3 道脇楓 見えない将来
2年生になると、理系と文系でクラス分けがあり、同じ理系の前川、赤田とは今年も同じクラスだった。美紀ちゃんと遼子ちゃんは、文系なので違うクラスだ、残念。
教室へいくと、前川はぐったりと机につっぷしていた。
「どうしたんです? 元気がないですね」
私が話しかけると前川はがばり、と体をおこし、大声でわめいた。
「元気なわけがあるか! お前の妹はどうなってるんだ!」
なるほど、桃についてのことらしい。前川と桃は去年の11月に婚約を結んでからというもの、しょっちゅう遠出――桃は頑なにただの遠出といいはるが、その内実はデート――を繰り返していた。
「何で北海道に行った翌日に今度は沖縄に行きましょうとか言い出すんだ。真逆だぞ! 頭おかしいんじゃないか」
あらあらまぁまぁ。確かに、私も春休みにお土産として、シークワーサーゼリーと熊の木彫りを貰ったが。あれは、そういうことだったらしい。
「羨ましいですね」
素直な感想を述べると、前川はきっと睨みつけてきた。
「羨ましいわけあるか! 付き合わされるこっちの身にもなってみろ」
「羨ましいですよ。私、桃にそんな風に甘えられたことないですから」
桃はお姉様を一種の神として崇め奉っているし、私に至っては嫌われている。そんな私たちに桃が甘えるはずもない。
私が、そういうと前川は一瞬ぽかん、とした後、あれは甘えなのか……? それならまぁ、いや、あれはおかしい。とぶつぶつと考え込んでしまった。
桃が突然、前川と婚約すると言い出した時はどうなるかと思ったが、何だかんだ言って、上手くやっているようで安心する。
私とは違い、運命で結ばれた二人なのだ。きっと大丈夫だろう。そう、納得したところでホームルーム開始のチャイムが鳴った。
■ □ ■
「どうしよう、これ」
今日早速貰ったのは、進路調査票だ。第三希望まで、書けることになっている。テキトーな理由で理系を選んでしまった私にはこれほど困ることはない。国立大学をランダムで選んで書くことも考えたが、残念ながら後日進路希望調査票を基に面談が行われるのだ。なぜ、この大学に? と聞かれたときにダーツで決めました。なんて、言えるはずもない。
以前は、道脇とは関係ない会社に就職しようと思っていたけれど、もし、道脇の中に私の目指すものがあるのなら、それもいいのかもしれない、と最近思うようになった。もちろん、道脇は身内だからという理由だけで簡単に入れるほど甘くはない。
ちなみに前川と赤田に将来どうするのかと聞いたら、はっきりとした大学名とそこでどのようなことを学び、大学卒業後どうするのか、ということまできっちりと話された。
高校2年生にもなって、全く進路と言うものが決まっていないのはもしかしたら、私だけなのでは……? と焦りを感じてくる。
目標として、淳お兄様を支えることができる人間になりたい。淳お兄様と対等になりたい、ということは変わっていないけれど、もっと具体的に私がなりたいものって何だろう。
教室で悩んでいると、赤田と前川と共に先生から呼び出された。
はい、これという言葉と共にパンフレットが差し出される。
パンフレットに書かれていた文字は
「交換留学?」




