巻き込まれた門番の1日…
この街の王様の事情は次話で明らかになります。
いつもお読み下さりありがとうございます。お寄りくださる皆様にいつも励まされております。
この世界は、四大大国で成りなっている。
それぞれ獅子族・猛禽族・熊族・豹族を頂点とする。どの国も現在では争いをしている国はないが例外もある。
それは…。
ーとある門番の1日ー
「開門〜開門ーーー!」
城からやってきた近衛兵により、大声の呼ばわりに我々門番は慌てて大門を開く。
北街に於いて、大門の持つ意味は大きい。特に魔獣が活発化した現況では大門はいつも閉ざされたままだ。
横にある小閉門を商人や冒険者が出入りするのみでここ数ヶ月開いた事はない。
近衛兵の言う事は絶対だ。例え疑問があれど従うのみ。数人がかりで魔力を込めて開けた大門に向かって馬車がやってくる。かなりのスピードだ。御者の腕前は特級だろう。
「お待ち申し上げておりました」
いつの間か城から到着した近衛兵も衛兵も一列に並んで馬車に跪く。我々も慌ててそれに倣う。いったい何者の到着なのだろうか?
何処かの王族か?
まさか最大国である獅子族の王族だろうか?
疑問は頭の上から聞こえる緊張した近衛隊長の言葉で理解した。
「鳳凰族のガイエ様・眞猪族ダイン様。そしてサテ殿・ブヤン殿。ようこそ北街へお越し下さいました。御来臨の光栄を」「はい、そこまで!!」
え?
鳳凰族??
眞猪族???
聞いた事はある。でも、それこそ伝説に過ぎないと思っていた。どの国にも属さない種族はあの『神族』に仕える人々だとか、グレーゾーンの管理者だとか。
ワクワクした子供の頃ならいざ知らず、現実となると憧れよりも、畏れで恐ろしくなる。
昨日飲みながら「あーぁ、何が面白い事ないかな?」と呟いた自分を呪いたい。
面白い事どころじゃない。
とにかく。
近衛兵が皆様をお城へ連れて行ってくれるのを願いながら息を潜める。チラリと横を見れば仲間も同じようだ。皆、祈るような表情でとにかく下を向いて。見たらイケナイ何かのように。
「ダイン殿。お主も大人であろう。ここで何かを申すのは如何か?それとも理由をワシが説明しようか?」
「フン。貴様の口こそが大人としての嗜みがないな。こんな場所で嫌味しか言えぬとは。我とて城へ参ると申しておる。さ、行くぞ」
声の中にも覇気を感じて身体が縮まる気がするも「閉門ーーー!!」との呼ばわりを受けて全員が立ち上がって門へと駆け出そうとしたその時。
「待て。」の言葉と共に俺の肩を掴む人間がいた。仲間たちが駆けて行く姿が見えるのだ。門番ではない。近衛兵か?いや、近衛兵であってくれ。頼む。
人違いでも良い。
「お前は、連絡係としてついて来い」
え?連絡係??
混乱する俺に助けが。
「ダイン様。その様な門番でなくても我が近衛兵がいくらでも手足となり働きましょう」
そう。それが一番だ。と心て呟く。
そうなってくれ。と心の中で叫ぶも昨日の呪いはまだ有効だった。
「いや、街人が良いのだ。お主ら近衛兵は勝手が悪いのだ。お主、忙しいのか?」
勇気を持って振り向いた俺の目には、眞猪族の目力がそのまま飛び込んでくる。
「お供します」それ以外の答えなどあっただろうか?
一度も足を踏み入れた事のない城へとダイン様の後ろを歩いて入る。ふかふかの絨毯だろうが、緊急している俺には全て空中のような感覚だ。ガチャガチャと鎧の音がする一団に混じるだけでも冷や汗には充分なのに。
近衛兵も衛兵も居なくなって、王座の間へと近づいても別室へ案内されない。
このまま、一緒なのか?
秘密とか聞いて始末されたら…ブルル。
悪い想像に頭を振るもやがて到着したのは、王座の間で。
え?本当に??
俺の存在忘れてない??
そう思って、思い切ってダイン様に控えて良いか聞こうとしたらそこへ伝令が到着した。
「緊急連絡。シン様行方不明!!」
ダイン様とガイエ様の覇気が殺気を帯びる。
思わず周りの人達は全員、膝をつく。
もちろん、俺も息も出来ないままで倒れる寸前だ。
「門番。お前だ。サテの店へ行け。
良いか、事情を聞いてくるのだ。行け!!」
息も整わぬうちに、命令が下される。
事情?
とにかく、行かねば。
ふらふらとした足取りでドアへと近づいてハッとした。
サテ殿は誰でも知る大商人だ。店は分かるが、入れるかどうか。
「これを持ってゆけ。さあ」隣にいた鳳凰族のガイエ様が魔石を持たせてくれた。
魔石。
コレはそれも特別なモノだ。
こんなモノを何故、俺に任せるのか??
あまりの展開の早さについてゆけない。
そんな俺の不安を丸出しの様にガイエ様から「早く行け」の厳しい声がしてコケながらも駆け出した。
とにかく。
サテ殿の店へ……。
ー門番の居ない王座の間でー
「あやつを使った理由を説明せねばなりませんか?それとも言い訳を聞いた方が良いかな?」
そう言って殺気を放つガイエの様子に王様は王座から慌てて降りてくる。
「お主、獅子族の末端を任される者の癖に王族気取りとはな。王座の間だと。獅子族の王ランザが聞いたら何と言うかな?」
先程までの荒々しい殺気でない。落ち着いた様子であるが故にゾクリとした冷たさを纏ったダインの言葉に近衛隊長が一歩出る。
「申し上げ…ウッ」
睥睨したダインの瞳が近衛隊長を見た瞬間、彼は喉を掻き抱いて倒れた。
「フン。脆弱な。手加減を忘れては不味いか。さあ、王とやら。お前の存念を聞かせて貰おうか?」




