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10月

【10月】



 文化祭が終わった。


 文芸部は、無事文化祭での文集の発表を成し遂げた。しかも後輩くんの作品入りである。


 彼はとっても頑張った。最後は泣きながらも一つの作品を完成させたのだった。

 私も、なんとか彼の興味を引き出し、テーマを考え、励まし、尻を叩き、宥めすかしと、全力でサポートした。


 …私のほうが頑張ったのではないだろうか?


 まあ何はともあれ、後輩くんが作品を書き上げたことはとても嬉しかった。


 ドラゴンと巨大昆虫が大坂城を舞台に戦う物語。


 『なんじゃそりゃ?』と言うなかれ。

 後輩くんと私。二人の涙と苦悩の結晶だ。


 • • •


 「ドコダカドンコ ドコテントン、ドコダカドンコ ドコテントン…」


 物書きという苦行から解放され、久々息を吹き返した後輩くん。

 今日は部室で化石発掘遊びに熱中している。

 化石をわざわざ石膏で塗り固め、そして掘り出すという遊びである。

 ついでに言うと二周目だ。

 ごめん、ちょっと面白さが分からない。


 そして、相変わらず私にぺったりくっついて座っている。


 「ドコダカドンコ ドコテントン…」



 最近、どうにも困っていることがある。


 『俺は先輩と結婚したいです。』


 そう彼が言い出したのは、文化祭の数日前。文集の完成にこぎ着けた直後だった。

 文集作りを通して、彼の私への信頼は臨界点を突破したらしい。

 とはいえ、お付き合いをすっ飛ばして、いきなり結婚というのが彼らしい。


 以来、彼は私に、結婚後の理想の夫婦生活を語るようになった。


 私の意思はどこに行ったのだろうか。


 因みに、一度私の好きなところを尋ねてみたところ、

 「指相撲が強いところ」。

 そこかぁ...。



 「駄目なんですか?」

 意外なように彼が言う。なんだ? 私がおかしいのか?


 「うーん...。確かに君のことは好きだけれど、あくまで後輩としての好きであって、少なくとも今は君とそういう関係になるの、想像出来ないな。」


 「子作りってことですか?」



 デ、リ、カ、シーッ!!!


 生まれて初めて人をグーで叩いた。

 反省はしていない。



 とりあえず、「保留!!」とモラトリアムを決め込む私。

 「そんなバナナ〜!」と後輩くん。

 しばらく口きいてあげない!

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