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第5部 第7話【 JADES-GS-z13-0 】

【 宇宙小話 】第11話

「火星に住む日——第二の地球を目指して」


昔から

SF映画の舞台になってきた「火星」。


いま人類は、

本当に火星へ移住するための計画を

本気で進めています。


アメリカのNASAや民間企業が主導し、

2030年代には

人類を火星へ送り込もうと

世界中で研究が行われています。


しかし、

火星は人間にとって

決して優しい環境ではありません。


空気のほとんどは二酸化炭素で、

平均気温はマイナス60度。


強力な宇宙線(放射線)が降り注ぎ、

そのままでは

息をすることすらできません。


そこで考えられているのが、

火星を人間が住める環境に変える

「テラフォーミング(地球化)」

という作戦です。


火星の極冠(氷の氷原)を温めて溶かし、

二酸化炭素を噴出させて

温室効果を起こすことで、

星全体を温めて

大気を濃くしようという

壮大なアイデアです。


さらに、

火星の土から酸素や水を作り出し、

地下に巨大なドーム状の街をつくる

構想も進んでいます。


かつて数億年前の火星には、

地球のように豊かな海や川が

存在していたと考えられています。


失われた緑の星をもう一度呼び覚まし、

人類が

「2つの惑星に住む種族」になる未来は、

すぐそこまで

迫っているのかもしれません。

「JADES-GS-z13-0」。


判明している中でも

屈指の遠さを誇るこの銀河もまた、

レグナの覇道の後、

静かに自治の道を歩み始めていた。


だが、この銀河が抱えた問題は、

資源の対立でも、

統治哲学の是非でもなかった。


銀河そのものの

途方もない広がりが生んだ、

情報の「遅れ」そのものが、

問題の根だったのである。


数千億の星々が織りなすこの銀河は、

あまりに広大であるがゆえに、

一つの決定が全域に行き渡るまでの間に、

まるで別の時代を迎えてしまうほどの

隔たりを抱えていた。


それは、

これまで出会ったどの銀河とも異なる、

時間そのものが生む理不尽だった。


この銀河の評議会が中枢(ちゅうすう)で下した決定は、

光の速さをもってしても、

辺縁の星系群に届くまでに、

数世代分の歳月を要した。


結果、辺縁の星系は、すでに撤回された

古い決定に従って行動し、

中枢の星系は、辺縁の実情を

まるで反映しない法を、

延々と発し続けるという、

奇妙な齟齬(そご)が積み重なっていた。


中枢にとっては当然の常識が、

辺縁にとっては、

遠い過去の遺物でしかない――

そんな捻(ねじ)れが、銀河のあちこちで

静かに広がっていたのである。


「中枢の法が、

 我らの現実に追いついたことなど、

 一度もない」


辺縁の星系を治める長老の一人が、

着任したばかりの監督官に、そう零(こぼ)した。


その声には、怒りというより、

長年の諦(あきら)めにも似た疲れが滲(にじ)んでいた。


「法を破っているつもりはないのです。

 ……ただ、我らが従っている法が、

 中枢にとってはすでに

『過去の遺物』だというだけで」


監督官は、その言葉に静かに頷(うなず)いた。


この銀河の問題は、

誰かの悪意でも怠慢でもない。


ただ、あまりに広大すぎる

銀河の姿そのものが、

単一の中枢による統治という発想と、

根本的に噛み合っていなかったのだ。


中枢が最善を尽くして法を定めても、

それが辺縁に届く頃には、

辺縁の現実そのものが、

幾世代も先へと進んでしまっている。


「……中枢が一つの法を定め、

 それを隅々まで行き渡らせるという

 仕組み自体が、この銀河には

 合わないのかもしれません」


監督官は、

星図に描かれた無数の光の点――

情報が伝わるまでの遅延を示す同心円を、

静かに見つめた。


中枢から遠ざかるほど、

その円は幾重にも重なり、

まるで銀河そのものが、

幾つもの異なる「時間」を

同時に生きているかのようだった。


星図の最も外側では、円と円の間隔が、

もはや一つの文明の寿命に匹敵するほど

広がっている。


「ならば、どうすればよいと?」


長老の問いに、監督官はしばし沈黙し、

そして静かに口を開いた。


窓の外に広がる、途方もなく遠い

星々の光を見つめながら。


「中枢の法を絶対とするのではなく、

 共通の理念だけを共有し、

 細部の判断は、

 それぞれの星系に委ねる。……

 そういう仕組みを、この銀河には

 築くべきなのかもしれません」


その提案は、

これまでのどの銀河の解決策とも異なる、

根本からの発想の転換を

求めるものだった。


法によって統(す)べるのではなく、

理念によって緩(ゆる)やかに結びつく――

それは、この銀河の広大さそのものを、

弱点ではなく前提として

受け入れる考え方だった。


聖宮でこの報告を受けたレグナは、

静かに眉を寄せた。


「中枢の法が届く頃には、

 もう別の時代になっているか。……

 これは、力でも、対話でも、

 直接どうにかできる話ではない。……」


アーロンもまた、

静かにその報告書を読みながら頷(うなず)いた。


「距離そのものが生む理不尽か。……

 厄介だが、これもまた、

 この庭園が抱える一つの現実なのだろう」


レグナは静かに、

暗礁宙域での戦いとは

まるで異なる種類の難題を前に、

自分の中にある

「力で解決する」という発想そのものを、

一度、静かに脇へ置いた。


「監督官は、

 どう答えを出すつもりでしょうか?」


レグナの問いに、

アーロンはしばし考え、静かに答えた。


「恐らく、答えは一つではあるまい。……

 この銀河にしか出せない答えを、

 あの監督官が見つけ出すのを、

 俺たちは

 静かに見守るしかないのだろうな」

本日 19:20 に投稿します。


【 宇宙小話 】第12話

「太陽の寿命と地球の未来——

 50億年後の引っ越し計画」


私たちが

毎日あたたかい光を浴びている「太陽」。


ずっと変わらず

輝き続けているように見えますが、

実は太陽にも

人間と同じように「寿命」があります。


太陽は

誕生してから約46億年が経っており、

およそ

「人生の折り返し地点」を迎えています。


あと50億年ほどたつと、

太陽は

中心部にある燃料(水素)を使い果たし、

自らを

どんどん膨らませて巨大化していきます。


その大きさは地球の軌道近くにまで達し、

やがて地球の海はすべて蒸発して、

赤く熱い灼熱の星になってしまうのです。


「地球が住めなくなったらどうするの?」

と心配になるかもしれません。


しかし、50億年という時間は

人類にとって想像もつかないほど

途方もない未来です。


その頃の人類は、

火星よりもさらに遠くにある

木星や土星の衛星、

あるいは太陽系の外にある

「第二の地球」へと旅立つ技術を

手にしているかもしれません。


星が生まれ、輝き、

やがて終焉(しゅうえん)を迎えるように、

地球もいつかはその役目を終えます。


しかし、

夜空の彼方へ新天地を求めて飛び立つ

人類の冒険は、

太陽が燃え尽きたあとも

決して終わらないのです。

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