4 道脇楓 不可思議な父
「交換留学?」
私が、尋ねると先生は大きく頷いた。どうやら、このパンフレットは成績上位者に配っているらしい。交換留学は、鳳海学園の姉妹校であるアメリカにある高校とで行われているらしく、その期間は三か月から三年――その場合は姉妹校の大学に入る――に亙るものまであるらしい。
「こういう選択肢もあることを知ってほしいと思ってね」
今日、進路希望調査票が配られたからだろう。先生は、そう言って、退出を促した。
■ □ ■
留学かあ。全く考えもしなかった選択肢だ。もし、海外にいけば、私にもなりたいものが見つかるだろうか。いや、どこにいったって、自分から探そうとしないと見つからないよなぁ。と思いながら本邸に帰ると、お父様に呼び出された。お祖父様に呼び出されることは、数あれど、お父様から呼び出されることは珍しい。
私が、疑問に思いながら別邸にいくと、書斎でお父様が私を待っていた。
「…………」
無言が、気まずい。お姉様と桃の前以外では『氷の帝王』とまで呼ばれているお父様と無言で見つめあう以上に気まずいことはない。普段、親子の会話というものが全くないので、こうして呼び出されたところで何を話せばいいのか、さっぱりわからない。というか、お父様も呼び出したんだから、何か用件があるのだろうし、さっさと話してくれないかな。私が現実逃避に羊を数え始め、220匹数え終えたところで、ようやくお父様は口を開いた。
「淳君とは、」
「はい」
「淳君とは、上手くいっているのか」
「はい、順調です」
淳お兄様とはケンカもしていないし、別段問題となるようなことは起こっていない。
「……そうか」
そういうと、またお父様は黙り込んでしまった。? わざわざ呼び出したのは、淳お兄様との仲を聞くためだったのか? だったら、もう退出していいだろうか。そう思い、退出しようとすると、お父様から呼び止められた。
「なんでしょう?」
「……学校は、どうだ」
「今日進路希望調査票が配られました」
「進路は、もう決まっているのか?」
「いえ、まだです」
進路のしの字も決まっていない。私が、そういうと、お父様はまた、そうか……と言って、黙り込んでしまった。また私が退出しようとすると、質問が続き、淡々とそれに答えた。そのうち、質問のネタが尽きたのか、お父様は深くため息をついたあと、退出を許可した。
まさか、お父様に限って私に興味を持ったわけがないし。おそらく、娘の素行調査だろうな、と納得して、別邸を後にした。




