腹ごしらえと初依頼
図書館入口で入館料の半分を返してもらい、日光の下で再び「う〜〜ん!」と伸びをするユーラ。伸びた拍子に「く〜きゅるるるるるぅ…」と情けない音がユーラのお腹から響く。慌ててお腹をおさえ、辺りを見回すが幸いにも人通りはなかった。
よく考えればユーラは朝早くに出発してから何も食べていない。そして気づけば太陽は真上を通り過ぎたあたりにあり、つまり、お昼時を過ぎているという事だった。
ユーラが地上に来てから、思った以上にはじめてで興味深い体験が多く、空腹を忘れていたが流石に限界となったのだった。一応鞄に携帯食も入っているが、折角の地上、しかもそこそこ発展していそうな町である!どこかの店にはいるのもよし。屋台なんかで買ってもよし。ユーラは町の観光がてら、門から入ってすぐの人が多かった通りを散策する事にした。
ユーラが通りに出てみると朝と変わらず人が多い。お店は町を囲む壁側には露店が並び、向かい側は店舗が並んでいる。売っているものは小さいアクセサリーやバック、服、小物などの服飾系の店から、椅子、机、壺、絨毯など家具を扱っている店と様々だ。
中には民族的な意匠のものあり、ユーラは眺めて周りたい気持ちでいっぱいだったが、今はおさまらない、どころか今にもまたお腹がなりそうな程の空腹をどうにかする方が先だと食べ物の屋台が無いか探す。
すると、元日本人としての嗅覚が「あっちだ!」と強く引き寄せられる匂いを感じたユーラ。その感覚に従うままにフラフラと進んで行くと壁が途切れ、海の見える区域まで移動していた。砂浜では遊んでいる地元の子どもたちや観光客がおり、端の方には漁船が何台か停めてある。
この付近では朝とれた魚介類を売る市場とそれらを調理して販売する屋台が出ていた。屋台は網焼きから串焼き、汁物や鉄板料理など様々で、近くに設置してある飲食スペースはお昼時を過ぎた今でもそこそこ賑わっていた。そして、ユーラは見つけた。求めてやまなかった、
醤油を!!!
ユーラは海鮮は食べていたのだ。なにせ開発も何も無い異世界の海の中。取り放題の食べ放題である。しかし、そこは海の中。火での調理など出来るはずもなく。味付けも塩(海水)のみ。時おり教えて貰った魔法で茹でて食べたりもしていたが所詮水煮。ユーラは海鮮は何でも好きだったが刺し身or水煮(塩)だけだとさすがに飽きがくる。ユーラの日本人の魂は、魚の味を引き出してくれる醤油をなにより求めていたのだ。
さて、ここの屋台では醤油を使った貝の網焼きや魚の鉄板焼き、煮魚なども見えユーラのテンションはフルMAX、お腹の虫のテンションもフルMAX。幸い列になるほどの人はいなかったため、ユーラは気になる料理を片っ端から買い、飲食スペースのテーブルに並べていった。
「いっただっきまーす!」
久々の火を使った料理にうきうきのユーラ。早速、貝に醤油を垂らして焼いたものから口にする。
「んぅぅぅぅぅ〜〜〜〜♡」
とれたてぷりぷりの貝の身に、香ばしい醤油の香り。シンプルだが醤油を求めていたユーラにとっては最高の料理だった。次は追加料金を払って付けてもらったレモンらしき果物を搾って再び舌鼓をうつユーラ。さっぱりとした風味が加わり、ユーラの食欲をブーストしてくれる。
次は魚の串焼きに手を伸ばす。串焼きは絶妙な火加減で皮はパリパリ、中はジューシーに焼き上がっている。食べ飽きた塩で味付けされているが、焼いた事で水分が飛んで凝縮された魚の脂の甘みを引き立てており、とても美味しい。その他にも、味がシミシミの煮魚に、コトコト煮込まれて魚介の旨味が詰まったスープ。
「これが、プロの技か……!!」
と、久々の味、料理についつい大袈裟な反応になりつつユーラは夢中で食べ進める。美味しそうに食べるユーラにつられて周囲の人々もフラフラと店に吸い寄せられているがユーラは気づかなかった。
さて、空腹効果で少し多めに買ってしまった屋台料理たちをすっかり食べ終え、お腹いっぱいやる気も満タン!となったユーラ。
先程気になった家具やアクセサリーの店を行きよりはじっくりと眺めながらも、買い物や店に入ったりはせず、門まで戻ってきた。
「働かざるもの食うべからず!よね!」
そう、まだ家から持ってきたお金はあるとはいえ、ユーラはまだまだ地上を堪能したくなったのだ。そのためにはお金は必要不可欠。今日はもう午後なので時間がないが、明日からの依頼をスムーズにこなせるよう町の外の様子を確認しておこうとユーラ考えたのだった。
加えて、レーネから教えて貰った常時依頼の薬草採取についても掲示板を見てしっかりと確認してきたため、ついでに採取できれば今日のうちに少しは稼ぐ事ができる。
というわけで、ユーラは町を出るべく出門する人の列に並んだ。様子を見ていると、立っている兵士は何やら拳より一回り程小さいサイズの水晶を持っており、通る人と一言二言話すとカードをかざしたりそのまま通って行ったりしている。
ユーラは入る時にギルドカードの有無を聞かれた事を思い出し、一応カードを用意して列を進む。やがてユーラの番となり、兵士が話しかけてくる。
「町には今日中に戻りますか?」
「はい、その予定です?」
首を傾げながら応えたユーラに兵士は説明をしてくれた。
「出門してから閉門までの間に入門できる場合は入門料がいらないんです。だから、戻って来れる者で、ギルドカードを持っている人はカードを水晶にかざして登録してもらって戻った時にまた水晶にかざしてもらいその日の出門を確認しています。」
ギルドカードを持ってない人は兵士から出門カードをもらい、返却する仕組みだ。無くしたら罰金がある。ちなみにギルドカードも紛失した場合は再発行に銀貨1枚かかる。
ともかく、ユーラは冒険者のギルドカードを持っているため、水晶にかざすと微かに水晶が光ったような気がした。
「はい、登録完了です。どうぞ。」
兵士が外への道を示す。ユーラはぺこりとお辞儀をして通り過ぎ、朝ぶりとなる外へと足を踏み出した。




