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第3幕 第8話 【星屑の軌道と永遠の到達点】

レグナの報告に、アーロンは深くうなずきを返す。

「ああ、行くぞ。

星々の運命がどう転がろうとも、

私たちが築く世界の行く手を

はばむものなど存在しない」

汽笛が再び宇宙の闇を切り裂き、

蒸気機関車は

さらなる次元の深淵へと加速していく。

過去の記憶と未来の神話が交錯する中、

私たちは次なる開拓地へ向けて、

静かに牙を研ぎ澄ませていた。

ITSインターバーステレポーテーションシステム

轟音ごうおんが、

次元の境界を

静かにでるように遠ざかっていく。

漆黒の車体に無数の星屑の

紋章を焼き付けた巨大な蒸気機関車は、

幾千の恒星系を背後に従え、

さらなる深淵なる次元の海へと

その軌道を滑り込ませていた。

食堂車の窓の外を

奔流のように流れていく星雲の光は、

まるでこれまでの果てしない

旅路の軌跡を祝福するかのように、

美しく絢爛けんらん

帯となって車体を包み込んでいる。

その静謐せいひつな空間のなかで、

プラチナブロンドの髪を風になびかせた

少年は、

手元にある一輪の赤い薔薇から

そっと視線を上げ、

穏やかな微笑みをたたえた。

「ねえ、聞いていたかい?

あの窓の外を流れる星たちのざわめきを。

彼らもまた、

それぞれの場所で

自分だけの物語をつむぎ、

そしていつかどこかへと

辿たどり着こうとしているんだ」

少年が指し示す窓の外の宇宙を凝視しながら、

姫は深くうなずいた。

月の都の冷たい宮殿で

孤独に震えていた頃の彼女なら、

星の光景すらも冷徹な

運命のかせにしか見えなかっただろう。

だが、

地上で老夫婦と過ごした温かな日々、

そして

この次元列車の中で交わした魂の対話は、

彼女の心に確かな灯火をともしていた。

「ええ……かつて私は、

自分が背負った宿命の重さに

押しつぶされそうになっていました。

でも、目に見える華やかさや、

誰かに決められた高貴な身分なんて、

本当の絆の前では何の意味もないのですね」

姫の声音には、

迷いのない透き通った強さが宿っていた。

彼女が手にした赤い薔薇は、

物質的な美しさではなく、

不確かな世界の中で互いを想い合った

純粋な魂の証明そのものだった。

少年は満足そうにうなずくと、

立ち上がり、

車窓の向こうに広がる無限の

パラレルバースの果てを見据えた。

「そうだね。一番大切な真実は、

いつも目に見えない場所——

僕たちの心の奥底に静かに息づいている。

さあ、終着駅はもうすぐだ。

君が真に還るべき場所、

そして

新しい物語が息吹く永遠の楽園が、

すぐそこまで来ているよ」

その様子を、

食堂車の出入り口に寄り添いながら、

レグナもまた、静かに見守っていた。

かつてアーロンが、

王国から理不尽に追放され、

「役立たず」の烙印らくいんを押されて放り出された

『死の静寂しじま』の荒野。

あの日の絶望と孤独の中で、

アーロンは自らの手で

世界を書き換える力を覚醒させた。

すべてを

「無」から「黄金の富と力」へと変換し、

宇宙を貫く覇道を築き上げてきたのだ。

しかし、星々を巡り、

数多の次元を我が庭園に変えてきた

この旅路の果てにあるのは、

単なる冷徹な支配ではない。

レグナや新しい仲間たち、

そしてこの

列車で出会った者たちとともに織りなす、

魂の満たされた

「新しい生活」の完成形だった。

「父上、

列車の魔力機関が最高出力に達しました。

前方に、

私たちが長年追い求めていた

すべての次元をべる究極のプラトー——

我が帝国の真の首都が姿を現します」

皇子レグナがりんとした声で私に告げる。

その横顔には、

かつての未熟さは微塵もなく、

父である私とともに宇宙のことわりを背負う者

としての気高い覇気が満ちていた。

「よくやった、レグナ。行くぞ。

私たちが切りひらいた

この果てしない開拓の歴史に、

新たな神話を刻み込む時だ」

アーロンの号令とともに、

漆黒の蒸気機関車は

最後の次元の壁を鮮やかに突破した。

眼前に広がったのは、

かつての荒涼とした荒野でも、

冷たい宇宙の闇でもない。

深緑の生命の樹が幾重にも星々を抱き込み、

黄金の魔石の光が大地を優しく満たす、

息を呑むほどに美しい理想郷だった。

王国が滅びのふち

どれほどアーロンの力を欲しがり、

残党が隣国で

アーロンを「魔王」と恐れようとも、

そんな矮小わいしょうな因縁は

すでに遥か彼方の出来事となっていた。

私たちは復讐者でも破壊者でもない。

自らの手で世界をいつくしみ、

創り出す真の王として、

この永遠の楽園に降り立ったのだ。

汽笛が力強く鳴り響き、列車は

静かにプラットフォームへと滑り込む。

温かな風が吹き抜け、

新しい時代の幕開けを告げるように、

私たちの新しい生活と無限の物語が、

いま静かに、

そして高らかに動き出していた。


©[I・G・ε]All Right Leserved.

ITSインターバーステレポーテーションシステム

放つ漆黒の車体と星屑の紋章が、

アーロンたちが築き上げた究極の理想郷――

深緑の生命の樹と黄金の魔石に満ちた

アルカディア帝国の首都のプラットフォームに、

優しく滑り込んだ。


明日も、7:30 に、投稿します。

よろしくお願いいたします。

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