8月
【8月】
夏休み。文芸部は特に活動日を決めていない。
ただ、私は習慣として部室に来ていた。勉強をするのにちょうどよい環境でもあったからだ。
「夏休み中も鏡花にベッタリなんじゃないのぉ、後輩くん?」
という美羽の(そして私の)予想を裏切り、後輩くんは一度も学校に来なかった。
後輩くんは、虫取りに、釣りに、城めぐりに、模型作りにと、とぉ〜っても忙しかったそうだ。
夏休み明け。こんがり日焼けした後輩くんが、夏休みの思い出を楽しそうに話してくれた。
ちょっと悔しい。
学校は嫌じゃ〜、と夏休みが終わってしまったことを嘆く後輩くん。
へー、そうですかそうですか。
「先輩は何してたんですか?」
「私はお盆以外は大体部室にいましたよ。」
「夏休みなのに部室に来てたんですか?」
ん?…ああそうか。誤解が解けた。
「先輩が居たなら来ればよかったなぁ。」
そうなの?
「一緒に虫取りに行けたのに。」
行かないよ?
「めっちゃカナヘビが捕れる場所があるんです。カナヘビ王国。」
尚更行かないよ?
ひとしきり話し終わると私の隣に座る後輩くん。相変わらずお尻を合わせてくる。暑い。
「先輩に言われた夏休みの宿題、読みました。
つかれた〜。」
心底疲れた表情を作って報告する後輩くん。
夏休み前、私は後輩くんへ3冊の本を渡し、夏休み中に読むよう宿題を課していた。
きちんと読んだんだね、えらいえらい。
「で、どうだった?」
「赤シャツの戦闘力ってどのくらいですかね?」
夏目先生に聞いてもわからないと思うよ。
8月も残り僅かだ。




