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第4部 第7話【 変換の理、境界の盾、興される刻 】

レグナ、【全属性変換】を振るう


帝国南西の辺土「涸れ谷ザラン」は、

かつて

豊かな水源を誇った地だったが、

数十年前の異変により、

川という川がことごとく

涸れ果てていた。


作物は育たず、

井戸の底には乾いた砂だけが

積もっている。

人々は水を求めて隣国との

小競り合いを繰り返し、

荒んだ空気が谷全体を覆っていた。


レグナがその谷に降り立った時、

真っ先に目に入ったのは、

涸れた川底に横たわる、

痩せ細った子供の姿だった。


「……こんな地に、これ以上

 一人の犠牲者も出させはしない」


彼は静かに膝をつき、

乾ききった大地に両手を触れさせる。

掌の中心に、

黄金の光が渦を巻き始めた。


【全属性変換】――『無』に等しい

涸(か)れた大地を、

『水属性』の理へと書き換える。


ピキピキピキ―――、という

乾いた音とともに、

地中深くに眠っていた、

あるはずのない水脈が、

まるで

最初からそこにあったかのように

滾々(こんこん)と湧き出し始めた。


涸れていた川床に、

澄み切った清流が瞬く間に満ちていく。

乾いた空気そのものも、

レグナの手により

潤いを帯びた心地よい風へと変わり、

谷全体を優しく包み込んでいった。


「な……、水が……!

  涸れ谷に、水が戻ったぞ……!」


谷の住人たちが、

次々と川辺に駆け寄り、

両手で水を掬っては歓声を上げる。


争いの火種だった水源は、

今や

誰もが分け合える豊かな恵みへと

姿を変えていた。


「奪い合う理由が消えれば、

 争いも自然と消える。……

 これもまた、俺たちの覇道だ」


レグナは静かに立ち上がり、

生き返った谷を見渡しながら、

次なる理不尽の気配を求めて

歩みを進めた。



【 不審な影が現れたとの報せ 】


拡大を続ける聖国の版図の縁で、

シルヴィアと吾郎は

今日も哨戒任務にあたっていた。

新たに加わった涸れ谷ザラン周辺の

国境線に、

不審な影が現れたとの報せが届く。


「隣国の斥候かしら?」

「様子を見よう。……

 いきなり攻撃はしない。

 まずは話し合いだ」


吾郎の判断で、

二人は威圧ではなく対話を選んだ。


斥候たちは、

水を求めて彷徨っていただけの

困窮した旅人と判明し、

シルヴィアの計らいで、

安全に聖国内へと導かれていった。


拡大する境界線を、力だけでなく、

見極めの目で守る二人の姿があった。



【『聖国ルネサンス』を興す 】


聖宮の広間に、

聖王アーロンの声が朗々と響いた。


「芸術による魂の癒しは、

 確かな実を結び始めている。……

 ならば、次はその歓びを、

 この聖国全土へと

 広げようではないか。

 今日ここに、

『聖国ルネサンス』を興す」


集った芸術家、学者、職人たちが

どよめく。

アーロンの構想は、単なる一時の

癒しに留まらず、

聖国全域の文化と知の水準そのものを

引き上げる、壮大な刷新であった。


「これより十を超える段階を経て、

 この聖国を、

 次元の彼方にまで知られる

 文化の都へと育て上げる。……

 その第一歩を、

 共に踏み出そうではないか」


聖宮に集う人々の目に、

新たな時代への

静かな高揚が宿り始めていた。

明朝 7:30 に投稿します。

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