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第5部 第6話【 JADES-GS-z14-0(下)】

【 宇宙小話 9 】

「宇宙ゴミ(デブリ)——

 夜空の掃除屋さん」


SFアニメのような「宇宙旅行」が

現実になりつつある今、

地球のまわりで

深刻な問題になっているのが

「宇宙ゴミ(スペースデブリ)」です。


使われなくなった古い人工衛星や、

ロケットの破片などが、

地球のまわりを

すさまじいスピードで飛んでいます。


その速さは、なんと

「1秒間に約8キロメートル」。


鉄砲の弾(たま)よりも遥(はる)かに速く、

たった

直径1センチの小さなネジひとつでも、

動いている人工衛星にぶつかれば

宇宙船を粉々にしてしまうほどの

衝撃があります。


もしゴミ同士がぶつかり合って

細かく砕ければ、

さらにゴミが増えて、

将来人間が宇宙へ行けなくなってしまう

かもしれません。


そこで今、

世界の宇宙機関や

日本のベンチャー企業が

「宇宙の掃除」に挑んでいます。


巨大な網でゴミを捕まえたり、

レーザーを当てて軌道を変えたり、

磁石でくっつけて地球の大気圏に落とし、

摩擦の熱で燃やし尽くしてしまう

計画です。


私たちが部屋を掃除するように、

宇宙に出ていく人類には

「宇宙をきれいに保つ責任」があります。


未来の宇宙飛行士たちが

安全に旅立つために、

今日も夜空の裏側で、

命がけの掃除大作戦が続けられています。

計画が始まってから、幾星霜が過ぎた。


この規模の銀河にとって、

それは決して長い歳月ではなかったが、

当事者たちにとっては、

幾世代分の忍耐と積み重ねを要する

日々だった。


段階的な移譲は、

当初の想定通りには

進まない場面もあったが、

それでも着実に、この銀河の哨戒網は、

聖国の技術者から

この銀河の民自身の手へと、

少しずつ引き継がれていった。


星図に記(しる)された幾つもの節目は、

一つ、また一つと、

確かに塗り潰(つぶ)されていった。


そして、ある日。銀河の外縁に、

未確認の艦影が現れた。


隣接する未征服の勢力が、

統合されたばかりのこの銀河の守りを、

試すように接近してきたのである。


長らく

張り詰めた沈黙を保っていた哨戒網が、

初めて、

実戦の緊張に晒(さら)される瞬間だった。


この一件の成り行きが、

これまで積み重ねてきた計画の真価を、

否応(いやおう)なく試すことになる。


「哨戒網、作動しています! ……

 座標を割り出しました」


緊迫した声が、指令室に響き渡った。


報告を上げたのは、

かつて完全独立を叫んでいた青年指導者

その人だった。


今では、この銀河独自の哨戒部隊を

率いる立場に就いている。


彼の声には、緊張と共に、

確かな自信が滲んでいた。


かつて

演説の場で聴衆を鼓舞していた声は、

今や部下たちを冷静に導く、

指揮官の声へと変わっていた。


「聖国の艦隊派遣を要請しますか?」


部下の問いに、彼は一瞬迷い、

そして静かに首を振った。


「いや。……この程度の接近なら、

 我らの手で対処できる。

 監督官殿にも、

 まずはその旨(むね)を報告しよう」


その判断には、

かつての反発心からくる意地ではなく、

積み重ねてきた訓練の

確かな裏付けがあった。


彼の判断のもと、

この銀河独自の防衛陣が、

未確認艦を穏やかに、

しかし確実に牽制(けんせい)し、

深追いすることなく

撤退させることに成功した。


血を流すことのない、静かな決着だった。


報告を受けた監督官は、静かに目を細めた。


「見事な判断でした。……

 聖国を頼ることも、

 時には正しい選択です。

 ですが、

 今回、あなた方自身の手で判断し、

 対処できたことこそが、

 何よりの成果です」


監督官の声には、

これまで積み重ねてきた時間への、

確かな手応えが滲んでいた。


「……あなたの言った通りだったな。

 付け焼き刃では、こうはいかなかった」


その声には、かつての反発とはまた違う、

確かな敬意が滲んでいた。


青年指導者は、

かつての自分の言葉を思い返すように、

静かに呟(つぶ)いた。


あの日、

星図を前に感じた長さへの落胆は、

今、確かな手応えへと姿を変えていた。


監督という仕組みへの不信は、

今も完全に消えたわけではない。


だが、それは今、敵意ではなく、

互いを高め合うための緊張感へと、

静かに姿を変えていた。


聖宮でこの顛末(てんまつ)を聞いたレグナは、

静かに頷いた。


かつて

自ら理不尽を刈り取っていた頃には

想像もしなかった形の勝利が、

遠い銀河から届けられていた。


「監督の是非を問われた銀河が、

 自らの手で最初の答えを出したか。……

 良い銀河だ」


アーロンもまた、静かに目を細めていた。


「力による統治から、自治へ。

 そして、自治の意味を問い直し、

 共に歩む道を選ぶ。……

 この銀河が辿(たど)った道のりもまた、

 この庭園の一つの理想の形だろう」


セレスティアも、

静かにその報告書へ目を通しながら、

微笑みを浮かべた。


「監督という仕組みそのものが、

 いつか要らなくなる日が来るとしても、

 それは決して、

 この庭園の敗北ではないのですね。……

 むしろ、

 望んだ通りの実りなのでしょう」


レグナは静かに頷(うなず)いた。


刈り取る覇道と、育てる覇道――

そのどちらもが、

この庭園を支える確かな両輪なのだと、

改めて胸に刻みながら。


JADES-GS-z14-0の自治は、

こうして最初の試練を乗り越え、

確かな一歩を刻んだのだった。


この銀河の物語は、

まだこれからも続いていく。


だが、少なくとも今、対立の代わりに、

互いを高め合う緊張感が、

確かにこの銀河に根付いていた。

明朝 7:30 に投稿します。


【 宇宙小話 】第10話

「はやぶさ2が持ち帰った『生命の種』」


「私たちはどこから来たのか?」という

大きな謎を解くヒントが、

地球からはるか離れた

小惑星「リュウグウ」にありました。


それを命がけで持ち帰ったのが、

日本の宇宙探査機「はやぶさ2」です。


2020年、はやぶさ2は

地球から約3億キロメートル離れた

リュウグウに着陸し、

その表面と「カプセル」の中に、

小惑星の砂や石を大切に採取して

地球へ持ち帰ることに成功しました。


科学者たちがその砂を詳しく調べたところ、

なんと「アミノ酸」と呼ばれる物質が

いくつも見つかりました。


アミノ酸は、私たちの皮膚や筋肉、

血液をつくる「タンパク質」のもとになる、

いわば生命の材料(ブロック)です。


地球に生命が生まれる前、こうした

宇宙からの隕石や小惑星の衝突によって

「生命の種」が

地球へ運ばれてきたという説が、

一気に現実味を帯びてきたのです。


もしかすると、

遠い昔に宇宙から降ってきた

小さな星の欠片(かけら)が、

巡(めぐ)り巡って

今のあなたや私を

つくっているのかもしれません。


夜空に浮かぶ小惑星は、

遠い宇宙の出来事ではなく、

私たちの「遠い親戚」のような存在

なのかもしれないのです。

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