ラカの決意…。
ラカ視点ですが、少しシリアスを含みます。
次話からコメディを強めていきますので宜しくお願いします。
ーラカ視点ー
獅子族の末端を負うものとして、己を鍛える為に選んだのは、騎士団ではなくギルドの冒険者だった。思えばそれは誠に正しい判断だったのだろう。
王族とは言えぬほどの末端に属する俺は、それでも貴族の中にあった。それが意味する事が理解出来たのもギルドだった。常識がことごとく覆る。その有り様にそっと寄り添ってくれたのは、チームを組んだラザだった。名前が似ていた。チームを組んだ理由はそんなモノだった気がする。
お互いに強さを求めていたので、ライバルの様に競っていたのだ。しかし、狼族にしては気配り屋のラザはそのうちにあれこれと世話を焼きだした。
「だから!!お前の常識はどうなってるんだ?稼ぎを全てチップに渡したらギルドがオカシクなるだろう?」
「フン。そんなモノ個人の自由だろ?それでオカシクなるのなら、そこまでだ。そうではないのか?」
思いっきりため息をついたラザが疲れた様子で呟く。
「ギルドは、街の要だ。王族や貴族だけが街を守っているのではない。いや、むしろ…まぁ、いい。俺の言ったこと少し考えてくれ」
反発心だらけの俺は、ヤツを睨んで部屋へと戻った。この結果は思わぬ形で翌日から現れた。
チップを弾んだ受付係はあからさまに俺を贔屓にして楽で儲かる仕事を優先的に案内するようになったからだ。
もちろん、不満は噴出する。だが、そんな事に頓着する事なく己のレベル上げを目指していた俺はある日闇討ちに合う。
結論から言えば、ラザに助けられた。もし、奴が庇ってくれなければ、命はなかっただろう。冒険者が冒険者を襲うリスクは、己の命をもって贖うのみだからだ。
貧しく家の為に、働く男達はそのまま刑に処された。その家々を回ってラザが保障をしていたと知ったのはかなり後になってだ。
その事件で街にいられなくなったのは、俺だけでない。あの受付もだ。
彼は泣きながら「ギルドを追い出された者に働く場所はありません。野垂れ死ぬのみです。どうか、一度だけ見逃して下さい!!」
彼の行方は知らない。
その頃、俺も大問題にあっていたからだ。
ギルドで何も仕事を貰えない。その上、この事件を知った両親からもう帰ってくるなと
言われた。
「ほら、これなら依頼してやるよ」
見れば『薬草採取』だった。初心者のみが行うモノ。「ありがとうございます。頑張ってやってみます」何度も俺の代わりに頭を下げてラザが依頼を受けた。そうやって何回も何回も依頼を受けているうちに、ギルドにある依頼が来る。
難易度が極めて高い薬草採取だ。レベルAでなければ取れない場所にある。しかも大至急だ。
このギルドでは、Bランクが最高ランクだ。誰もが青白い顔をして俯いている。
「俺が引き受ける」
ギョッとした顔をこちらにむけたのは、ラザだ。
「信頼を取り戻す為ならば、命を賭けるべきだろう。そうでないのか、ラザ?」
引き止めようとするラザが意を決して頷く。
「そうだな。俺たちが引き受ける」
ギルドの中は騒然とするも誰も止めない。
味方はいない。
Cランクの俺たちが目指すには、無謀以外の何者でもない。それでも、賭けるしかなかった。
結果…。
様々な幸運が重なり、かなりの深傷を負ったが依頼はやり遂げた。
状況は、今も同じだ。
無謀以外の何者でもない。連れている部下も数人に絞った。
何が何でもやり遂げたいが、北街全体を危険に晒す訳にはいかないからだ。
オーバーフロートを防ぐ言い伝えなど、はなから信じていない。でも、これから犠牲になる沢山の命を考えればやるしかない。
ランザ様に信を得た者として。この北街を預かる時から決めていたのだ。
死力を尽くす…と。
森を進めば進むほど、オーバーフロートの予兆は感じられた。魔獣の強さも数も段違いだからだ。
増えてゆく傷や深まる疲れを癒す暇さえない戦いの繰り返し。
オーバーフロートの始まりを告げる際先の魔獣とは、どんなモノなのか?
