第4部 第6話【 拡がる版図、護られる境界、灯される芸術 】
【 レグナ、ITSで聖国拡大 】
覇王レグナは、ITSの艦橋に立ち、
次元の狭間の先に広がる
未帰属の辺土を見据えていた。
アーロン聖国の版図はすでに広大
だが、
その外縁には、いまだどの勢力にも
属さぬ
荒れた小国群が点在している。
「シルヴィア、次の目的地は」
「北西の小国連合、通称『霧の谷』
です。
互いに争い、民が疲弊している
との
報告があります」
汽笛が高らかに鳴り響き、
ITSは
次元の狭間を裂いて霧の谷へと
降り立つ。
争い合う諸侯の前に姿を現した
レグナは、
静かに、しかし絶対の重みを持って
告げた。
「争いに疲れた者たちよ。……
聖王アーロン様の御名の下、
この地に真の安寧をもたらそう。
抗う者は排すが、望む者には、
この聖国の民となる道を開く」
黄金の光が谷を満たし、
荒廃していた土地は瞬く間に
肥沃な大地へと変わっていく。
諸侯たちはこぞって膝をつき、
霧の谷は
新たに聖国の版図へと組み込まれて
いった。
【 シルヴィアと吾郎、辺境警備 】
一方、アスガルドの艦橋では、
副艦長・吾郎が指揮を執り、
月影の巫女シルヴィアと共に、
新たに編入されたばかりの
国境地帯の警備にあたっていた。
急速に広がる聖国の版図は、
それだけ
守るべき境界線も長くなる。
「吾郎、東の哨戒線に異常な
魔力反応があります」
シルヴィアの報告に、
吾郎はすぐさま艦を旋回させた。
かつて
臆病だった少年の面影はもう薄く、
彼の指示は
的確に部下たちへと伝わっていく。
「賊が国境の隙を狙ったんだろう。
……行くぞ、シルヴィア」
二人はアスガルドから降り立ち、
国境を脅かす
小規模な盗賊団と対峙する。
吾郎の操る風の魔法と
シルヴィアの
月影の加護が組み合わさり、
賊たちは
またたく間に無力化された。
「この境界線がある限り、
内側の民は安心して暮らせる。
……俺たちの役目は地味だけど、
大事な仕事だ」
吾郎の言葉に、シルヴィアは
静かに微笑んで頷いた。
拡大する版図の裏で、
二人の見えざる盾が、
聖国の平和を
静かに支え続けている。
【 聖王アーロン、芸術振興 】
聖宮の劇場では、この日、
初めての公演が催されていた。
かつて
色を失っていた少女の絵が壁を飾り、
裏切りに傷ついた青年の奏でる旋律が、
静かに広間を満たしていく。
「悪くない響きだ」
アーロンは玉座から離れ、
観客の一人として
その舞台を見守っていた。
芸術に触れる人々の顔には、
もはや影の色は薄い。
聖王の力で作られたのは
器に過ぎず、
そこに満ちる歓びだけは、
確かに人々自身のものだった。
本日 19:30 に投稿します。




