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初恋  作者: 五十嶋春
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11/13

11月3日

『おはよう。』と後ろから声をかけられた。振り向くと翔音さんがいた。

「おはようございます。お久しぶりです。」翔音さんを見ると黒のズボンに黒のパーカ帽子をかぶってからフードを被るという完璧な日焼け対策で新しいクロスバイクでご登場した。流石を通り越してすごいしか私には語彙力がなかった。すごい日焼け対策だ…。

「では…行きますか!!」そうして私はクロスバイクのペダルを踏む。前々から約束していたサイクリングが今日、11月3日に実現したのである。時折、会話を交えつつ、河川敷の景色を楽しみながら進んでいった。

一、二時間後に目的地である多摩川のサイクリングコース最北端まで行った。

「先輩には、この銅像を見て欲しかったんですよ!社会科の教科書で見たことありません?」そう言って、私は玉川兄弟の銅像を指さす。

『あ!ここだったんだね!!!』社会科を得意とする先輩にとってはすぐに何の銅像が理解をしてくれた。何故なら、

「友達に見せたら、〝え?誰それ、やったっけ?〟と言われたんですよね…。小学校は違っていたとはいえ、同じ筈なのに。」

『エ、絶対やってると思う!!なんで(笑)』

「分かんないですよ(笑)」

この場所は奥に玉川上水が流れているので少し得た知識を先輩に提供した。私たちはそこで休憩を取った。

あれから、お互いの近況報告などを話した。呼吸がある程度整ったタイミングで私はあるものを先輩に渡した。

「翔音さん、まずはこれを…。」

先輩は目を輝かせて『いつも本当にありがとう!』と笑顔で言った。この笑顔がどれだけ愛おしいと思うことか。

一通り、翔音さんはその雑誌を堪能(?)してファイルの中に入れた。

そして―。

「あの、これ…20日早いですが…誕生日おめでとうございます。」

翔音さんは驚いた表情で『ありがとう!確かに早いね』と笑い、『20日経てばお酒飲める。』と言いながら中身を見た。

翔音さんが最初に取り出したのは小さな箱だった。あの日の約束、早速ですが果たしちゃいました。

『え、何だろう…?すごいお洒落な箱だね。横にずらすのかな?』

「はい。ずらしてみてください。」

翔音さんは箱を横にずらして中身を見た。そこには冬をテーマに私が作ったイヤリングを入れていた。翔音さんは、どんなリアクションをするのか少し楽しみだった。

『え、あ!早速叶えてくれたの!?すごいモフモフじゃん!』

「はい!いつもは1年中付けられるようなデザインが多かったので今回は冬をテーマにと。大人っぽいデザインにしてみました。」

『いや、もう本当にありがとう!』

 続いて翔音さんが取り出したのはスケッチブック。やっと1冊全ページが埋まりましたよ。

『んーっと…これは…スケッチブック?』

「一冊、丸々、全部描いてます!」

『!?え、これどれくらい時間かかった?』

「私が中2から描き始めて今に至るので…約五年ですね。最初の方は中2、3クオリティです。」

『中2クオリティ(笑)いや、でもページめくる度にどんどん絵が上手くなってるよ!』

それは嬉しいお言葉を…!

「え、本当ですか!?」

『本当だよ!』

「ありがとうございます!」

嬉しいぃ!と心の中で叫んでいた。

玉川兄弟の銅像の先にある御嶽神社が今回のサイクリングのゴール。今いる場所から、数メートルの距離の先にある。そこまでまた、走らせることにした。

そこで写真も撮り、神社に参拝した。

 一旦、玉川兄弟の銅像まで戻り、途中の休憩スポットがあったのでそこまで行くことにした。途中、強い風が吹いて、小さな虫が目の中に入りそうになりながらというか実際に入ったので、その休憩ポイントのベンチに翔音さんと座った。

ここで私は考える。事前に友達から公園だと話しやすい環境であり、落ち着くと。とはいえ、公園でもなく、人が何人かいたので絶賛プライドとバトルファイトしていた。心の中で自問自答していた。うだうだして何分語った後、勇気を出して翔音さんに言った結果が

『そっちから来てくれないと…。』だった。

「私だって…恥ずかしいんですよ…///」あぁ…ほんと馬鹿みたいだ。

頬が熱い…。心臓の音がはっきりと聞こえる。読者の皆にとってはハグごときで何をそんなにと思っているのだろうが。

パズルゲームをしている翔音さんを見て、私はゆっくりと距離を縮めて、翔音さんのパーカーの袖をそっと掴んだ。

『・・・可愛い。』ボソッと小声でそう聞こえた。

「・・・!?え?」今なんて?気のせいだよな・・・?

『可愛いところあるじゃん。』

「!?!?!///」やめてください…。これ以上、何も言わないで…。これでも精一杯、勇気出してるんです。

「・・・。」そこから私は、腕を伸ばして翔音さんを後ろから抱き締めた。

『可愛いね。』

「っ…///!」何も言わないで…。拍動がとんでもなく早くて限界だった。心拍数二百いってたのではないかと今では思う。だが、どこか癒された。

自分の心に気を紛らわせるために私は「パズドラの属性、なぜ水属性のダンジョンなのに火属性で挑んでいるのですか?」と言った。

『え、なにそれ』

「属性には弱点属性があるんですよ。」

『それは知らない。』

「先輩の友達、何も説明してないんですか!?」

『うん。何も言ってなかった…。』

「属性にはまぁ、ジャンケンをイメージすればいいんですけど…。火には水、水には木、木には火が強いです。あと、光と闇は互いに弱点でもあります。」

『へぇ…!そうなんだ!私を見てわかる通り、へたくそなんですよ…。ということで、はい!』と翔音さんは私に携帯の画面を私が見えるように向ける。

『やってほしい。』

「え!?」え、この体勢で!?私、思いっきり翔音さんバックハグしてますけど!?なに、え、私は試されているのか!?と思考を巡らせていたが、きっと欲でもあったのだろう〝このままでいたい〟という欲が。本当に愚かな感情だな。

「いいですよ。」そう言い、私は翔音さんの携帯を借りて翔音さんを抱きしめたままダンジョンをやった。ところどころ補足説明をしながら。

 世間話や先輩の愚痴を聞きながらパズドラを行った。辺りはすっかり薄暗くなっていた。

「・・・帰りますかね。」

『そうだね!』

私たちは、待ち合わせをした場所までペダルを踏む。11月とは思えないほどの暖かさで河川敷に植えられている桜や梅は綺麗に花が咲いていた。


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