7月
【7月】
「ドコダカドンコ ドコテントン、ドコダカドンコ ドコテントン…」
謎の掛け声と共に、私の隣で制作活動に勤しむ後輩くん。
今日も絶好調だね。
さて、今彼は文章を書いている。
文芸部は秋の文化祭で文集を発表する。
今は部員が少ないので、OBやOGからの寄稿文頼りではあるのだけれど、現役部員が作品を載せないのでは格好がつかない。
もちろん私も載せるけれど、彼にも何かしら発表してもらいたい。
そのため、今から書くのに慣れる練習をさせているのだ。
…のだが、何故か彼は今、絵を描いている。
挿絵だそうだ。ドラゴンの絵だ。上手。
ただ、一枚の紙に収まりきらず、その度に新しい紙をセロテープで継ぎ足している。
伊能忠敬の『大日本沿海輿地全図』みたいになっている。掲載サイズを考えて欲しい。
因みに、文章のほうはまだ考えていないとのこと。絵を描いてから考えるそうだ。
斬新。
なお、これが二作目。
一昨日書いた第一作もまた彼らしい作品だったな...。
まず、唐突に魚の名前から始まる。
『ハゼ 14cm』
『アジ 22cm』
といった具合だ。
この前釣りに行ったときの結果だという。
そしてそれが終わると、次は
『アオイソメ 大きさランキング』
とデカデカと書いてある。
原稿用紙のマスは無視だ。
アオイソメというのは、釣りの餌で、足の生えたミミズみたいなものらしい。やめて。
つらつらと『①8.5cm ②12cm …』といった具合に書き進められていて、どうやら一番大きかったらしい個体の後ろに『優勝☆』と書いてある。
…何を見せられているんだろう私は。
その後、アオイソメの『挿絵』を描こうとしたので、それは全力で止めた。
「ドコダカドンコ ドコテントン、ドコダカドンコ ドコテントン…」
さて、後輩くん。今どこで作業しているかというと、私の隣である。
私の腿のあたりに、お尻をぺったりくっつけている。
「ドコダカドンコ ドコテントン…」
なんか、犬や猫が飼い主に体の一部を付けて寛ぐ、あれの要領だ。美羽の言った通り、小学生やハスキー犬みたいだ。ちょっとかわいい。
でも、流石に少しは高校生男女ということを自覚してほしい。
「ドコダカドンコ ドコテントン…」
それにしても、延々と続くこの謎のリズムは一体何なのだろう。
「ドコダカドンコ ドコテントン…」
けっこう気が散る。いつ終わるのだろうか。
「ドコダカドンコ ドコテントン ドコダカドンコ ドコテントン ドコダカドンコ ドコテントン ドコダカドンコ ドコテントン ドコダカドンコ ドコテントン ドコダカドンコ ドコテントン ドコダカドンコ ドコテントン ドコダカドンコ ドコテントン ドコダカドンコ ドコテントン ドコダカドンコ ドコテントン ドコダカドンコ ドコテントン ドコダカドンコ ド」
「うるさーーーーーーーーいっ!!!」
「コ...」
「ちょっといい加減止めて!気が散って本が読めないの!」
「ひいいいぃ…ごめんなさぁい…。」
やれやれ。…大きな声を出しちゃった。怖がらせたかな? ごめんね。でも君が悪いんだからね。
「………」
「………」
「………」
「……ド……テ…」
「………」
「………コ……ト…」
静かに言ってる!!!
もう面白すぎて駄目だった。
あ、更に踊りだした。声が出せないから?
駄目だ。今日は部室での読書は諦めよう…。
そういえば腕相撲大会。
社交辞令では終わらず、あれから毎日のように私のクラスで開催されている。後輩くんはランキング3位に浮上した。




