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廻る刻の河  作者: 餅丸
エピローグ
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エピローグ

《一年後》


「いや、彼ほど吉野瀬の歴史と祭祀に詳しい者は村内にもなかなかいませんからね。願わくは、彼が村にやってきた時にはまた十岐神社に伝わる封祀について語りたいものです。‥‥あっ、彼が明治期の貴重な書物を汚損してしまった件は少々問題ですがね」


「白瀬さん?あぁ、沙耶ちゃんのカレシでしょ?なんか、色白で細身で、イマドキの感じですよね。えっ?付き合ってないの?えーっ、あたしワンチャンあるかなぁ。‥‥無理無理、絶対二人両想いじゃないっすか」


「あぁ、あの村外の若者ねぇ。若旦那がだいぶ目をかけているって話で。いや、最近若旦那の雰囲気も変わりましたよ。ここをもっと外に開かれた村にしようって。ま、抵抗勢力も多いけど。俺?俺ぁ、瀬森の決めたことに従うだけですよ」


「おぉ、やたら昔話に興味津々の若造な。昔話もいいが、今度あいつとは映画の話をしたいのぉ。わしはバック・トゥ・ザ・フューチャーのファンでな。村にはわしの話をきいてくれる若モンはあまりいないから、ちょいとわしの話し相手になってもらえると助かるんじゃが」


「あぁ、健ちゃんのとこに居候してた若者ね。初対面でいろいろナイーブな話をしてくるもんだからさ、最初は霊能力者かなんかかなって疑ったね。彼、ちゃんと高嗣くんに髪飾り渡してくれたかな?」


「白瀬くんね、線は細いけど芯は太いタイプの子と見たわ。ああ見えて健啖で、よく食べるしよく飲むのよ。沙耶ちゃん、あなたみたいに気が強い子は、ああいう男の子が相性ぴったりだと思うわよ」


「白瀬くんか。彼にその気があるなら、ああいう若者が吉野瀬村の首長をやってもいいかもしれないな。この村の歴史も闇も信仰もよく知っているし、合理的な考え方もできる。なに、この村もいつまでも瀬森家が村長をやらなくたっていいと思うからね」


「おう、約束通り今年も来てくれるんだな。今年は治水と土木の仕事を教え始めるか。ん?気が早い?ま、川名の家を継いでくれなくてもいい。俺は沙耶が自由な人生を歩むよう願っているからな。‥白瀬くんは建築の知識はあったかな?」



「白瀬が今年も村に来るっていったら、みんな大歓迎だってさ」

 沙耶が村人たちの反応を教えてくれた。

「とりあえず、就職のあてがなかったら瀬森さんか健造さんに泣きつこうかな」

 就活で絶賛苦戦中の僕は苦笑いしながら答えた。

「ちょっと。私は村外で就職決まってるんだからね。人んちの実家界隈に住み着かないでよ」

「いや、考えてみれば閨狐の血、すなわち吉野瀬の血が僕にも少しは流れているわけで、ルーツの場所に『還る』のも一興かと」

「ふざけた事ばっか言ってるとまた(・・)川に落とすよ」

「残念、それは時渡りによって無かったことになってます!僕はまだ沙耶に落とされてません」

「‥‥お父さんに生コン用意しておいてもらおうかな。白瀬ひとり埋めるのにどのくらい必要だろう」

 おっと、新たな因習が生まれそうだ。

「冗談だよ。今回吉野瀬にいくのは卒論のフィールドワークのため。さすがに就職先の無心なんてしないさ」

「卒論ね。結局何てテーマにしたの?」

「十岐川の時渡りをテーマにまとめようかなと思ってる。もちろん、オカルトな内容ばかりは書けないけれど、なぜ時渡りの伝承が産まれたか、現代の人々にはどう息づいているか」

「閨狐とかバケネコは書けないもんね」

「うん。でもまあ時渡りだけでも、各地の類似する説話と比較したりして面白い研究になりそうだ」

「卒論のタイトルは決まった?」

「ある程度は。いま考えているのは‥」


「『廻る刻の河 ―吉野瀬村の時渡り伝説―』」

 

これにて本話は完結となります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

本小説をモチーフにした主題歌のDTMをユーチューブ上で公開しています。

https://youtu.be/GdOWkoo7P0c

よろしければお聞きください。


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