第6話【 銀河団総会 】
第6部
星々の形成が、
まだ激しく続いている段階にあり、
秩序だった文明もあれば、
混沌の中で、まだ自分たちの形を
見出せずにいる集団も多いという
銀河団CL J1001+0220……。
まだ生まれて間もない、
若く荒々しい銀河の集合体を
担当するジュエダンは、……。
軌道安定化計画は、
ジュエダンの後押しを受け、
着実に進んでいた。
数ヶ月にわたる
小天体の再配置作業を経て、
かつて
「統治不能」と烙印を押された銀河群は、
ようやく安定した軌道を得つつあった。
作業に携わった技師たちの顔には、
これまでの労苦を物語る疲労と、
確かな達成感が同居していた。
「監督官殿。……
居住区の建設、
予定より早く進んでおります」
技師団長の報告に、
ジュエダンは静かに頷いた。
「よくやった。……
だが、これで満足はできん。
この銀河団には、
まだ数えきれぬ銀河が、
それぞれの課題を抱えたままだ」
ジュエダンは、
一つの成果に安住することなく、
すぐさま次の一手へと動いていた。
彼女が着手したのは、
銀河団CL J1001+0220に属する
すべての銀河の首長を、
初めて一堂に集める、
「銀河団総会」の開催だった。
「これまで、
銀河ごとに個別に
向き合ってきました。……ですが、
この規模の銀河団を支えるには、
それでは限界があります」
聖宮に報告を上げると、
アーロンは静かに頷いた。
「良い判断だ。……
して、総会では、何を話し合う?」
「銀河団全体で共有すべき、
最低限の秩序。そして、
銀河同士が
互いに助け合う仕組みです。……
個々の銀河だけでは解決できない
課題が、
これからも必ず出てくるはずですから」
総会の当日、
聖宮の一角に設けられた
巨大な会議場には、
数百に及ぶ銀河の首長たちが、
それぞれの
文化と装いを纏って集っていた。
かつて
「見込みなし」と評された
銀河の代表もまた、
堂々とその席に着いている。
会場に満ちるざわめきは、
これまでの合議とは比較にならない、
圧倒的な規模を物語っていた。
「本日、
皆様にお集まりいただいたのは、
この銀河団という一つの家を、
共に支える仕組みを築くためです」
ジュエダンの開会の言葉に、
会議場は静かな緊張に包まれた。
ある銀河の首長が、慎重に問う。
「監督官殿は、この銀河団を、
一つの国として統べるおつもりか?」
「いいえ」
ジュエダンは、はっきりと首を振った。
「それぞれの銀河の在り方を、
奪うつもりはありません。……
ですが、資源の融通、
災害時の相互支援、そして、
この銀河団全体を脅かす
脅威への備え。
それらは、
一つの銀河だけでは支えきれません」
別の首長が、身を乗り出した。
「相互支援、
というのは、具体的には?」
「例えば、
私が携わった軌道安定化の技術も、
この場で共有します。……
同じ問題を抱える銀河があれば、
一からやり直す必要はありません」
会議場に、静かなどよめきが広がった。
技術を独占せず分かち合うという発想は、
これまでこの銀河団には、
なかったものだった。
年配の首長の一人が、感慨深げに呟いた。
「……我らの銀河も、
かつて似た苦労をした。
あの時、こうした場があれば、
どれほど救われたことか。……」
法務を担当する補佐官が、
慎重に付け加えた。
「この仕組みを維持するには、
各銀河からの拠出と、
共通の運営組織が必要になります。……
そのための評議会を、
この場で
正式に立ち上げたいと考えています」
議論は、その日一日では終わらなかった。
だが、閉会の時には、すべての首長が、
次回の総会開催に同意していた。
誰一人として途中退席することなく、
最後まで議論に留まったこと自体が、
この銀河団にとって、
初めての経験だった。
一方、レグナは、
聖国の版図拡大の討伐を続けながら、
この総会の様子を、
遠くから見守っていた。
討伐の合間、僅かな休息の時間を使い、
通信越しにその報告に目を通す。
「銀河団全体をまとめる会議、か。……
ジュエダンらしい、
地に足のついたやり方だ」
聖宮では、アーロンが、
この報告に静かに目を細めていた。
「見捨てられかけた者が、
今度は、皆を繋ぐ者になったか。……」
編纂生の一人が、感慨深げに呟いた。
「聖王様。……
この巡り合わせ、
まるで一つの物語のようですね」
「物語で終わらせるつもりはない。……
この総会が、
実際にこの銀河団を
支え続けられるかどうか、
これからが本番だ」
セレスティアが、静かに微笑んだ。
「聖国ルネサンスにも、
この総会の様子を、
詳しく記録させましょう。……
いずれ、
他の銀河団の道しるべになるはずです」
「ああ。……
吾郎の銀河団にも、
シルヴィアの銀河団にも、
きっと参考になる」
アーロンは、
静かに窓の外、
遠い銀河団の方角へと目を細めた。
それぞれの監督官が、
それぞれのやり方で
積み上げてきたものが、
少しずつ、
互いに響き合い始めていることを、
彼は確かに感じ取っていた。
本日 19:30 に投稿します。




