって欲しいから。先輩のことを好きでいてくれる、先輩の中にある殻を壊せる人に出会えることを私は願う。




