第三幕 第十二章 【 新たなる水平線と、支配の証明 】
俺たちの要塞。アルカディアの空に浮かぶ飛空艇の甲板で、俺は地図を広げていた。
管理システムという「枷」が外れた今、この世界に広がるのは、もはや神の意図しない無法地帯だ。力を持つ者が、力のない者を食らい、奪い合う。かつて俺が追放された王国のように、脆く、醜い構造が、そこかしこに放置されている。
「アーロン様。大陸の北東にある『聖王国』が、我が国の進出を快く思っていないようです」
忠臣ルナの報告に、俺は冷ややかに笑う。
聖王国。そこはかつてのシステム管理者の意志を継ぐと自称する、残党たちの隠れ家だ。彼らはまだ、「ルール」という名の古い支配に縋りついている。
「『ルール』を守るだと?! 笑わせるな」
俺は飛空艇の舵を、聖王国の首都へと切った。
管理者が消え去った今、この世界に存在する「ルール」とは、俺が強者として示す「命令」そのものだ。それを守らぬ者は、俺の国アルカディアの敵として、その存在ごと『支配』の下に組み込む。
「ルールとは、支配のことなのだ。俺がこれから作るルールが、この世界の新しい『摂理』になる」
俺の【全属性変換】が、空気を震わせる。
それは魔力ではない。絶対的な強制力としての「王の権能」だ。
飛空艇が聖王国の城郭上空に影を落とす。
地上では、聖王国の騎士たちが剣を掲げ、威嚇してくるのが見える。彼らに思い知らせてやる。支配とは言葉の契約ではなく、抗えぬ力の行使であることを。
「全兵装、変換対象は『敵軍の武装』だ。武器を『砂』へ、プライドを『塵』へ変換しろ」
一言の命令で、城壁に並ぶ騎士たちの武装が、音もなく崩れ去る。
支配者とは、慈悲を与える者ではない。秩序そのものを書き換え、すべてを自分の手のひらの上に支配する者のことだ。
聖王国の王が震えながら、玉座で俺を見上げる。
俺は玉座の影に深く腰掛け、王冠も持たぬまま、冷徹な一言を放った。
「今日からここも、俺の国の一部だ。異論はあるか?」
この瞬間、支配の連鎖が始まった。世界を塗り替える、真の覇道の幕開けだ。
(*)「竜頸の要塞【ゲシュム】」、連載を始めました。
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