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第4部 第1話【 聖王と覇王、新たなる誓い 】(下)

聖王アーロンの掲げる「聖国ルネサンス」は、

傷ついた万民の魂を

根底からいやす大いなる事業として、

いま静かに

その第一歩を踏み出したのだった。

【 覇王レグナと多元宇宙への出航 】


一方、レグナは父へ一礼をささげると、

確かな足取りで玉座の間を後にした。


黄金の回廊を通り抜け、

星見塔とつながる

巨大な大格納庫へ足を踏み入れる。


そこには、

次元の狭間はざまを切り裂く二隻の巨艦が、

新たな主の訪れを待っていた。


ひとつは、

かつて父アーロンが艦長として

幾多の星々を威徳で従えてきた

超弩級旗艦『アスガルド』。


その金の船体は、

重厚な威厳を放ちながら

静かに鼓動している。


そしてもうひとつ――

空間の歪みを力任せに引き裂きながら

静止しているのは、

重力方程式を完全に無視した超時空列車

ITSインターバーステレポーテーションシステム』だ。


車輪が一回転するたびに、

次元の狭間はざまから

かすかな汽笛と石炭の燃える匂いがあふれ出し、

星見塔の霊的な霧を切り裂いていく。


ITSが吐き出す煙の向こうには、

標準宇宙の物理法則すら通用しない、

無数の並行宇宙パラレルバース多元宇宙マルチバース

星雲が透けて見えていた。


「アスガルド、ITSともに、

そなたが艦長となれ。


アスガルドの副艦長には吾郎、

ITSの副艦長にはシルヴィアを付けよ」


アーロンの言葉に応えるように、

二人の側近が歩み出てくる。


プラチナブロンドの髪をなびかせた

吾郎は、

引き締まった表情で力強く敬礼した。


「レグナ様……いえ、覇王レグナ艦長!

俺の命、このアスガルドの盾とし、

右腕として捧げます!」


月影の巫女・シルヴィアもまた、

神秘的な瞳を輝かせ、気高く頭を垂れる。


「ITSの導きは、

このシルヴィアにお任せを。

次元の狭間に揺れる声も、

マルチバースの深淵も、

すべて覇王様の拓く道のために

解き明かしてみせます」


「頼もしい限りだ、吾郎、シルヴィア。

二人ともよろしく頼む」


レグナが頷くと、二隻の艦から

共鳴するように黄金の光が溢れ出した。


レグナはアスガルドの艦橋ブリッジへと

足を踏み入れ、

中央に鎮座する艦長席へと

深々と腰を下ろす。


大きな天窓の向こうには、

父が護る帝都の輝きと、

その外側に広がる

無限の虚空がどこまでも続いていた。


「我らが向かうのは、

単なる隣国や大陸ではない。

……この標準宇宙の壁を超えた先、

幾重にも重なる『並行宇宙』、

そして未知の『多元宇宙』だ」


レグナの掌から放たれた光が、

コンソール全域へと広がり、

艦の全システムを書き換えていく。


「父上は帝都にて万民の魂を救う。

ならば我ら艦隊の使命はひとつ。

多元宇宙の果てまで行き届かぬ

理不尽の闇を粉砕し、

父上の庭園を

無限の世界へと押し広げることだ!」


「「ハッ!!」」


「ITS、次元跳躍ハイパードライブシークエンス開始!

アスガルド、全次元機関起動!」


高らかな汽笛が時空の壁を震わせ、

アスガルドの巨躯が重厚な唸りを上げる。


聖王と覇王――

内に満ちる博愛と、外へ広がる覇道。


二つの異なる、

しかし分かちがたく結ばれた物語が、

いま全宇宙の運命を巻き込んで動き出した。


©[I・G・ε]All Right Leserved.

明朝、7:30 に、第2話を投稿します。

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