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人魚冒険譚  作者: マコト
12/22

天ぷらたべたい…






地上生活2日目、朝。ユーラは依頼の確認と朝ごはんをもらいに冒険者ギルドへと向かう。昨日のサンドウィッチはしっかりと食べてきた。中身はトマトと白身魚を炒めたものが挟んであり、トマトはドライトマトで汁気がないため濃厚でパンがグジュグジュにならない工夫がうかがえた。香草の風味もよく、さっぱりと食べられるサンドウィッチだった。


と、朝ごはんは食べたので、今から貰う分はお昼ご飯にしようと思いながらユーラは冒険者ギルドの扉を開ける。


依頼は早い者勝ちのため、既に掲示板の前は人が大勢いた。少しでもいい依頼を受けるために早くきている人達だ。「出遅れちゃったか〜」とつぶやきつつも掲示板を眺めていく。掲示板は大きく、ランク毎にも分けられているため、大勢いる、といっても結構ばらけている。依頼書を取るにはかき分けて行かなければいけないが、眺める分には十分だった。


ユーラが受けられる依頼はFランクと常駐の依頼のみだ。ランクが上がると、そのランクと1個下のランクの依頼を受ける事が出来る。Fランクの依頼は最初のランクに相応しく町中の荷運びや猫探しなど、便利屋、といったふうな依頼ばかりだ。Fランクも受けられる討伐や採取系の依頼は常駐依頼のものだけだ。


町の事を知れそうでFランクの依頼も楽しそうだとユーラは思ったが、今回は討伐系の依頼をこなす予定なのだ。


というのも、FランクからEランクに上がるには依頼を10回以上達成する事と、討伐系の依頼を1回達成する事が条件だからだ。ユーラは昨日の時点で既に1束で1つの依頼として受理される薬草を10束納品しているため、討伐系の依頼を1回こなすだけでランクが上がる。Eランクになれば受けられる依頼も増えるため、ユーラは今日のうちにランクを上げておきたいのだ。


幸いにも(?)今日は出遅れてしまったため見ている間にも依頼はどんどん取られてしまったため、消去法的にも常駐依頼を受けるしかない。


依頼書をとる必要が無くなったユーラは酒場で昨日と同じようにランダムサンドウィッチを頼む。作られて間もないのかまだほのかに温かいサンドウィッチをバッグにいれ、森へと向かった。






森に着いたユーラはさっそく討伐対象の魔物を探すために息を吸い込…………もうとしたところで声をかけられた。



「おい、お前!」



「ヒャッ!」



ユーラは転生してからは人魚の末っ子として可愛がられ、怒鳴られたことなど無かった。久々に自身に向けられた大声に思わず肩が跳ねる。ユーラがおそるおそる振り返ると、ガラの悪い男3人が立っていた。


男達は怯んでいる様子のユーラを見てニヤニヤしながら先頭のリーダー格の男が話しだした。



「おまえ、新人だろ?親切な俺達が手ほどきしてやるからパーティに入れよ。」



どこからどう見ても親切そうには見えない胡散臭い誘いにユーラは思った。



(テ、テンプレだ……!!!)



固まったユーラを見て怖がってると思った男は更に気を良くして捲し立てる。



「こんな森の浅い所でちまちま依頼こなしてたって生活できねぇだろ?どこの良いとこの嬢ちゃんかしらねぇが、冒険者になるってことは家出でもしたか追い出されたか…だろ?かわいそうになぁ…。しょうがねぇからCランクの俺らが助けてやるよ。お前、剣も持ってねぇしソロなら魔術師だよな?俺らのパーティに入れば後ろから魔法打つだけでCランク依頼の報酬を分けてやるよ!出来高次第だがな!」



どう考えても搾取される未来しか見えない提案を聞いたユーラは「アハハ…」と苦笑いを浮かべる。断るついでに一応誤解を解こうと答える。



「えぇ〜っと………いったんパーティを組むのはいいかな〜って思ってまして……あと、私魔術師じゃなくて、声楽家なのでご期待には応えられないかな〜と………思います………」



おどおどしながらも断るユーラに「あぁん?!」と後ろの取り巻きが凄んでいたが、ユーラが声楽家だと知り、3人とも馬鹿にした表情になった。



「んだよ、バッファーかよ!……まぁだが、荷物持ち兼バッファーとしてなら入れてやるよ。分け前は少なくなるがな!」



ジロジロといやらしい目付きでユーラを眺め回し値踏みする男達。パーティに入ったらいろんな意味でロクな目に合わないだろう。



「いえ、ほんとに!間に合ってるので!大丈夫です!」



そう言いながらジリジリと後ずさるユーラ。逃げられると思ったリーダー格の男が舌打ちし、顎をくいっと動かすと後ろの男達がにやにやしながらユーラを囲もうとしはじめた。



(う〜んやばい…こんな時は…)

「逃げるが勝ち!」



そういいながらユーラは森の奥へと走り出した。「おい、待て!」と男達は追いかけてくるが、道中、闘唄(アタックハミング)で脚力を強化していたユーラに追いつけずどんどん遠ざかっていく。



(あれ、思ったより簡単にまけそう…?)



あっという間に小さくなる男達を見て安心するユーラ。



「あれくらいでCランクなら割と早くランクあげられそう……でも、あんまり早いと別の意味で目つけられそう……これもテンプレよね。……天ぷら食べたくなってきた…」




テンプレという言葉から天ぷらを連想し、遠くを見つめるユーラ………現実逃避である。彼らは冒険者らしい、という事はギルドで会うかもしれ無いということだ。また絡まれる可能性があるという事を考えるだけでユーラは憂鬱だった。


ユーラの昨日の夜にまだまだ地上を楽しむぞ!と意気込んだばかりの気持ちが少し萎む………が、同時にレーネさんや兵士さんギルドの職員さんファンタジーな種族らしき人達、昨日食べた海鮮料理やサンドウィッチが頭に思い浮かぶ。


せっかくファンタジーな世界に来たのだからもっといろんな種族の人と交流したり景色や特産品なんかを見たり……何よりまだまだおいしいものも食べたい。さっき思い浮かんだ天ぷらもたべたい!そもそもさっきの男達の行動は脅しに脅迫だし、ギルドに報告でもすれば何とかしてくれるでしょ!と、本来の楽観的な考えでユーラは気を取り直した。


男達を完全にまいて気を取り直したところで、ユーラは今日の目的の討伐対象を探し始めたのだった。

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