不安は募るも部下達を統率する身だ。先頭に立って冷静に作戦を立てている。
つもり…だった。
だが、それは突然起こった。
そして、これまでの作戦などチンケだと言わんばかりに立ちはだかった。
『ゼールドラゴン』
碧の身体は聞いていたより遥かに大きく5m以上はある。その上口から吐き出す突風はまともに浴びれば一瞬でぶっ飛んで戦闘終了と言う代物だ。
避けようとしても、意外にも俊敏な動きのヤツはかなり凶暴な尻尾を振り回して避け損ねた部下がまともに受けて吹っ飛ばされる。
「うぅ。」呻き声が聞こえるから生きてはいる。が、助けには近寄れない。
一緒の隙は、命取りだからだ。
こちらの魔法など、尻尾にあしらわれて搔き消える。剣を当てようにも風魔法で思うようにいかないばかりか毒息を吐くのを防ぐので精一杯の有り様。
あ、また一人今度は毒に当たって倒れた。
どうすれば、と考える暇さえない。
肩で息をしながら、絶望的な展望しか見えないと心が折れかけては自分を叱咤する。
また、ラザを巻き込んだのだ。更に言えば部下の命を北街の人々の安全を預かる身だ。
疲れて重くなった剣を振り上げて、打ちかかる。倒れたかけた部下に隙を作ると「下がれ!!」と怒鳴る。
足を引き摺りながら下がる部下を振り向く暇もなくまた、尻尾に狙われる。
剣を以て防いでいたその時。
遂に限界が来た。
剣が折れたのだ。
防げない尻尾が自分を狙う。頭を守ろうと腕で庇うも頭では理解していた。無駄、だと。
その時を待つ俺の耳に変な音がした。
バキッ!!!!!
そして、自分はもう終わったのだと理解した。
何故なら、有り得ないモノが見えるのだ。
あり得ない…本当に。。
まさかの兎族と倒れた『ゼールドラゴン』
倒したのか?まさかの兎族が?!
目の前の兎族は、俺の知る兎族の特徴を一つたりと持っていない。
。。尋常な兎族ではない。。。
何せ獅子族である俺より大柄な体格に似合う超絶な筋肉ダルマの様に立派な体格だ。
しかも、蹴り1発であの『ゼールドラゴン』を倒したらしい…。
本当か?
まさかと思っても、見えるモノが証明していた。
彼が右手に持って引き摺っているのは、まさかの『グレンドラゴン』
ぷすぷすと煙を上げる様子を見れば、ついさっき倒したのだろう。
しかも、通常の『グレンドラゴン』と違う。
体格が数倍はある。
片手で持てる様なモノでないのに…。
「お前たち、もしかしてオーバーフロート狙いかぁ?それなら、俺が狩り尽くしてるからもうすぐ終わるから。早いモノ勝ちだからな!諦めろ」
え?狩り尽くしてる?!
言葉の意味は飲み込めても状況が飲み込めない。まさか…、
「もう、これだからな。
あのね、この辺りに起きるオーバーフロートの獲物はみーんな俺のモノなの。手出し無用なんだよ。むっ、聞いてる??」
一人で捲したてるこの兎族の男が、突然近づいてきた。気配もなく一瞬で距離を詰められ驚くも、鼻を近づけて臭いを嗅いでいた。
え?ええ??
く、臭いのか?流石に数日ずっと魔獣退治ばかりしてたから、と不安に思っていたら思いもかけない返事がきたのだ。
「クンクン…。うーん、北街の奴かぁ。
じゃあ、はい!
これ飲んで無事に帰ってね。それでご主人様に『お土産楽しみにしてね』って伝えてね〜」
と、言ったと思うと踵を返して森の奥へと駆け出していった。
「ご主人とは…」と後ろ姿に問いかけると森中に響く声が聞こえた。
「信太郎だよぉ〜」
シンタ。。
最後まで聞こえなかったが、シンタと言う方らしい。
手のひらに残された瓶の中身を査定すれば…『レーレ』
秘薬中の秘薬。
「うぅっ」掠れた呻き声に我に返った俺は素早く部下たちに『レーレ』を飲ませる。
瀕死の重傷だった部下達が飲んだ途端、すっくと立ち上がる。
治っても不安の残る顔色に決心を固める。
「親方様。さあ、これからです。反撃といきましょう」元気が取り柄の部下が微かに震える手を隠して明るい声を出す。
俺は首を横に振った。
「帰還する。既にオーバーフロートは恩人の手によって解決された。証拠を持って戻るぞ!」
残された『ゼールドラゴン』の耳を切り落とし街へと帰還する。秘薬で全ての傷だけでなく魔力も満タンになった我々の足取りは軽かった。
シンタ…とはどの様なお方だろうか?
もし、敵に回ったら北街は…。
一抹の不安を部下に悟られる事なく無表情を作った俺はひたすら街へと進む。
その後の、恩人のご主人との出会いは人生で一番の予測不能な出来事だった…。
本当に。。。




