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6月

【6月】



 お城を一緒に作るようになって以降、私は後輩くんに大層懐かれた。元々パーソナルスペースが狭い子だなとは思っていたけれど、最近はほぼゼロである。


 外で会うと、いつも大声で『留守せんぱ〜い』と言って駆け寄ってくる。そして引っ付いてくる。

 ぺったり。



 因みに、留守というのは私の苗字だ。


 『留守鏡花』


 これが私の名前。


 とにかく、そんな感じでところ構わずひっ付いてくるものだから、私たちの姿は当然色々な人に目撃される。


 『留守鏡花が後輩と付き合っているらしい。』

 私はクラスでちょっとした噂の的になっていた。



 そんなある日のこと、昼食を終えて自分のクラスに戻ってきた私は、後輩くんがクラスメイトに囲まれて泣いている場面に出くわした。


 「え、何やってるの!? どうしたの服部君!? 大丈夫?」

 「うぉぉぉん…ぜんぱぁいぃ。」


 一体何があったの?視線で周りに説明を求める。


 「鏡花。いや別に大したことじゃないんだよ。あのね…」


 友達の美羽が言うところによると、昼休み、私と入れ違いに後輩くんが来たそうだ。私に会いに来たらしい。

 その時たまたま近くにいたラグビー部の高橋君を見るやいなや、

 「マッチョだ! 凄い! 強そう!」

 と盛り上がり、その勢いで何故か腕相撲勝負を挑んだそうだ。


 その後、彼は他の男子にも次々と勝負を挑み続けた後輩くん。

 男子も盛り上がりだし、いつの間にかクラスの全男子と一部の女子を巻き込んだ腕相撲大会に発展した、とのこと。


 凄いな、後輩くんのコミュ力。生きとし生けるもの全てが友達と思っていそう。


 しかし、それと後輩くんが号泣している今の状況と、何の関係があるのだろう。


 「うううぅ、3人に、負げだぁぁぁぁ。」

 なるほど、負けて泣いていたのか…小学生みたいだな。ちょっとかわいい。


 それにしても負けたの3人だけか。強いのね後輩くん。


 「ほらほら、泣いてないで。3人にしか負けてないなら、十分強いんじゃない?」

 「でも悔しいのは悔やじぃよぉ〜。」

 「こういうのって、直ぐに勝っちゃったら、つまらないものなんじゃない?」

 「えぇ〜…?」

 「後ろから追い越すほうが楽しいんじゃない? そうだ。ここから一位目指してみたら?」

 「ふむぅ…。」グズっ


 『そうだねー』、『またおいで』と周りも声をかける。


 やがて元気を取り戻した後輩くん。

 「また来まーす。」と元気に応えてクラスを出ていった。


 ところで私には何の用だったんだろうな?


 「面白いね〜彼、小学生みたい。というか、うちで飼ってるハスキー犬まんまだわ。」

 美羽が言う。

 なんかしっくりきた。



 放課後、後輩くんは私にも腕相撲を持ちかけた。流石に腕相撲では勝てないから、指相撲で勝負した。


 結果、私の三戦三勝。

 後輩くん号泣。


 泣き止むまで、危険生物図鑑を読み聴かせてあげる羽目になった。

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