↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
52/60

第3部 第8話【新たな次元の胎動】

「これが……父上の力、

そして私の切り拓く帝国だ」


黄金の光が全次元の果てまで瞬き、

新たな領土が地図に刻まれていく。


私はその確かな手応えを胸に抱きながら、

次なる星屑の海へとさらなる歩みを

進めるのだった。

荒涼とした辺境の地平線に、

反逆を企てる旧王国の残党どもが

砂塵を巻き上げて集結していた。


皇子レグナは、

愛刀の柄に手をかけたまま、

数で勝る敵の軍勢を見据えていた。


どれほど寄せ集めの兵を集めようとも、

帝国に牙を剥く愚か者たちの運命は

すでに決している。


「者ども、かかれ!

 あの傲慢な皇子を討ち取れ!」


敵の咆哮ほうこうと共に、

無数の魔力弾とびついた剣の群れが

レグナへと殺到する。


その瞬間、頭上の雲を割って

巨大な影が降り立った。


超弩級戦艦アスガルド――そして、

空間の歪みを引き裂きながら出現した

多宇宙間インターバーステレポーテーションシステムTSだ。


何千光年も離れた帝国の首都、

王宮の玉座の間。


その最奥で、父であるアーロンは

静かに右手を虚空へと差し伸べていた。


掌の上に浮かぶ黄金の光球――

【全属性変換】の権能の一端を用いた

透視の術によって、

父はこの辺境の戦況のすべてを

掌の上で捉えているのだ。


「……、ふむ。

 我が息子の仕事ぶりを眺めるのも一興だが、

 少し手数が足りぬか」


父のかすかなつぶやきが、

透視の糸を通じて戦場へと直接伝播する。


父のおごそかな命により、

ルナとエレーナを乗せた艦影が

敵の退路を完璧に塞ぎ、

ITSの車窓からは吾郎とシルヴィア姫の

穏やかな視線が私を後押しする。


二隻の圧倒的な支援によって

敵の戦意は一瞬で砕かれ、

あとはレグナが

その牙を刈り取るだけだった。


黄金の闘気が荒野を駆け抜け、

反乱の火種は文字通り

根絶やしにされたのだった。



血煙と魔力の残香がただよ

辺境の平定戦を終え、

私は長躯ちょうく

アルカディア帝国の首都へと

帰還を果たした。


深緑の生命の樹が天を支え、

黄金の魔石の光が

優しく満たす王宮の大広間。


その最奥にある究極の玉座には、

静かにワイングラスを傾ける

父・アーロンの姿があった。


私は玉座の階段の下で膝をつき、

りんとした姿勢で頭を垂れる。


「父上、辺境宙域における旧貴族残党

 および反乱勢力の討伐、

 これにて完全に完了いたしました。

 敵の首謀者どもの身柄もすべて

 押さえております」


アーロンはゆっくりと視線を上げ、

レグナの報告を受け止めると、

満足げな笑みを浮かべた。


「ご苦労、レグナ。

 お前の剣は日増しに鋭さを増しているな。

 ……ふむ、長く厳しい征討の旅路だった。

 しばし、この首都の静穏の中で休息するがよい」


父の言葉に、

私は深く一礼して立ち上がった。


振り返れば、

大聖堂の中庭では寵姫セレスティアが

優しく微笑み、

少し離れた場所では

シルヴィア姫と吾郎が

楽しげに談笑している。


かつて王国から理不尽に追放され、

荒野で孤独に這い上がった父が

築き上げたこの理想郷には、

殺伐とした覇道の影すらない

極上のスローライフが流れていた。


首都の隅々にまで行き届いた

平和の気配を感じながら、

レグナは束の間の安らぎに身をゆだね、

心身の緊張を

ゆっくりと解きほぐしていくのだった。



王宮での短い休息の日々は、

新たな次元の胎動とともに終わりを告げた。


首都の静穏を後にしたレグナは、

今度は

護衛の艦隊や仲間たちの助力すら受けず、

たった一人で帝国の最果てへと

足を踏み出していた。


そこは、まだどの地図にも記されていない、

未踏の平行宇宙パラレルバースの境界線だった。


目の前に広がるのは、

重力方程式が完全に崩壊し、

物理法則すら定まらない混沌こんとんの宙域だ。


通常の軍勢であれば

一歩も進めぬこの空間の裂け目こそが、

我が帝国が

次に呑み込むべき新たな領土の原石である。


「父の助けがなくとも、

 私にはこの血に流れる権能がある。……

 我が覇道に、不可能の文字はない」


レグナは静かに瞳を閉じ、

意識の深層で父の持つ

【全属性変換】のことわりを自らの肉体へと

完全に同期させた。


そして、宙へとゆっくりと右手を突き出し、

全霊の魔力を解放する。


レグナの意思が伝播でんぱした瞬間、

周囲を漂う不規則なエーテルや

混沌こんとんとした魔力の奔流が

一斉にまばゆい黄金の光へと変換されていった。


轟音と共に空間の壁が裂け、

未知の星系が次々と帝国の管理下へと

引きずり込まれていく。


無から有を生み出し、

星々の運命すら

自らの手で再構築するその圧倒的な光景は、

我がやいばが届くすべての場所が

そのままアルカディア帝国の領土へと

変わることを証明していた。


レグナは新たな星屑の海を見据え、

さらなる征討と開拓の歩みを進めるべく、

静かに微笑んだ。


©[I・G・ε]All Right Leserved.

レグナが次に降り立ったのは、

帝国北方の版図の縁、

一年の大半を分厚い氷に閉ざされる

辺境の漁村「フィヨルダ」であった。


ここでは、……。


明日、7:30 に、投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。