王様の事情とは…?
いつもお読み下さりありがとうございます。
書き始めて、題名に違和感を感じておりましたので変更させて頂きます。
作者の予想外の方向に信太郎が向かっていきますので、お付き合いくだされば幸いです。
ー北街の事情ー
獅子族が治める場所として北街は大切な防御拠点だった。
この世界に於いて、一番北側にある大きな街が持つ意味は大きい。魔獣の森が近くにあるのだし遠くにはあの海もある。余計にこの街への獅子族が賭ける思いは強い…はずだった。
ー王様視点ー
震える身体で王座から転げるようにダイン様の前に跪く。いや、もはや覇気に押されて座るよりも崩れ落ちているが近いか。
鍛えに鍛え続けたはずがなんと情け無い。
「やめよ。お主の覇気でこれでは事が進まぬ。特にシンさんが絡んでいるとなれば事は重大だ。急がねば、な」
ガイエ様の言葉で少し緩んだ覇気に思わずホッと息を吐く。周りに目をやれば、近衛兵は隊長を除いて全て失神していた。
「さ、時はない。事情とやらを聞こうか」
ガイエ様の言葉に口を開く。
もう、終わりだ。
約束は守れないのか…。
「まずは、変身を解きますので魔法を使用しますがお許し下さい」
見慣れた狼族の毛色に変わり変身が解けたと理解した。
覇気が更に弱まったところでようやく顔を上げた。目が合ったのはガイエ様か。
おや、と言う顔をしていた。変身は当然バレていたのだろう。
しかし、私を知っているのか?
末端の冒険者に過ぎない私を。。。
「北街を治める獅子族のラカは、昔馴染みで友でもあります。彼から連絡がきたのは数ヶ月前。突然のSOSでした。彼に恩のある俺はとにかく、この地へとやってきました」
近衛隊長は涙ぐんでいた。連れて行ってもらえぬ悔しさと彼はいつも戦っていたからな。
「北街を取り囲む魔獣に異変があり調査したところオーバーフロートが起こる可能性があると分かったそうです。もし、事実なら王家へお知らせせねばなりません。しかし問題が発生しました。それが、北街特有の薬草収穫期です」
北街の森は魔獣が多いのと引き換えに希少なる薬草が多いので知られる。しかも、数十年に一度、その薬草が異常発生する時がある。
これはこの世界全体にとっても重要なモノで最も重要な役目と言える。
これがなんとオーバーフロートと重なりそうだと言うのだ。
「そこでラカは言い伝えに賭けたいと言い出しました。オーバーフロートは先駆けとなる魔獣を倒せば消滅するかもしれぬと言うモノです。彼に身代わりを頼まれた俺は…」
言い淀む俺は、あの時を思い出していた。
彼に俺こそが行きたいと何度も何度も説得したあの時を。
真っ直ぐな性分の彼が、それを受け入れるはずもなく結局彼に恩のある俺は身代わりを引き受けたのだ。
希少な魔石を使ってまで変身をして。
「なるほど。我らにバレたくないと魔石を使ったのか。幻惑の魔石は希少なモノ。ラカなるモノが」「いえ、違います。俺の俺のモノです。考えたのももちろん俺で。ラカには何も責任はありません!!」
鳳凰族の言葉を遮る暴挙に出たのは自分でも驚いた。なけなしの宝を使っての幻惑の魔石も意味をなさず、結局ラカの不在は最悪の状況でバレたのだ。
冷や汗を拭う俺の頭の上から笑い声が聞こえる?何故??
「ふふふ。なるほど…シンさんだからだな。幻惑の魔石など彼には通用しないのか。
彼の存在を感じるなど、この者らには無理か…」
笑い声はダイン様だ。
『シンさん』
何度も聞こえる名前が出る度に彼らの覇気は非常に強まる。大切な人なのだろう…
「おい。狼族の。
お主はこのまま身代わりを続けろ。獅子族には事情はワシが知らせる。それ以上の事がおきたのだ。これから話す内容を話したら…。ま、これを渡しておこうか」
ガイエ様から渡されたのは『秘儀の魔石』
破れば誓った相手にその瞬間に知られる。見た事もない幻の魔石だ。
。。。
知りたくない。
出来れば関わりたくないが、ラカの身代わりをした時から諦めていたのだ。仕方ない…
遠くで、戦うラカを思う。
俺も踏ん張ろうと決意を固めながら…。
ーガイエ視点ー
ふーむ。
予想外とはこの事だな。
狼族のラザとは。
これは面白い奴が絡んできたな。
シンさんと言い、最近は賢者の名を持つワシでも全く予測のつかぬ事態ばかりで…面白い。
さて、ラザを使ってシンさんの実力を見せてもらおうか。隠している『神族』の力を…。
(しかし、この時の予測もあっさり覆ることになる。賢者などと言われた自分が恥ずかしいな。だが…)




